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» 2018年11月06日 15時00分 公開

特集・ビジネスを変える5G:モバイル通信から社会インフラに 「5G」は私たちの生活をどう変えるのか (1/2)

いま大きな注目を集めている、次世代のモバイル通信方式「5G」。5Gはモバイルネットワークをスマートフォンのためのものから、社会インフラを支える存在へと変えようとしている。その5Gが普及することで、われわれの生活はどのように変わるのだろうか。

[佐野正弘,ITmedia]

 いま大きな注目を集めている、次世代のモバイル通信方式「5G」。最大20Gbpsもの大容量通信に加え、ネットワーク遅延が少ないこと、そして多数の機器を同時に接続できるという特徴から、5Gはモバイルネットワークをスマートフォンのためのものから、社会インフラを支える存在へと変えようとしている。その5Gが普及することで、われわれの生活はどのように変わるのだろうか。

なぜ今、5Gが必要とされているのか

 スマートフォンで通話や通信をするのに用いられている、現在主流のモバイル通信規格「4G」。その4Gに続く通信規格「5G」が日本では2020年、早い国では2018年中にも商用サービスがスタートしようとしていることから、近頃急速に注目を集めつつある。

 だがスマートフォンを利用している多くの人は、現在利用している4Gのネットワークで満足しており、なぜわざわざ新しい通信方式である5Gが必要とされているのか分からない、という人も多いのではないだろうか。そこでまずはこれまでの通信規格の歴史を振り返り、いまなぜ5Gが必要とされているのかを、改めて確認しておきたい。

5G 2018年2月にスペインで実施された携帯電話の見本市イベント「Mobile World Congress 2018」でも5Gは大きなテーマに。世界的に5Gに対する注目は高まっている

 モバイルの通信規格はこれまで、第1世代(1G)から第4世代(4G)まで変化しており、5Gも文字通り、「第5世代」の通信規格であることを表している。これらの通信規格は約10年ごとに世代を大きく変えているが、その理由は携帯電話自体の進化による利用スタイルの変化、それに伴うデータ通信量の増大が大きく影響している。

 特に分かりやすい進化を遂げているのが、第2世代(2G)から4Gの間だ。2Gの頃の携帯電話の利用はまだ音声通話が主体だったが、NTTドコモの「iモード」が日本で人気となり、携帯電話でもデータ通信が利用されるようになったことで、携帯電話上でもリッチなコンテンツを楽しみたいというニーズが高まった。そこでより高速・大容量なデータ通信ができるよう、第3世代(3G)の通信規格が生まれたのである。

 そして3Gから4Gにかけての進化には、スマートフォンの登場が大きな影響を与えている。スマートフォンによって携帯電話の利用は音声からデータ通信が主体になったことを受け、4Gでは従来型の音声通話の仕組みを取り除き、音声通話も含めた全ての通信を、データ通信でこなす仕組みへと変更。さらなる高速・大容量通信の実現に力が入れられたのだ。

 では、5Gでは何が大きく変わるのかというと、モバイルネットワークが携帯電話やスマートフォンだけのものではなくなるということだ。あらゆるモノがインターネットに接続するというIoT(Internet of Things、モノのインターネット)の概念が広まることで、モノをネットワークに接続するためのインフラとして、場所を選ばず接続できるモバイルネットワークの存在が注目されている。そうしたIoT時代に対応するための通信規格として、5Gの開発が進められてきたのである。

5Gが持つ「高速大容量」「低遅延」「多接続」

 そうしたことから、5Gには従来とは異なる特徴が幾つか盛り込まれている。その特徴の1つは「高速大容量」で、これは4Gまでの延長線上にあるものだ。

 4Gでは理論値で最大3Gbps程度までの通信速度を実現できるとされているが、5Gではそれを大きく上回る、理論値で最大20Gbpsの通信速度を実現するとしている。もちろん、これだけの通信速度を、従来の枠組みだけで実現できるわけではない。

 5Gでは従来モバイルネットワークでは利用されていなかった、3GHz以上の周波数帯を用いることで、高速・大容量通信を実現しようとしている。これらの周波数帯は障害物に弱く真っすぐ飛びにくいとされていることから、5Gの規格を策定する上ではそうした高い周波数帯を利用しやすくするための新しい技術が多く導入されている。

5G ソフトバンクが2018年10月25日に実施した5Gの実証実験より。5Gの高速大容量を生かし、1台の車が撮影した4Kの360度映像を、5Gのネットワークを経由してもう1台の車に送る様子が披露された

 2つ目の特徴はネットワークの遅延が小さい「低遅延」だ。ネットワーク遅延とは、ネットワークの距離などの影響を受け、情報が伝達する時間が遅れてしまうこと。インターネットを介したIP電話などで、自分が話した時の声と、相手に届いた時の声にずれが生じて会話がずれてしまう経験をしたことがある人も多いかと思うが、それは主にネットワーク遅延の影響を受けているためなのだ。

 4Gではこのネットワーク遅延が10ミリ秒程度といわれているが、5Gではその10分の1となる1ミリ秒に抑えられている。なぜそれだけの低遅延が求められているのかというと、5Gではモバイルネットワークを通じ、遠隔で機器を制御することが想定されているため。例えば車をネットワーク経由で遠隔制御する場合、遅延による少しの動きのずれが大きなタイミングのずれとなって大事故を引き起こしかねないことから、遅延が極限まで小さいことが必要不可欠なのだ。

5G ドコモがMobile World Congress 2018で実施していたロボットの遠隔操作デモ。5Gの低遅延を生かして人の動きをリアルタイムに再現した書道を披露していた

 そして3つ目の特徴は「多接続」だ。先にも触れた通り、多数の機器がモバイル回線を介してインターネットなどに接続できるよう、5Gでは1つの基地局に接続できる機器の台数を大幅に増やすことが求められている。そこで5Gでは、従来の100倍以上の同時接続数を実現できるよう、技術仕様が定められている。

 これまで通りスマートフォンで利用するネットワークなら、5Gの進化は高速・大容量だけで十分かもしれない。だが低遅延や多接続といった要素に力が入れられている点からも、5G従来のモバイルネットワークとは活用のされ方が大きく変わってくることが分かる。

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