インタビュー
» 2018年04月24日 06時00分 公開

モバイル決済の裏側を聞く:ボタン1つで「○○Pay」を簡単に実装 OrigamiがQRコード決済事業に参入する狙い (2/3)

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

2万店舗での導入目標を達成

 実際のオフライン進出に当たっては、「オンライン決済の仕組みをオフライン(対面)決済で使う」際に発生する問題を調べるために、金融庁や経済産業省とのやりとりを重ね、さまざまなカード会社と提携するなど、着々と準備を進めてきた。

 前述のオンラインストアでの経緯もあり、Origami Pay(Origami 決済)の実証実験はアパレル店舗中心にスタートする。2017年6月の発表時点で、予定も含めて2万店舗での導入目標を達成している。

 2016年5月の正式ローンチ以降はアパレル以外にも業態を拡大し、例えば南海電鉄の商業施設である「なんばCITY」への全館導入や、PARCOの東京都内東部エリアでは初進出となる商業施設の「パルコヤ」での採用が挙げられる。PARCOはもともとITを活用したサービス拡充やオペレーション効率化に熱心な小売店舗。パルコヤではAIとセンサーを組み合わせた来店者の動向解析や案内ロボットの設置など、最先端技術を惜しみなく投入した点で話題を呼んでおり、各店舗のレジ横にはOrigami Payのアクセプタンスマークが確認できる。

 ただし、旅行代理店など金券を扱う店舗では、規制により導入が難しいケースもあるようだ。基本的には新しい商業施設には積極的に営業を行い、テナントの意向をもって導入を進めていきたいと古見氏は説明している。

Origami 2017年末に上野の松坂屋南館跡地にオープンしたパルコヤ
Origami 全部ではないが、館内のテナントでOrigami Payのアクセプタンスマークが確認できる

 また“店舗”という形を持たないサービス業での利用も可能だ。例えば日本交通との提携で、タクシーでのOrigami Payによる支払いが可能になっている。タクシーで電子マネーやクレジットカード払いに対応している会社の場合、支払い用の端末と料金メーターを連動させているケースが多いが、ここで利用されているAndroid端末にモジュールを埋め込む形で対応が可能だ。会計処理やレシートの出力にかかる手間が省略でき、素早く決済が行えるため好評だという。

Origami Payの3つの決済方式

 現在、Origami Payでは加盟店向けに3パターンの決済方法を提案している。1つは汎用(はんよう)のタブレット端末に店舗向けアプリをインストールして、ここで生成されたQRコードをユーザーのスマートフォンにインストールされたOrigami Payアプリで読み込む方法。

 2つ目は、QRコードをあらかじめ印刷したステッカーを用意する方法で、主に中小企業向けを想定している。これはAlipayにもみられる方式だが、その最大の違いは「ユーザーが金額を指定しない」という点で、加盟店側が手持ちの端末に金額を入力してアクティベートすることで支払いが行われる仕組みになっている。「スペースや予算上、QRコード読み取りのタブレット端末を設置する余裕がない」というニーズを満たすために“読み取り”にあたる部分をステッカーで省略するのが狙いだ。

 3つ目はPOS連動タイプで、コンビニのローソンがAlipayに対応する仕組みをそのまま利用する。具体的には、POSに接続された赤外線のバーコードスキャナーを用いてアプリ上で生成されたバーコードを読み込む方式だが、現在はまだOrigami PayとPOS側の仕組みが開発中で動作していない。

 Origami Payは現在QRコードのみをサポートしているが、コンビニを含む既存の小売店POSはバーコードの読み取りのみに対応した機材がほとんどで、QRではなくバーコード対応を求める声に応えたものだ。こうした大型チェーン店でOrigami Payのためだけにタブレット端末を何千店舗にも展開するのは現実的ではないため、次の重要なステップとなる。ただ改修には時間がかかるため、基本的には商業施設などでの入れ替えタイミングを狙って動く形になるようだ。

セゾンとの提携にみられるオープンモデル

 QR決済のカテゴリーに含まれるOrigami Pay。「QR決済」というのはあくまで決済手段の1つであり本質ではない……というのは筆者を含めた読者の一部の方々の見解だと思うが、「QR決済だからこそ“本質”の部分を実現できる」というのが康井氏の意見だ。決済処理にかかる“スピード”も重要だが、それ以上に「IDとIDを結び付ける仕組み」が重要であり、本質だと同氏は述べる。つまりスマートフォンにインストールされたアプリを通じて加盟店と顧客との接点を作り、これを通じて加盟店と顧客の両方がメリットを得られる仕組みを作るのは、現状でQRが最適解というのだ。

 「(現金以外の部分で)クレジットカードやNFCで(対面)決済を行っても、何もインターネット上にデータがたまっていかない。小売の方々と話していると、皆がECをやろうとして、さらにデータを取得しようとオムニチャネルを模索するが、それがなかなか実現できていない。

 そこでCRMを導入したり、『ポイントカードをやります』ということで会員情報として名前や住所を収集するが、これで得られる個人情報は10%程度。そこからDMを発送したとしても、どの程度有効かは全然計測できていない。これがメルマガだとして、個人情報でメールアドレスを収集して配信するが、世界的にみても比較的メルマガ開封率の高い日本でも9〜10%程度。つまり、1万人顧客がいたとしてメールアドレスを収集できるのは1000人となると、さらにメルマガで100人ほどになる。そこからCTR(Click Through Rate、クリック率)を取ると、20〜30人しかクリックしてくれていない。せっかく顧客皆のポケットにインターネットが入っているにもかかわらず、IDとIDがオンラインでぶつかっていない、非常にもったいない状態のわけです。

 昔NFCがもてはやされて『QRコードなんて古い時代のテクノロジーを使って……』などと言われたが、現状でこの仕組みを実現できるのはQRコードであってNFCではない。それはQR決済がオンラインの一方で、NFC決済はオフラインだから、全ての顧客が『一見さん』になってしまう。FacebookやTwitterのフォロワーではないが、QR決済では店頭で買い物してくれた人が全てフォロワーなので、プッシュ配信も容易だし、『クーポンを出しますので次回来店時に使ってください』というのも簡単にできる。Amazonがやっているような『お勧め』もすぐに実現できる」(康井氏)

Origami QRコード決済(Origami Pay)では従来型のオフライン的な手法に比べてコンバージョン率が非常に高いのが特徴だという

 冒頭で、Origamiはいわゆるライバル的ポジションの企業とは異なり、自身のEC経済圏やバックグラウンドとなるサービスといったものを持っていないのが特徴と述べた。同社では「オープン化の思想」と呼んでいるが、こうした既存事業での“しがらみ”がないため、潜在的なパートナー企業が「非常に組みやすい相手」だと評価しているという。

 「決済でデータを取るという話になったとして、小売に限らず、銀行やカード会社でも最初からその仕組みを構築するのは容易ではないため、まず基盤になるものが必要だというのは各社共通の意見。そこでPayPalのオフライン版というか、対面決済のためのオープンAPIを用意するわけです。

 セゾンの例でいうと、セゾンカードのアプリがあったとして、従来のアプリはカードの内容や履歴を確認するための場所だったものが、『Origami Pay』ボタンが付くことによって決済プラットフォームになる。つまり360万人のセゾンユーザーがそのまま『(セゾン)Origamiで決済できるようになりますよ』ということになる。平たくいえば、『○○Pay』を簡単に実装できる仕組みで、今後はこれで何百万人という単位で提携会社が増えるごとに基盤が活用されていく。

 これは加盟店開拓でも同様で、仮に大手各社が2018年以降に順次参入したとして、そのままではQR決済可能な場所はなく、地道に加盟店開拓をしていく必要がある。基盤として決済可能な加盟店をあらかじめ用意しておけば、単に技術を提供するだけでなく、加盟店ネットワークという部分に価値が出てくる。MastercardやVisaを想像していただければいいかと。位置付け的には自社ブランド(プロパー)カードと提携カードの両方を発行するAmerican ExpressやJCBに近いかもしれない」(康井氏)

Origami セゾンポータルアプリにおけるOrigami Payボタン
Origami Origamiが目指すのは加盟店を含んだ決済ブランドのネットワーク

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