一方で、現在進行形でエリアの拡大が進む5Gのキラーサービスが何になるかは、まだ見えていない。契約者は順調に増えているものの、どちらかというと5Gを目当てにしているわけではなく、最新のスマートフォンを購入したら、5Gに加入することになったユーザーの方が多いだろう。楽天モバイルやY!mobileは自動で5G契約に切り替わる上に、各社のオンライン専用プランは4Gと5Gを区別していないため、今後も見た目上、契約者数の増加は加速していくはずだ。状況としては、先に挙げた900iシリーズ登場以前だった3Gや、iPhone 5登場前のLTEに近い印象を受ける。
大容量や高速通信を生かす端末として、サムスン電子やファーウェイ、モトローラなどからフォルダブルスマートフォンが続々と登場している。スマートフォン事業からの撤退を表明したが、LGエレクトロニクスがここ数モデルで打ち出してきたデュアルスクリーンも、こうした流れに沿った端末といえそうだ。一方で、フォルダブルスマートフォンはまだ価格が高く、一般的なユーザーが簡単に手を出せるものにはなっていない。これがどこまでスタンダードなものになるのかは、もう少し状況を見守っていく必要がありそうだ。
ただし、その萌芽のようなものは見えている。1つは、コロナ禍でにわかに脚光を浴びたオンライン会議。Zoom、Teams、Google Meetなど、さまざまなサービスがあるが、これらをより高画質で、かつ気兼ねなく使おうと思ったら、やはり容量に制限がない5Gの方がいい。リモートワークの広がりを受け、PCやタブレットの販売台数が急拡大したのも、5Gにとって追い風だ(全てがモバイル通信対応ではないが)。こうした販売動向の変化には、次のスマートフォンに対するヒントが隠されているような気がしている。
また、5Gは売りの1つに超多端末接続がある。スマートフォンをはじめとする、携帯電話以外のデバイスも通信につながることが想定されているというわけだ。個人向けのIoTデバイスが徐々に身近になる一方で、その多くは接続をWi-FiやBluetoothに頼っている。こうしたところに5Gが入り込んでいければ、思わぬヒット商品が生まれるかもしれない。現状では、「データシェア」のような複数回線を持つ仕組みが不十分なため、5Gでの多端末接続を前提に、各社にブラッシュアップしてほしいと感じている。
20周年を迎えたITmedia Mobileだが、通信規格にしておよそ2世代分を丸ごと見守ってきたことになる。次の節目は30周年。そのころには、5Gが日本全国で当たり前のように使えるようになり、6Gのサービスが開始されている可能性もある。そのサービスインをいち早く報じられるよう、ここからの10年の健闘にも期待したい。筆者も(発注さえしていただければ)、微力ながら編集部を支えていきたいと考えている。改めて、20周年、おめでとうございます。
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