冒頭で述べたように、LINEモバイルの子会社化は、ソフトバンクにとっては2つ目のサブブランドが誕生したことを意味する。サービスの提供形態はY!mobileと差別化されており、LINEモバイルの方がネットから契約するユーザーの比率が高く、料金も安価に抑えられている。データフリーも、ソフトバンクやY!mobileにない特徴の1つだ。ソフトフトバンクの宮内謙社長兼CEOが、「3つ目のポジションを一緒に作っていけると思う」と語っていたように、これまでとは異なるユーザーをLINEモバイルで獲得できる可能性は高い。
実際、傘下に複数のMVNOを擁するKDDIも、Y!mobile対抗のUQ mobileだけでなく、マルチキャリアMVNOとしてBIGLOBEモバイルを活用しており、モバイルID数の増加を狙う。UQ mobileに次ぐサブブランドになったBIGLOBEモバイルだが、LINEモバイルと同様、SIMカードの差し替えをテレビCMでアピールしたり、ドコモ回線とau回線の両方を提供したりと、さまざまな施策を打ち出すことで、契約者数は順調に拡大している。
MM総研のデータによると、BIGLOBEモバイルのシェアは、2018年3月末で4.7%の51万回線(関連記事)。2017年3月末からシェアは横ばいだが、MVNO全体の総契約者数が拡大しているため、回線数も同じ比率で増加し、上位MVNOの一角に食い込んでいる。参入が他社に比べて遅かったこともあり、LINEモバイルがこの規模に達するのはまだ時間がかかりそうだが、ソフトバンクの店舗で取り扱ったり、端末を拡大したりといったシナジー効果が発揮できれば、普及に加速がつきそうだ。
ただ、MVNO回線の上に自社のサービスを乗せていく戦略のauに対し、ソフトバンクがLINEモバイルをどう生かせるのかが明確には見えていない。子会社化したとはいえ、LINEモバイルはLINEブランドの色が濃く、マーケティング面でもLINE本体と深く連携している。Y!mobileのように、傘下のYahoo!Japanと連携させ、グループ内で完結させたシナジー効果を発揮するのは難しくなる。「群戦略」を推進するソフトバンクだが、LINEモバイルをどう位置付けていくのかは今後の課題といえる。
MVNO市場全体を見渡すと、ドコモ回線一強だった状況が、徐々に変わりつつあることが分かる。MVNOのシェアは上から楽天モバイル、IIJmio、OCN モバイル ONEの順で、上位3社はドコモ系MVNOが独占しているが、楽天は2019年にMNOとしてサービスを開始し、MVNOのユーザーも徐々に移行を促していく方針だ。マルチキャリアMVNOのmineoやBIGLOBEをどう見るかにもよるが、4位以下はau系MVNOが占めるようになった。
また、MVNOには含まれないが、いわゆる格安スマホというくくりでは、Y!mobileがこれらMVNOの上に立つ。ソフトバンクの子会社になったLINEモバイルが躍進すれば、相対的に、ドコモ系MVNOの存在感がさらに薄くなりそうだ。ドコモ自身はサブブランドを持たず、あくまでIIJやNTTコミュニケーションズがNTTグループ内でMVNOを展開しているだけだが、auやソフトバンクへの対抗上、より密接に連携したMVNOが必要になってくるかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.