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Visaのタッチ決済とQRコードで改札を通過 南海鉄道の実証実験で見えたこと(3/3 ページ)

» 2021年04月07日 13時50分 公開
[小山安博ITmedia]
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現状、Google Payでは利用履歴を確認できない

 入出場の記録は、QUADRACのQ-moveにユーザー登録して、クレジットカード番号を登録すると確認できる。こちらはすぐに反映されるが、実際の決済は「1日分をまとめて夜中に行う」というのが南海電鉄側の説明。実際に使ったカードを確認すると、Google Payを使ったデビットカードは、翌日の朝6時頃に決済が行われ、引き落とされていた。

 それに対して三井住友カードのナンバーレスカードを使った決済は2日後に決済が行われた。三井住友カードによれば「クレジットカードは売上データを取り込んでから通知するが、デビットやプリペイドはオーソリデータを受信した時点で通知するためタイミングが異なる」という。

南海鉄道南海鉄道 QUADRACのQ-moveサイト。履歴はこのサイトで確認できる。京都丹後鉄道も同じサイトを利用しているため、カード番号を登録すればどちらの鉄道でも履歴を確認可能(写真=左)。Google Payの決済は翌日の6時ごろに行われた(写真=右)

 またGoogle Payに登録したカードの場合、「バーチャルアカウント番号」が発行されてトークン化が行われる。そのため、クレジットカード番号自体を登録してもQ-moveには履歴として表示されない。そのため、現在はGoogle Payで利用履歴を個別に確認するすべはないが、「近日中にひも付けている親カードで履歴照会を行えるよう対応予定」(三井住友カード)とのこと。

鉄道にタッチ決済を導入するメリット

 今回は実証実験のため、対応改札機を設置しているのは南海電鉄の一部駅で、なんば、新今宮、天下茶屋、堺東、関西空港などに加え、高野山、高野下、九度山という観光地のローカル駅にも設置され、全部で16駅32改札が対応する。毎回、4G通信が行われるため、通信頻度が高いターミナル駅と、通信環境が良好とは言いがたいローカル駅の双方で実験を行う。

 クレジットカードでの公共交通利用は、例えば英ロンドンなど、複数の国で始まっている。手持ちのクレジットカードでそのまま鉄道に乗車できるため、海外の旅行者にはメリットが大きく、日本人でも交通系ICを購入したりチャージしたりせず、そのまま鉄道に乗車できるというメリットがある。

 日本では、多くの公共交通機関で交通系ICが使えるので、メリットは大きくはないが、交通系ICよりも導入が容易で低コストになるため、これまで交通系ICを導入できなかった交通機関でも利用しやすい。コロナ禍の現状はともかく、今後海外からの旅行者を重視するエリアならメリットも大きくなるだろう。海外発行のVisaカードであればApple Payに登録してNFCによるタッチ決済が可能なため、Apple Payを使う海外からの旅行者もカバーできる。

 同時に、観光エリアの店舗がタッチ決済対応を進めれば、鉄道に乗って観光地に来て店舗で買い物などの支払いをする、という一連の流れがクレジットカードのタッチで全て賄える。そうした状況になれば、今後も拡大するであろうグローバル的な非接触決済のニーズもカバーできる。タクシーやバスなどとも連携するMaaSの分野にも発展できるだろう。

対応カードが少ないのは課題

 関西は、関東の交通事情とは異なり、複数の鉄道会社の相互乗り入れが少ないことから、今回のようなVisaのタッチ決済対応改札機の導入がしやすいという面はある。南海電鉄では、12月12日までの8カ月間という長期間の実験を行うが、その間にQRコード決済のデジタルチケットを複数発行して実験を行う予定。その分、クレジットカードのタッチ決済での改札の動向も長く実証できる。

 前述の通り、日本ではVisaがApple Payに対応していないこと、Google PayにNFCのタッチ決済として利用できるカードが一部のデビットカードとプリペイドカードのみということは課題の1つだ。鉄道事業者にとってもユーザーにとってもニーズは高いはずで、このあたりはVisa側の対応に期待したいところ。

 現時点で、対応カードがVisaブランドのみという点も課題だ。JCBやMasterCard、アメリカンエクスプレスなど、他のカードブランドをどのようにサポートするか、処理スピードをどのように判断するか。京都丹後鉄道に比べて大手の南海電鉄による長期間の実証実験は、鉄道へのタッチ決済導入の大きな試金石になるだろう。

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