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» 2018年11月10日 06時00分 公開

石野純也のMobile Eye:ドコモの値下げで加速するスマホの「分離プラン」 その功罪を整理する (1/3)

ドコモが2019年第1四半期に、携帯料金を2〜4割値下げすることを予告。その軸になるのが「分離プラン」だ。そのメリットや副作用はどこにあるのか。

[石野純也,ITmedia]

 「2〜4割程度、料金を低廉化させたい」――NTTドコモの吉澤和弘社長が新料金の方針を発表したことで、モバイル業界に激震が走った。1年で4000億円と大規模な顧客還元を嫌気して、持ち株会社のNTTの株は、一時ストップ安になるなど大荒れに。追随するとの思惑から同じく株価を下げたKDDIやソフトバンクは、火消しにやっきになった。

 まだ詳細は決まっていないが、ドコモの新料金の軸になるのが「分離プラン」だ。分離プランとは、端末は端末、料金は料金と明確に分けた料金のこと。端末代の実質的な値引きになっていた月々サポートなどの割引をやめ、端末と料金に明確な線を引くことから、こう呼ばれる。では、そのメリットや副作用はどこにあるのか。分離プラン導入でどのような効果があるのか。auやソフトバンクの事情も合わせて見ていきたい。

分離プランを本格導入、料金体形もシンプル化するドコモ

 株式市場に大きなインパクトを与えたドコモの“値下げ予告”だが、詳細な料金プランはまだ固まっていない。発表は2019年度の第1四半期を予定している。吉澤氏が示した方向性は2つ。1つは、「料金をシンプルにする」というもの。ドコモショップでの接客時間が慢性的に長期化しており、その対策として、料金を分かりやすくするのが目的だ。

ドコモ 料金のシンプル化は、ショップの混雑解消策の1つになる

 ドコモは、現行の料金プランを導入した際に「シェアパック」を全面に打ち出し、家族でまとめて契約すると安くなるといった見せ方をしてきた。音声通話定額が付かないシンプルプランを導入したことで、1人あたりの料金は下がりつつあったのも事実だ。契約の仕方によっては、MVNO水準に料金を抑えられるケースもある。一方で、料金体系が複雑になりすぎていたことは否めない。同じ容量でもシェアパックと1人用のパケットパックで値段が異なるなど、“お得感”が見えづらい側面もあった。

 ドコモ光のセット割なども含めると、自分の支払いが月いくらになるのかが非常に分かりづらかった。1人1人の料金を中心に据えつつ、家族で契約した際の割引を追加している他社よりも、入り組んだ構造になっていたというわけだ。新料金プランでは、こうした問題点を解消するようだ。吉澤氏も、次のように語っていた。

 「料金プランが複雑で分かりにくいというお客さまの声をいただいている。カケホーダイ、パケあえるも4年半前に導入した。いろいろなものを継ぎ足してきたことで、複雑で分かりにくいという声はたくさんいただいている。このような声は真摯(しんし)に受け止め、真にお客さまに選ばれ続けるドコモになるため、シンプルで分かりやすい料金に見直していく」

ドコモ 現行の料金プラン導入から4年半がたち、分かりにくいという声も目立ってきた

 もう1つ明らかになっているのが、「分離プランを軸に検討する」ということだ。ドコモは、docomo withとして部分的な分離プランを導入してきたが、料金自体を下げるには、これだけだと不十分だと判断したようだ。docomo withは、対象となる端末を購入すると、料金そのものが1500円安くなるプラン。同じ端末を使い続けたり、機種変更後に月々サポートを受け取らなかったりすれば割引が続くため、1500円は端末購入補助ではないという理屈だ。

ドコモ 料金そのものを2〜4割下げる反動で、4000億円の減収を見込む

 ただし、本来の分離プランは、ユーザーがどの端末を選んでも、端末価格と料金が明確に分かれているものを指す。そのため、端末の購入を伴うdocomo withは、「半分離プラン」ともいえる。吉澤氏が「月々サポートがなくなることを考えても、4000億円は大きい」と発言していることからも分かるように、やはり減収の規模は大きい。2019年度は大幅な減収を見込み、利益水準が回復するのは2023年ごろの見通しだ。

ドコモ 営業利益が9900億円に回復するのは、2023年になる見通し

 これまでドコモは、docomo withの拡大に慎重な姿勢を示してきた。以前から発表会では「4万円以下の端末」と基準を挙げており、逆に高価なハイエンドモデルには従来型の月々サポートを適用していく方針だった。9月に開催された新iPhoneの発売イベントでも、「フラグシップモデルを正価で購入していただくのは、なかなかハードルが高い」と吉澤氏述べていた。

 菅義偉官房長官の「4割値下げする余地がある」といった発言に代表される政府からの値下げ圧力についても、「われわれにはdocomo withのような安いプランもあり、10年、15年といった長期ユーザーが安くなることも加味されていない」(吉澤氏)と反発していたことは記憶に新しい。これらの発言を踏まえると、1カ月半で大胆な方針転換したことになる。

ドコモ iPhone XS、XS Max発売イベントでの吉澤氏。当時は分離プランの拡大に慎重な姿勢を示していたが……

 吉澤氏は、新料金プランの導入はあくまで「自主的なもの」としていたが、180度方向性が変わるのは不可解な点も多い。決断したのは自主的かもしれないが、いわゆる“忖度(そんたく)”があった可能性も高そうだ。

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