NTTドコモの料金値下げに対し、即座に、かつ真っ向から対抗したのはソフトバンクだった。同社は、ソフトバンク直轄で運営しているソフトバンクとY!mobile(Y!mobile)の双方を値下げすると同時に、LINEと共同運営の形を取るLINEモバイルを完全子会社化。第3のブランドとして、「SoftBank on LINE」をコンセプトにした、オンライン専用のブランドを立ち上げる。
ソフトバンクブランドでの対抗値下げは、ドコモの「5Gギガホ プレミア」や「ギガホプレミア」を意識したもの。SoftBank on LINEは、ahamoと同じく、デジタルネイティブ世代に向けたものだ。これに対し、Y!mobileの料金改定は、勢いを増すUQ mobileに水準を合わせた。全面対抗に見える一方で、料金体系を見ると、ドコモよりシンプルにまとまっていることも分かる。後出しゆえの分かりやすさがあるといえそうだ。ここでは、その狙いを見ていきたい。
ahamoや5Gギガホ プレミアを導入するドコモに対し、ソフトバンクは3つのブランドで対抗する。現状では、ソフトバンク、Y!mobileとともに、LINEとの合弁会社でMVNOのLINEモバイルを展開しているが、これを完全子会社化。ソフトバンク自身が直接運営する形を取り、MVNOではなく、MNOとして新たなブランドを立ち上げる。コンセプトは、SoftBank on LINEだ。
SoftBank on LINEは、ahamoの対抗軸として立ち上げる。料金は20GBで2980円(税別、以下同)。オンライン専用で、店舗などを使ったサポートをしない点も、ahamoと同じだ。2980円には、5分までの音声通話定額も含まれている。料金水準はほぼ同じに設定した一方で、中身を見ていくと、ahamoと異なる点もある。特に、LINEやeSIMの活用については大きな差別化のポイントになりうる。
新規でahamoを立ち上げるドコモは、申し込みやサポートなどを行うアプリをゼロベースで開発するのに対し、ソフトバンクは傘下になるLINEを活用する。「普段使っているLINEでお申し込みや情報変更ができる」(代表取締役副社長 執行役員兼COO 榛葉淳氏)のは、ユーザーインタフェースの観点で大きな強みだ。LINEのトークをベースにした契約やサポートは、ユーザーにとって利用しやすい上に、プラットフォームの母集団が大きいため、販促などもかけやすい。
eSIMの活用を当初から視野に入れている点も、オンラインで完結させる上で重要だ。SIMカードとオンラインの相性は必ずしもいいとはいえず、申し込みから開通までのタイムラグが生じてしまう。時間や場所にとらわれないオンライン本来のメリットを最大化するのであれば、eSIMの活用は必須だ。当初はSIMカードのみになるahamoより、サービス内容がコンセプトに忠実といえる。
料金水準や容量はahamoに合わせた格好だが、ソフトバンクはSoftBank on LINEの準備を水面下で進めていた節がある。9月には、楽天モバイルより早くeKYCをY!mobileの一部販路に導入。eSIMの活用についても前向きな姿勢を示していた。榛葉氏は検討開始の時期を「ご想像にお任せする」と語っていたが、コンセプト自体は前々から温めていたことが見え隠れする。
とはいえ、LINEモバイルの完全子会社化は、契約締結前に発表されており、あわただしさもうかがえる。榛葉氏は「SoftBank on LINEのサービスインをもって、LINEモバイルの新規受付を停止する」と語っていたものの、LINEモバイル側は「協議をしていく」としており、正式な時期はアナウンスされていない。ahamo対抗で開始時期を3月に合わせるため、急きょ対抗策をまとめ上げた印象も受ける。このスピード感は、ソフトバンクならではといえそうだ。
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