より大きな視点で見ると、ワンナンバーのような仕組みは、スマートフォンに集約されていた機能を、最適なデバイスに分散させる動きの始まりとも考えることもできる。iPhoneとApple Watchが最たる例だが、活動量や通知の受信はより体に近いところに身に着けるスマートウォッチで、それ以外はスマートフォンでといった役割分担は、今後、徐々に進んでいくだろう。
通話やSMSをするための最適なデバイスがスマートフォンとは限らない。ワンナンバーフォンは、こうした発想から生まれたものだ。少々大げさかもしれないが、多端末接続が要件に挙げられている5Gの世界観を先取りしたものでもある。将来的には、活動量の計測や通知の確認はスマートウォッチで、電話やSMSは小型のケータイで、その他の機能はスマートフォンでといった形で、より端末が細分化していく可能性もある。
ただ、こうした視点で見ると、現時点でのシンプルなケータイにはやや不満が残ることも事実だ。例えば、カードケータイはワンナンバーに非対応、INFOBAR xvもワンナンバーと同じ機能の「ナンバーシェア」が利用できず、スマートフォンと2台持ちしようとすると、電話番号を別々にするか、SIMカードを差し替える必要がある。ワンナンバーやナンバーシェアに比べると、料金が高くなってしまうのもネックだ。
ワンナンバーフォンについても、通話やSMSだけしか利用できず、機能はApple Watchより少ない。そのぶん、一括で9720円とリーズナブルに入手できるのはメリットだが、利用シーンが少々狭い。ジムや屋外で運動をする際に、iPhoneを置いておき、単体で通信するためにeSIMを内蔵したApple Watchの方がコンセプトは明快だ。せめておサイフケータイが搭載されていれば、近所での買い物にも持ち出せていただけに、何かもう一工夫ほしいと感じた。
とはいえ、こうした取り組みはまだ始まったばかり。ユーザーのニーズがどこにあるのかは手探りの状態だ。ドコモのプロダクト部長、安部成司氏が「いろいろなシチュエーションに応じて提供することで、どんな受け入られ方をするのかを確認したい意味もあって、(カードケータイとワンナンバーフォンの)2機種を出している」と語っていたように、どちらの需要が大きいかは未知数だ。シンプルケータイが1回限りで終わらず、継続的な取り組みになることを期待したい。
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