FMトランスミッターを使って電波法違反に? 技適マークと同じく重要な「ELPマーク」電波利用環境シンポジウム

» 2015年06月12日 06時00分 公開
[田中聡ITmedia]

 スマートフォンに保存した音楽を、クルマのFMラジオで聴くために活用する「FMトランスミッター」。クルマで手持ちの楽曲を楽しめる便利な製品だが、実は、こうした製品を使うことで、知らず知らずのうちに電波法を違反してしまう恐れがあるのだ。

photophoto 後述する「ELPマーク」の付いたFMトランスミッター

 日本で電波を扱う機器や設備は、法的な観点から、大きく3種類に分けられる。

 1つめは免許が必要なもので、携帯電話の基地局や、テレビ・ラジオの放送局などが該当する。これらのインフラには混信を防ぐために周波数が割り当てられ、総務大臣の無線局の免許を申請する必要がある。

 2つめは「技術基準適合証明」、いわゆる「技適」が必要なもの。携帯電話端末や無線LANルーター、コードレス電話、Bluetooth機器などが該当する。こちらは総務大臣の免許は必要ない。

 そして3つめが、本稿のテーマとなる「微弱な電波を発するもの」。冒頭で紹介したFMトランスミッターや、クルマのキーレスリモコン、ワイヤレスマイク、防犯カメラ、ドアホンなどが該当する。文字通り電波が弱く、妨害を与える恐れが少ないとされている。具体的には、総務省が定めた3メートル/200メートル離れたときの電界強度が、一定値より低ければ「微弱」と見なされ、免許を取得する必要はない。

photophoto 電波を扱う製品に求められる制度や基準(写真=左)。微弱な電波を発する機器に定められている電界強度の許容値(写真=右)

 しかし、総務省が2013〜2014年度に、FMトランスミッターやワイヤレスカメラなど、微弱電波を発する機器を購入して電波の強さを調べる「試買テスト」を実施したところ、約9割の製品が、基準値を上回る電波を発していたという。つまり「実は微弱な電波ではなかった」というわけだ。特に、海外から輸入した製品で、基準値にそぐわないものが多い傾向にあったようだ。

photo 総務省が2013〜2014年度に実施した試買テストで、約9割の製品が基準に合わない製品だった

 こうした“不法な電波”を発してしまうと、消防無線や航空無線などを妨害してしまい、最悪、人命に影響を与える恐れさえある。実際にそのような事例は何件か起きている。例えば2014年4月には、一般車両のカーナビに内蔵しているFMトランスミッターが原因で、北陸総合通信局管内で消防用無線に障害が発生した。

photophoto 実際に通信妨害が起こったケース

 不法電波を発射する機器を使った場合、それを知らなかったとしても電波法違反になり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられる。さらに、不法電波で重要な無線通信を妨害した場合は、5年以下の懲役または250万円以下の罰金が課せられる。これは決して他人事ではないだろう。

 不法電波を発する機器が氾濫している状況を改善すべく立ち上がったのが、全国自動車用品工業会(JAAMA)と、自動車用品小売業協会(APARA)。両団体は「微弱無線設備登録制度」を制定し、6月1日に運用を開始。外部の指定機関が試験を行い、電波法が定める微弱の基準を満たした製品には「微弱無線適合マーク(ELPマーク)」が付けられ、消費者は安全な製品であることが確認できる。

photophoto 「微弱無線設備登録制度」が6月1日から始まり、基準を満たした製品にはELPマークが付けられる
photo ELPマークのシールがパッケージで確認できる。技適マークのように、製品そのものにプリントされるものではないようだ
photophoto 微弱無線設備登録制度のメリットと今後の期待

 現状、ELPマークに技適と同様の法的な拘束力はないが、5月に改正された電波法では、輸入業者や販売業者に対し、技術基準に合わない無線製品を販売しない努力義務を規定したほか、総務大臣の勧告に従わない業者には、従うよう命令できるようになる。

photo 技術基準に合わない製品を販売する業者には勧告でき、勧告に従わない業者には、措置を講じるよう命令も可能になる

 6月10日に総務省が開催した「電波利用環境シンポジウム」では、全国自動車用品工業会 副理事長の加藤学氏が、微弱無線設備登録制度の詳細を説明した。加藤氏は、同制度のメリットについて「基準適合の公平性確保」「CSR(企業の社会的責任)の確保と企業コンプライアンスの向上」「粗悪品の排除」を挙げる。APARAの加盟店では、ELPマークの付いた製品を積極的に販売していくとした。

 総務省が認定した登録証明機関の1つとして、実際に微弱無線設備の性能評価を行うUL Japan コンシューマーテクノロジー事業部 コマーシャルグループ EMC/無線セールス セールスマネージャーの石綿剛氏も登壇し、先述した重要な無線を妨害した事例や、総務省の試買テストの結果などを詳しく説明した。

 試買テストで総務省の基準を満たさなかった製品が発覚した後も、「Webサイトで謝罪や自主回収をしたメーカーは一部のみだった」といい、一方で「真摯(しんし)に取り組まれているメーカーさんもいらっしゃる」と話す。また同氏は、性能テストにあたって「微弱ではない電波を出している製品が多く、測定器を壊すほど強力な電波を発生している製品も多数あった」と苦労した部分も語った。

photophoto 全国自動車用品工業会 副理事長の加藤学氏(写真=左)とUL Japanの石綿剛氏(写真=右)
photophoto 微弱電波を発する無線機器は、年間314万台が販売されると推定される(写真=左)。2014年度の試買テストでは、200機種中183機種が「不適合」とされた(写真=右)

 日本で利用する携帯電話は「技適マーク」が付いた製品でないといけない――ことは、ITmedia Mobile読者の多くがご存じかと思うが、今後、FMトランスミッターやワイヤレスマイクなどの微弱電波を発する機器を購入する際は、「ELPマーク」が付いているかどうかも確認しよう。

photo 総務省は、不法電波を発する製品を使わないよう啓もうするパンフレットやポスターも制作している
photo シンポジウムでもELPマークをアピール。下段中央は総務省 総合通信基盤局 電波部長の富永昌彦氏

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