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2019年のキャッシュレス大展望 増殖する「○○ペイ」淘汰の流れも鈴木淳也のモバイル決済業界地図(2/2 ページ)

» 2019年01月10日 14時59分 公開
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QRコード決済で生き残るのは大手2〜3社だけではない

 2016年にサービスを開始した「Origami Pay」を皮切りに、次々と日本で新たなサービスが誕生しているQRコード決済。インターネット系の大手サービス事業者としてはLINEと楽天に続き、「PayPay」や「Amazon Pay」が参入した。携帯キャリア系としてはNTTドコモの「d払い」に加えてKDDIが「au PAY」を開始予定であり、その他サービス事業者でも「pixiv PAY」の他、メルカリの「メルペイ」も参入を見込んでいる。

 2019年に到来する新たな波としては、銀行系と流通系サービスの参入が挙げられる。GMOペイメントゲートウェイの提唱する「銀行Pay」の仕組みで金融機関同士を接続するネットワークを構築するパートナーとして、「YOKA Pay」「はまPay」「りそなPay」「ゆうちょPay」などの名前が挙がっており、2019年前半までに出そろうだろう。

 みずほ銀行の「みずほWallet」は既存のQUICPayやSuica対応だけでなく、QRコード採用の可能性も否定していない。三菱UFJ銀行の「MUFGウォレット」の他、メガバンク3社が相互運用をうたっている「Bank Pay」も2019年参入組だ。

 流通系ではコンビニが主体となっており、既に新会社を設立しているセブン&アイ・ホールディングスの「セブンペイ」、2019年7月にサービス開始を発表済みのユニー・ファミリーマートホールディングスの「ファミペイ」、そして名称未定ながらもローソンは「ローソンスマホペイ」に続いて新たなスマートフォン向け決済サービスを立ち上げる可能性を否定していない。このように、2019年は新サービス発表ラッシュが見込まれている。

YOKA Pay 銀行Payファミリーの1つ「YOKA Pay」をアピールする福岡銀行の広告

 「こんなにサービスが乱立して日本はFeliCa電子マネーの状況から学ばないのか」という意見も聞く。だが実際にところ、30近いサービスが同居できる市場サイズは日本にはなく、1〜2年といった短いスパンで雌雄が決すると筆者はみている。

 中国でも2013年の規制緩和以来、多数のQRコード決済サービスが乱立したが、結局のところ1〜2年程度で大勢は決し、多くが知るようにAlipay(支付宝)とWeChat Pay(微信仕付)の2強体制へと移行した。もともとAlibabaとTencentという、中国全土でオンライン利用されている億単位のユーザーを抱え、資金力も豊富な2社のし烈なキャンペーン競争と展開速度にライバルがかなう道理もなく、比較的短期間で競争が収束したというわけだ。

 日本の現状を振り返ると、既に大手チェーンではPOSが導入されており、ローソンのように新しい決済方式の導入に意欲的な小売を中心にQRコード決済の利用が始まっている。これは中国からのインバウンド客取り込みに熱心なドラッグストアでも同様で、日本国内では主にAlipayとWeChat Payの導入に合わせ、大手チェーン各社を中心にQRコード決済が広まった。

 だがキャッシュレス化という側面では重要な中小小売の開拓はあまり進んでいないのが現状で、これが大きく進むのが2019年のタイミングなのだろう。前述のようにクレジットカード取引に進む店舗がいれば、予算的な事情からQRコード決済を導入する店舗もあるだろう。このとき、日本全国の小売店舗を相手にできる営業力や体力のある組織でない限り、「自分のまわりで使える店舗は限られている」という話になる。

 店舗側も数あるQRコード決済に全対応するのではなく、「ユーザー数も使える店舗も多い」サービスを選別的にピックアップしてくるはずだ。このとき選ばれるサービスを考えていくと、業界内でも最大手と目されているLINE PayやPayPayを筆頭に、恐らく2〜3社、多くても4〜5社程度に有力サービスは絞られてくるだろう。

ファミリーマート バーコード決済(QRコード決済)取り扱い開始をアピールするファミリーマート

 ただ付記しておきたいのは、この手のサービスで必ずしも大手2〜3社だけが生き残るわけではなく、中期的に考えれば特定の地域や商圏に根ざしたサービス事業者が生き残っても不思議ではないということだ。例えば、コンビニやスーパーでは、人がその地域圏で生活する限りは同じ店と長い期間にわたってお付き合いすることになる。ゆえに流通系は囲い込みに向いた業界であり、独自のポイントプログラムや決済サービスが生き残りやすい。

 例えば筆者は北欧4カ国を取材してまわったが、キャッシュレス大国といわれるこれら国々でも独自の決済サービスやポイントプログラムは存在し、実際に使っている人にも何度か遭遇している。よく通うカフェなら、ポイントプログラムで割引や無料コーヒーのサービスを受けた方が当然お得だからだ。

 同様に、同じ地域内で共通の決済サービスが広く利用できるなら、地域通貨や独自の地域決済サービスが存在してもおかしくない。例えばイオンは既に同様の決済サービスやポイントプログラムを地域に存在する店舗に提供しているし、ローソンも同様のサービス参入の可能性を示唆している。つまり全国共通で使えるサービスがあると同時に、地域の利用者にメリットをもたらす決済サービスも増えるだろう。

Coop Medlem キャッシュレス先進国として知られるデンマークでは、「Coop Medlem」という複数のストア共通アプリによる決済システムが導入されており、実際にポイントや特典目当てに利用者も多い。通信方式はBluetoothを用いている
Espresso House 世界でも特にキャッシュレス化が進んでいるスウェーデンでも、ストアアプリによる決済はごく当たり前のものだ。これはEspresso Houseというコーヒーチェーンでの利用例
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