11月20日、5月17日付で公布された改正電波法の一部が施行された。これにより、同時から「技適マーク」を表示していない無線機器を実験目的で一時利用できる「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」の運用が始まった。
この記事では、制度の概要を説明する。
【更新:22時25分】一部の表現を分かりやすくしました
一部の例外を除き、日本国内で使われる無線機器は電波法に基づく「技術基準適合証明」を取得しなければならない。これに加えて、携帯電話ネットワークなど公衆無線回線に接続する機器は電気通信事業法に基づく「技術基準適合認定」も取得する必要がある。
技術基準適合証明と技術基準適合認定はまとめて「技適など」と呼ばれている。これを取得した機器は、「技適マーク」と認証番号を合わせて本体の分かりやすい位置に表示することが求められる。
ただし、スマートフォンなどディスプレイを持つ機器については画面への「電磁的表示」も認められている。また超小型機器や通信モジュールなど、本体への表示(印字)が困難な機器では、パッケージや付属文章(取扱説明書など)に表示することも可能だ。
技適マークと認証番号の表示がない(できない)機器を使うのは原則として違法となる。技適などを取得している機器でも、表示がなければ違法となる(※1)。
(※1)実例としては、「試験目的で技適などは取得したものの、日本での販売が見送られ、製品では技適などの表示が一切されなかった」「機種としては技適などを取得したが、国内で正規流通している個体のみ表示を加える(≒海外流通品には表示がない)」といったものがある
先述の「一部の例外」には「海外からローミングインする携帯電話」や「海外から持ち込まれたWi-Fi(無線LAN)/Bluetoothデバイス」といったものがある。しかし、後者については入国してから90日以内という日数制限があり、実験用途で先端デバイスを試すには日数があまりにも足りないといった指摘があった。
またこれら2つの例外は日本に在住する日本人が利用することを想定していない。そのため、日本の研究機関や企業は、もっと簡易な手続きで無線を使う海外の先端デバイスを試せる制度の整備を求めてきた。
このような経緯から改正電波法に盛り込まれたのが、技適未取得機器を用いた実験等の特例制度だ。この制度ができたことにより、技適などを取得していない、一定の条件を満たす無線機器を180日以内の範囲で“試験的に”運用できるようになった。
特例制度の対象となるのは、海外の監督官庁が認定する認証(※2)を取得している以下の規格を用いる無線通信機器。
※2 米国の連邦通信委員会による「FCC ID」やEU(ヨーロッパ連合)加盟国向け製品に添付される「CEマーク」など
※3 IEEE 802.11axについてはDraft 1.0〜4.0まで
明確な標準が存在しない無線通信規格についても、技適などで定めた基準に適合していることを無線従事者が確認できれば利用できる場合もある。
使用できる場所は、国内の技適などを取得している機器に準じる。例えば、5.2GHz帯/5.3GHz帯を利用するIEEE 802.11ax/ac/a規格のWi-Fi機器は屋内でのみ利用できる。
この制度の利用を希望する場合、申請者の住所地を所管する総合通信局(沖縄県は沖縄総合通信事務所)に申請する必要がある。記事の掲載時は「先行運用期間」となっており、書類を総合通信局に持参するか郵送して提出することになる。
提出する書類は、試験提供中のWebツールを利用すると比較的簡単に作れる。主な記載事項は以下の通り。
利用する端末は複数台まとめて申請できるが、後から追加することはできない。ただし、故障時の端末変更(交換)は届け出ればできる。申請した端末を第三者に使わせる場合は、実験用の端末であることを説明するなど、適切な管理も求められる。
目的を達成して実験・試験・調査を終了する場合は、速やかに利用廃止を総合通信局に届け出る必要がある。先行運用期間中は、廃止の届け出をメールで行える仕組みを試験的に提供している。
先述の通り、この制度で端末を利用できる期間は180日以内。「もうちょっと長く使いたい」と思った場合でも、同じ端末を同じ目的で使う場合は申請できない。ただし、同じ端末を別の目的で運用する場合は、再度申し込める。
先行運用期間の終了後、Webで申請から廃止まで完結できるシステムが整備される予定となっている。総務省によると、その期日は「2020年春頃」。寒さが和らぐ頃には、より気軽に使える制度になるだろう。
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