Visaの物理カードは、比較的最近のものならほとんどがタッチ決済に対応しているため、多くの人がそのままVisaのクレジットカードをタッチして乗車できる。こうした「オープンループ」の仕組みで自動改札機が利用できるのは、国内では初の事例となる。
Suicaのような交通系ICとは異なり、事前に購入、チャージの必要はなく、Visaのクレジットカードならそのままタッチすればいい。交通系ICに比べて一瞬の間があった後、改札が反応して入場できるようになる。4G通信でクラウドと接続して、毎回通信を行っていることもあって、反応は決して機敏ではない。
南海電鉄によれば、メインターミナル駅の「なんば駅」での1日の乗降客数は約26万人。この規模の乗降客数をカバーできるか、そうした点も検証することが実験の狙いの1つだ。
実際にタッチ決済で改札を通過する様子を見たところ、タッチしてから一瞬間があり、ゲートが開く。交通系ICのように歩きながらタッチしてもほぼ同時にゲートが開くというスピードではない。ただし、交通系ICほどのスピードが必要かどうかはまた別問題なので、今後の検証次第だろう
また、クレジットカードのNFCは電波強度がそれほど強くはなく、カードを完全にリーダーにタッチさせないと読み取れない。このあたりは、少し浮かせた状態でも機敏に反応する交通系ICとは異なる点だ。また、クレジットカードのNFC電波の強度を強くすると、非接触のスキミングも懸念されるため難しいところではある。とはいえ、今回の実験が「JR新宿駅のピーク時間の乗降客をさばく」といった、世界でもまれな状況を想定しているわけではないため、南海電鉄では現状のスピードが十分かどうかを実験で判断する。
クレジットカードで入場すると、その記録はQUADRACのサーバに送信される。出場時には入場記録と照合して運賃を算出して決済を行う。毎回、4Gによる通信を行っているため、改札機には出場時の運賃が表示される。これが最大で500ミリ秒程度の時間となっており、最終的に「交通系ICよりは遅いが、改札機で立ち止まるほどではない」というスピード感になる。
感触としては、「交通系ICのように前の人に接近して連続して通る」といったやり方だと、処理が追い付けない可能性は高い。コロナ禍の状況でもあり、「ソーシャルディスタンスを保って1〜2mほど間隔を空けて通れば問題ない」という印象だった。
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