通信料金そのものが下がる分離プランだが、一方で端末価格の実質的な値引きである月々サポート、毎月割、月月割がといった割引は受けられなくなる。そのため、分離プランは、端末の“素の価格”が今まで以上に見えやすい。いわゆる割引を含んだ「実質価格」が打ち出せなくなり、見方によっては端末の大幅値上げと捉えられる恐れもある。
実際、先行して分離プランを主力に据えたKDDIやソフトバンクでは、端末販売への悪影響を懸念し、4年割賦と下取りを組み合わせたアップグレードプログラムを同時に導入した。ただ、孫氏が「今までは高い端末を中心にわれわれが販売を行ってきたが、より安い端末やSIMフリー端末を含め、お客さまの選択肢が広がる」と述べていた通り、ミドルレンジ以下の端末がじわじわと広がっていくことも事実だ。
例えばドコモでは、docomo withの端末がヒットしており、分離プランを先行して導入したauでも、ミドルレンジモデルの売れ行きがいい。裏を返せば、分離プランは安価な端末と組み合わせてこそ、初めて“安さ”を実感できるものだ。もともと端末購入補助が多めに付いていたフラグシップモデルを選ぶと、少なくとも2年間の料金は、あまり変わらないか、逆に高くなってしまう可能性もある。
分離プランは割引が2年間に限定されていた端末購入補助に比べ、同じ端末を長期間使えば使うほど、トータルでのコストは低くなりやすい。結果として、端末の買い替え期間が長期化してしまう恐れもある。今のスマートフォンは確かに性能も上り、ハイエンドモデルはもちろん、ミドルレンジモデルでも長く使いやすい。Androidのアップデートにはまだ課題も多いが、iPhoneに関しては、最新のOSも長期に渡って提供される。その意味では、分離プランは時流に合った仕組みともいえそうだ。
一方で、2020年には5Gの商用サービスがスタートする。超高速接続、超低遅延、多端末接続が売りの5Gだが、導入当初は、LTEの延長線にある高速通信が主な特徴になる。5Gでは他の産業との協業も増えるため、今までとはビジネスの業態が様変わりする可能性はあるが、対コンシューマー向けにはスマートフォンが依然として重要な端末であることに変わりはない。
また、スマートフォンの普及がLTEのエリアと速度競争を加速させたように、現時点では顕在化していない端末が5Gのインフラ整備をけん引する可能性もある。5Gの商用サービス開始まで2年を切ったこのタイミングで、あえて端末の買い替えサイクルを長期化する分離プランを導入するのは、最良の手とはいえない印象もある。
もっとも、3Gやフィーチャーフォンの末期にも似たような議論はあった。端末やインフラが成熟してくると、両者を分離したうえで価格競争を促進させる力学が働くのだろう。その後、スマートフォンが台頭し、LTEのインフラ競争が進んだことで、端末購入補助での値引きが定着した。同様に、政府が音頭を取って始まった分離プランだが、5G時代が本格的に到来した際には、再びその姿を変える可能性もありそうだ。
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