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2019年のキャッシュレス大展望 増殖する「○○ペイ」淘汰の流れも鈴木淳也のモバイル決済業界地図(1/2 ページ)

» 2019年01月10日 14時59分 公開

 2018年は「日本のキャッシュレス元年」だといわれており、実際にニュースの見出しや専門家のコメントにもそうした言葉が踊っている。2018年4月には経済産業省が「キャッシュレス・ビジョン」を発表し、2027年までに現状で2割程度といわれるキャッシュレス決済比率を4割まで上げるべく、さまざまな提案を行っている。

 今回は、2019年以降の日本のキャッシュレス動向がどう変わるのかを考えてみたい。

PayPay 2018年のキャッシュレス狂想曲をいい意味でも悪い意味でも盛り上げたPayPayだが……

2019年に起きる“キャッシュレス関連イベント”

 2019年はさまざまな要因でキャッシュレス化が進む一方で、その山場が年の後半に偏ることが予想される。このキャッシュレス進展に関わる要因と、主に2019年後半に起こるとみられるイベントを下記にまとめてみた。

  • 政府が提案する中小小売向けの最大5%(大手は2%)のキャッシュレス決済還元プログラムにより、中小小売でのクレジットカード対応またはQRコード決済対応が、消費税税率上げと軽減税率の始まる10月1日前に一気に進む
  • スタートでつまずいたPayPayだが、春以降にスタートするとみられる各種キャンペーンやユーザー側の理解促進で、夏以降にアカウント登録が上昇ペースに乗る
  • 銀行系の決済サービスや流通系(コンビニやスーパーなど)の決済サービスが春以降に順次スタートを予定しており、サービス認知向上とともに年の後半に既存プレーヤーでの利用も進む

 このうち、2019年の日本のキャッシュレス化に向けた最大の原動力となるのが、1つ目の「政府主導のキャッシュレス決済利用時のポイント還元」だ。2019年10月1日から施行される消費税率10%への値上げと軽減税率8%に対し、現金を使わずに決済をした人に購入金額の一部をポイントとして還元するものだ。

 当初は2%で検討が進められていたが、特にキャッシュレス決済対応が遅れているといわれる中小小売での利用推進のため、これら中小店舗でのポイント還元率を5%としている(大手チェーンなどは2%のまま)。5%対象の基準やポイント還元の方法など不明点は多いが、減税などを絡めたキャッシュレス推進策で韓国では一気にクレジットカード普及が進み、台湾でも2020年まで限定で小売事業者の営業税を5%から1%まで引き下げる施策でキャッシュレス決済比率を上げたこともあり、日本でも大きな効果をあげられるとみる。

 2020年の東京五輪が終了する夏シーズンまでの1年弱限定の施策ではあるが、クレジットカード決済のポイント還元率が多くて1〜2%程度であることを考えれば、2〜5%のポイント還元がプラスされ、さらに各種キャンペーンなどで1割近いポイント還元を得られるケースも考えられる。

 ゆえに、最大の狙い目である5%ポイント還元を目当てにユーザーが増えることが予想され、「これを機会にカード決済に対応してしまおう」と考える中小小売は多いと思われる。この他、高価なクレジットカード決済端末導入をためらう中小小売向け施策として、政府がコスト負担など導入支援を打ち出す話も出ている。

 中小小売でクレジットカード決済を導入する際の選択肢としては、CCT(Credit center terminal)のようなセンター接続でクレジットカードの信用照会を行う端末の導入の他、近年増加している汎用(はんよう)のタブレットやスマートフォンをそのままPOS兼クレジットカード決済端末として利用する「mPOS(エムポス)」の2つが主に考えられる。

 前者は日本のクレジットカード利用シーンでは一番よく見かけるが、機器のリース代の他、信用が低く決済件数が少ない小規模店舗ではカード決済手数料の店舗負担が高いという問題もあり、なかなか広く浸透していない。後者はSquareを先鞭(せんべん)として、日本国内でもリクルートの「Airレジ」や楽天の「楽天ペイ(実店舗決済)」といったサービスが登場してきており、インバウンド需要の多い観光地や中小規模店舗での利用が広まりつつある。

 中堅チェーンなどでは既存のPOSにCCTを接続して利用する形態も見られるが、小規模な店舗ではそもそもPOSが存在しておらず、mPOSはこの隙間を埋める役割も果たす。汎用のタブレットを利用できるので初期導入コストを抑えられる他、カード手数料も3.25〜4%程度とやや低いのでランニングコストの負担も少ない。

Spuare mPOSで有名なSquareだが、新しい提案として「Square Register」という小型POSも開発し、提供を開始している
モバイル決済 従来のタブレット型操作端末に加え、サイネージ付き決済端末を分離できるので、さまざまな店舗レイアウトに対応可能。なお、ICカード利用で必要になるPIN入力はソフトウェアベースのバーチャルPINパッドを採用している。PCI標準で最近要件が緩和されたことで利用が可能になったものだ

 とはいえ、これでもなお「厳しい」という小売は少なくないだろう。決済の全てえがカードになるわけではないにせよ、売り上げの数%という一定額が常にカード会社に流れるわけで、運転資金をギリギリでまわしている店舗にとっては負担が大きい。そのため、LINE PayやPayPayといったQRコード決済を提供する事業者では、2021年までの3年間限定で決済手数料を無料に設定し、目先の収益よりもまずは中小小売への普及を優先させるビジネスモデルを選択している。

 特にPayPayについては「店舗がQRコードを提示し、利用者が支払金額を入力する」という「静的QRコード決済」にも対応しており、そもそも店舗側が専用の機器をレジに設置する必要さえない。紙またはプレートに印刷したQRコードを利用者に見せるだけでいい。

ビックカメラ ビックカメラではPayPay導入にあたって、まず静的QRコード方式を採用した

 このように、キャッシュレス決済を普及させる最後の切り札となるのがQRコード決済というわけだ。日本ではクレジットカードやデビットカードに加え、各種電子マネーにQRコード決済など多種多様な決済サービスが存在する。方式も、磁気カードからICチップ、非接触通信、QRコードやバーコードの読み取り、アプリを使った間接決済と(出前アプリやUberなどが好例)多い。

 どれが正解というわけでもなく、今後数年をかけて、日本ではいろいろな決済方式を取り入れて徐々にキャッシュレス化が進んでいくことになる。次項では、2019年中には20〜30近くまで増えることが見込まれるQRコード決済の現状と展望をみていく。

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