コラム
» 2018年09月15日 08時49分 公開

新iPhoneのトピックは「A12 Bionic」と「eSIM」 そのメリットと業界へのインパクトは? (1/3)

「iPhone X」が発表されてから1年、ノッチのあるディスプレイや機械学習を強化したプロセッサは他社も取り入れるようになった。その1年後に発表された「iPhone XS/XS Max」は何が新しいのか。2つのトピックを中心に解説する。

[石野純也,ITmedia]

 「iPhone Xは、これからの10年を示す新たな製品」――AppleのCEO、ティム・クック氏がこう宣言してから約1年。当初は賛否両論あったノッチのあるディスプレイはスマートフォン業界ですっかり定着し、機械学習を強化したプロセッサを搭載したスマートフォンも増えてきた。クック氏が「iPhone Xでスマートフォンの未来が決定づけられた」と振り返ったのはそのためだ。

ティム・クック iPhone Xでスマートフォンの未来が決まったと語るティム・クックCEO

 実際、iPhone Xは販売台数でも1位を記録し、「もっとうれしいことに、98%の方々が満足している」(クック氏)とユーザーからの評価も高い。このような成果を踏まえ、2年目となる2018年に発表されたのが、「iPhone Xを次のレベルに引き上げる」(同)ことをうたう「iPhone XS」「iPhone XS Max」と「iPhone XR」だ。

ティム・クック
ティム・クック クック氏は、販売台数で1位になったこと以上に、顧客満足度が98%に上ることがうれしいと語った
ティム・クック iPhone XS(左)とiPhone XS Max(右)
ティム・クック カラフルさが目を引くiPhone XR

A12 Bionicで機械学習の処理能力が大幅に向上

 発表会では、最初にiPhone XS、iPhone XS Maxの一通りの機能が紹介されたが、中でも時間が多く割かれたのはプロセッサの「A12 Bionic」と、その機能を応用したカメラだった。A12 Bionicは7nmの製造プロセスで開発されたプロセッサ。特徴的なのは、機械学習の処理を担う「ニューラルエンジン」が、大幅に強化されたところにある。

ティム・クック A12 Bionicの解説に長い時間が割かれたのが印象的だった

 ニューラルエンジンはiPhone Xに搭載された「A11 Bionic」で初めて採用された仕組みだが、A12 Bionicでは、このコアが2コアから8コアへと増やされている。秒間6000億回だった演算処理が5兆にまで拡大したというところからも、その性能の高さが分かる。この進化の恩恵を最も受けるのは、カメラといえる。

ティム・クック
ティム・クック ニューラルエンジンが8コアに拡大され、秒間の演算処理は5兆にまで拡大した

 iPhone XS、XS Maxではポートレートモードが大幅に強化されており、リアルタイムにポートレートライティングの効果を加えたり、ボケ味をより一眼レフに近い形で出したりできる。露出やホワイトバランスを変えた複数の写真をまとめて撮り、機械学習で最適な部分を選んで合成する「スマートHDR」に対応できたのも、A12 Bionicがあってこそだ。

ティム・クック ポートレートモードでのボケがさらにキレイになり、後からボケ味の調整もできるようになった
ティム・クック センサーやチップの力をフルに引き出し、スマートHDRに対応した

 こうした機能だけなら他のスマートフォン、特にAIに力を入れているHuaweiなどのメーカーの端末にも一部は実装されているが、Appleらしいと感じたのは、これが外部の開発者にも公開されているところだ。発表会で特にインパクトが大きかったのは、Net Teamの「Home Court」と呼ばれるアプリ。バスケットボールのプレーヤーやコートを認識し、シュートの成功率などを表示するといったものだ。

ティム・クック
ティム・クック コートを写すだけでシュートの成功率やボールの速度、角度など、さまざまな分析を加える「Home Court」。新しいiPhoneでなければ実現できなかったという

 同社の開発者は「リアルタイムでプレーヤーをトラッキングしているが、これは新しいiPhoneでしかできない。(中略)今まででは不可能だったフィードバックが(選手に)できるようになる」と語っていたが、こうしたサードパーティーをきっちり取り込めるところこそが、Appleや新しいiPhoneの強みといえるだろう。チップレベルから、OS、さらには最終製品の端末までを一貫して手掛けているからこそ可能になったことだ。

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