ITmedia Mobile 20周年特集

政府主導で進んだ料金値下げ/静かな船出も普及の兆しを見せた5G――2020年のモバイル業界を総括石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2020年12月30日 11時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 2020年も、残すところあとわずか。コロナ禍で激動の1年だった2020年だが、ことモバイル業界に関しては、ネガティブな影響が少なかった。逆に、リモートワークやオンライン授業などが進んだことで、サービス、ソリューション分野の利用や売り上げは大きく伸びている。通信は、文字通りリモートでのコミュニケーションを支えるための技術。“非接触”はモバイル業界の大前提だったということが改めて浮き彫りになった。

 コロナ以上にモバイル業界を振り回したのが、政府主導の「官製値下げ」だ。2020年は1年を通じて料金が話題を集めた。4月に楽天モバイルが本格参入したことに端を発し、5月にはKDDI傘下だったUQ mobileが対抗プランを用意。そのUQ mobileは、10月に入ってKDDI本体に統合された。その数週間前には、NTTがドコモの完全子会社化を発表。12月には、オンライン専用プランの「ahamo」を披露している。

 3月にMNOが3社そろって5Gのサービスを開始したのも、モバイル業界にとって大きな転換点だったと総括できる。コロナ禍やエリアの狭さ、端末バリエーションの少なさもあり、当初は低空飛行を続けていた3社の5Gだが、AndroidのミドルレンジモデルやiPhone 12シリーズの登場を機に、普及の勢いに弾みをつけている。そんな2020年最後の連載として、モバイル業界の1年を振り返っていきたい。

2980円を巡る攻防、政府主導で進んだ料金値下げ

 振り返ってみると、2020年は、新たにサービスが始まった5G以上に、政府主導の料金値下げが取り沙汰されることが多い1年だった。9月に菅義偉新政権が誕生すると、その動きはさらに加速。料金に対して、直接的な指示とも取れる発言が増えている。20GBプランやメインブランドでの値下げといった形で、“指示”が具体化していった。一連の発言に呼応する形で、各社が20GBプランやブランド間の移行手数料の無料化を発表した。

サブブランド 政府の意向に従う形で、各社がブランド間の移行手数料を無料化している

 料金競争の引き金になると期待されていたのが、楽天モバイルの本格参入だ。同社は、2019年10月のサービスインを事実上延期し、無料サポータープログラムを開始。2020年1月には同プログラムの追加募集を行い、晴れて4月に本格サービスを開始した。低価格で打って出ることを宣言していただけに、どのような料金プランになるのかは高い注目を集めたが、結果として導入されたのが、2980円でデータ容量無制限の「UN-LIMIT」だった。

楽天モバイル 本格参入を果たした楽天モバイルは、2980円でデータ容量無制限を打ち出した

 一方で、楽天モバイルが順風満帆だったかというと、必ずしもそうではない。本格サービス開始直後には、自社ブランドを冠した主力モデルのRakuten Miniの周波数が、無断で変更されていたことが発覚。エリア展開が十分ではなく、auのローミングには1GBあたり約500円と高いコストが発生してしまうため、都市部以外への展開も限定的だった。年内の300万契約を目標に掲げていたが、11月時点での申し込み数が179万と、計画通りにユーザーの獲得が進んでいない。

楽天モバイル 11月時点での申し込み数は179万。目標にしていた年内300万契約は、未達に終わりそうだ

 本来は、競争の促進で自然と値下げが進むことが期待されていたが、こうした状況に業を煮やしたのか、上記のように、政府の値下げ要請は徐々に露骨になっていった印象を受ける。これに対し、NTTによる完全子会社化を機に、料金競争を仕掛けてきたのがドコモだった。オンライン専用にすることでコストを削り、楽天モバイルと同額の2980円を実現。ソフトバンクも、対抗策としてLINEモバイルを完全子会社化し、「SoftBank on LINE」をコンセプトにした新ブランドを立ち上げる見込みだ。

ahamo ドコモが発表したオンライン専用の“料金プラン”のahamoは、その安さやシンプルさから大きな話題を呼んだ
ahamo これに対し、即座に対抗策を打ち出したのはソフトバンクだった
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