とはいえ、現時点ではエリアという観点では、ドコモとソフトバンクそれぞれの回線に大きな違いがあるとはいいづらい。地方や離島など、差が出る地域もある一方で、ある程度の規模がある都市部で使っている限り、エリアの差は感じにくいのが実態だ。ソフトバンクだからつながらないというのも、過去の話になりつつある。ユーザーにとっては、両方の回線に違いを見出しにくいかもしれない。
これに対し、LINEモバイル側は「ドコモのネットワークになじみのある人や、今使っているドコモ端末をそのまま使いたい人はドコモ回線を、ソフトバンク回線になじみのある人はソフトバンク回線を選んでいただければと思う」(嘉戸氏)とコメントしている。どちらの端末も、2015年5月以降に発売された端末であれば、iPhoneを含めてSIMロックを無料で解除できるが、SIMロック解除の仕組みは必ずしも一般ユーザーにまで浸透しているとはいえない。
仮にSIMロック解除の知識はあったとしても、ソフトバンクから2015年5月より前に発売された端末は、大多数がSIMロックを解除できない。ドコモについてもSIMロック解除義務化の前は、iPhoneが非対応だった。iPhoneでいえば、iPhone 6、6 Plusや、iPhone 5s、5cなどがSIMロックを解除できない。
iPhone 6、6 Plusですら、既に発売から3年以上たっているが、ことiPhoneに関していえば、iPhone 5sでもiOS 12をインストールでき、ライフサイクルが長い。iPhone 6、6 Plusから8、8 Plusに至るまで、デザインが大幅に変わっていないことを考えると、まだまだ“現役”といえる。稼働数は日増しに減っているはずだが、こうした端末のユーザーが、買い替えの必要なくLINEモバイルに乗り換えられるのはメリットの1つ。LINEモバイルが示したデータでは、SIMカードだけを変えるユーザーが40%にも上っており、一定のニーズはありそうだ。
ソフトバンク回線を選ぶもう1つのメリットとしてLINEモバイルが挙げたのが、通信速度だ。嘉戸氏が「速度に関していうと、ソフトバンク回線では格安スマホ最速チャレンジ(キャンペーン)をやっている。エリアではなく、MVNOにもそれなりの速さを求める人には、こちらをオススメすることになる」と語っていたように、ソフトバンク回線では通信速度を追求していく方針を掲げている。
MVNOは帯域単位でMNOからネットワークを借りるため、総帯域とユーザー数、利用状況によって混雑度合いが高まり、一部の時間帯で十分な速度が出ないこともある。LINEモバイルも例外ではなく、サービス開始当初は十分な速度が出ていたが、ユーザー数が増えるに従い、お昼時などの通信が集中する時間は速度が低下傾向にある。ソフトバンク回線では、こうした状況が起こらないよう、キャンペーンで自らに縛りをかけた。
嘉戸氏が挙げていた「格安スマホ最速チャレンジキャンペーン」がそれで、自社測定ながら、期間中一度でも1Mbpsを下回っていた場合、ソフトバンク回線のユーザーに1GBがプレゼントされる。ただ、子会社化されたといえ、LINEモバイルはソフトバンク本体とは切り離された会社の1つ。LINEモバイルによると、ソフトバンク回線も、あくまでMVNOの1社として他社と同じ条件で貸し出されたものだという。親会社からの資金提供を指す“ミルク補給”も、「よく言われるが、割とマジメにやっている」(嘉戸氏)といい、この状態でどこまで通信速度を維持できるのかは未知数だ
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