LINEモバイルは、なぜソフトバンク傘下になったのか 嘉戸社長に聞くMVNOに聞く(1/2 ページ)

» 2018年04月24日 14時44分 公開
[石野純也ITmedia]

 日本ではデファクトスタンダードとなっているメッセンジャーサービスのLINEが手掛けるMVNOとあって、参入時から大きな話題を集めていたLINEモバイルだが、2018年3月から体制が大きく変わっている。ソフトバンクとの業務・資本提携を結び、共同で端末やマーケティングを強化していくというのが、新たな方針だ。株式も、ソフトバンクが51%を持つため、資本構成上もLINEからソフトバンクの子会社に移る格好になる。

 この業務・資本提携に伴い、新たにソフトバンクのネットワークも利用することになる。サービスの詳細は2018年夏ごろに発表される予定だが、現時点ではまだ不透明なことも多い。体制が大きく変わったことで、LINEモバイルのサービスにどのような影響があるのか。新たな方針を、LINEモバイルの代表取締役社長を務める、嘉戸彩乃氏に聞いた。

LINEモバイル LINEモバイルの嘉戸彩乃社長

赤字が出るので、もっと体力が必要だった

―― まずは、なぜソフトバンクと一緒にやっていくことになったのか。ここからお聞かせください。

嘉戸氏 契約者数でいうと、他のMVNOが1年で取っている以上の数は取れていました。いろいろな記事で「何十万」と出ていましたが、それよりも実際には取れています。ただ一方で、限界も見えているという状態でした。これ以上踏み込むには、事業を拡大しなければいけない。通信事業は最初に赤字が出る事業でもあるので、もっと体力が必要でした。

 単体でやるべきか、LINE本体の資金を使うべきかなど、いろいろな選択肢を考えました。何が足りないのかを洗い出したうえで、どこかと提携して、スピードアップできるのであれば、それをやろうとなりました。1年たった段階で、結論は出ていました。

LINEモバイル 3月20日にソフトバンクと合同で発表した、提携についてのリリース

―― 提携先にはいろいろな選択肢があったと思いますが、なぜソフトバンクになったのでしょうか。

嘉戸氏 何が足りないのかが、非常に明確だったからです。端末もそうですし、店舗もそう。やはりLINEはオンラインの会社なので、ロジスティクス(物流)は結構苦手です。やってはいて、苦労もしていますが、もっと規模の経済が効くところがある。この3つ(端末、店舗、物流)を補えるのはどこか、あとは資金も数億、数十億ではないレベルで入れる必要がありました。

 その中で、ソフトバンクさんとは市場に対する考え方が合っていたということがあります。お客さんがどういうニーズを持っていて、それに対してブランドをどう当てていくのかという戦略や、チャネルに対する考え方も明確でした。ソフトバンクさんはブランド戦略も明確で、iPhoneで月50GB使いたいという人にソフトバンクがある一方で、数GB程度でいい人にはY!mobileがあります。

 ただ、これからもっとオンラインの市場が来る。データ通信にも、もっと使いやすい形があるのではないか。そういう風に見ていくと、(ソフトバンクがLINEモバイルを必要とする)単純で分かりやすい構図があります。先日のモバイルフォーラムでも申し上げましたが、この市場(MVNO)はお客さんにとってはニッチなところで、将来的にはIoTにも対応していかなければなりません。そのとき、全部が全部量販店チャネルかというと、そうではありません。オンラインのチャネルは3年後、4年後を目指したときということになります。

―― ソフトバンク回線を使うというお話は出ていますが、MVNOでやっていくことになるのでしょうか。

嘉戸氏 なると思いますし、ドコモ回線を続けていく可能性も極めて高いです。ソフトバンク本体に入って100%(子会社)でやってしまうと、(ドコモから)回線を借りられるのかという懸念があり、LINE本体とのサービス設計のところでも引っ掛かるところが出てきます。将来やりたいことを考えたとき、LINEの資本が入っていないとかなり難しくなってしまいます。

―― 既存の顧客だけに提供して、あとはソフトバンク回線にしていくのだと思っていました。

嘉戸氏 そんなことにはならないと思います。(ソフトバンクとの提携で)何をしたいのかというと、契約者を増やしたいので。今の構造だと、ドコモ回線の方にニーズがあることも分かっています。もちろん、コスト構造上、そうならない可能性もありますが、新規申し込みを閉じないように検討しています。最低限、既存ユーザーにサービスを続けることは間違いないですし、それはソフトバンクとも話をしています。

―― 楽天のように、周波数を獲得するということは考えましたか。

嘉戸氏 それだけでなく、他のMVNOを買うというものも、全て(検討の)リストの中にありました。ただし、周波数を取るのは、かなり大変な戦いになることが明確に見えていました。それがLINEの正しい戦い方なのかというと、そうではありません。周波数の移行費用も含めると、(コストが)莫大(ばくだい)な規模になりそうだったからです。ネットワークコストが重くなってしまい、自分たちのやりたいことが思うようにできなくなってしまいます。それよりも、もっとスピードアップできる方法があったということです。

“話題の端末”も扱いたい?

―― オンラインが強い一方で、ユーザー層を考えると、リアルな店舗も必要になってくると思います。ここは、ソフトバンクの資産を活用することになるのでしょうか。

嘉戸氏 もっとできることはあると思っています。オンラインとオフラインをどうつなげていくかというところです。LINEモバイルを始めてみて、オンラインで十分な人も結構いるなと思った一方で、設定のためにオフラインは必要という人をどう送客していくか。そういう意味では、拠点が必要になりますが、LINEモバイル単体で抱えると非常にコストが重くなります。そういうところは、ソフトバンクと一緒にやっていけると思っています。

―― 端末が足りないというのが意外でした。LINEモバイルの端末を見ると、ラインアップはある程度十分そろっている印象もあります。足りないものは……。

嘉戸氏 話題の端末です(笑)。(Androidも)バイイングパワーがないので、お値段をどうするのかは、課題の1つでした。売れれば売れるほど、コストは安くなりますが、MVNOだと数が少ないので、どうしても割高になってしまいます。楽天さんのように、最初に出すと決めて、赤字を出しても一気に掘っていく方法もある一方で、足りないところを人から借りるという発想の違いもあります。

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