5Gが創出する新ビジネス
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» 2020年12月22日 09時44分 公開

5Gビジネスの神髄に迫る:2020年の5G動向を振り返る コロナ禍で“最悪のスタート”も、2021年の本格始動に期待 (1/3)

日本の5G元年となった2020年だが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を強く受け、5Gをアピールするイベントが中止・延期になるなどして低迷。技術や周波数の影響もありローカル5Gを主体とした法人向けの利活用も大きくは広がっていない。唯一の救いといえるのは、コロナ禍でも携帯各社の5G整備スケジュールにあまり大きな影響が出なかったことだろう。

[佐野正弘,ITmedia]

 日本の5G元年となった2020年だが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を強く受け、5Gをアピールするイベントが中止・延期になるなどして低迷。技術や周波数の影響もありローカル5Gを主体とした法人向けの利活用も大きくは広がっていない。ある意味で最悪のスタートを切ってしまったともいえる、2020年の日本の5G動向を改めて振り返ってみたい。

商用サービス開始の3月にコロナ禍が直撃

 世界主要各国で5Gの商用サービスが相次ぎ、実質的な「5G元年」となった2019年から遅れること1年。2020年は日本でもようやく5Gの商用サービスが開始され、東京五輪などで5Gの大々的なアピールがなされて世界的にも大きな注目を集める……はずだった。

 だが2020年末となった現在、5Gに対する注目度はとても高いとはいえず、2020年9月に誕生した菅義偉内閣総理大臣が政権公約に掲げる、携帯電話の料金引き下げに関する動向ばかりが世間をにぎわせている状況だ。なぜこのような状況となってしまったのだろうか。

5G 2020年1月22日にNTTドコモが開催した「DOCOMO Open House 2020」より。新型コロナウイルスの感染が本格化する前のこの頃はまだ、5Gに対する期待と関心が高かった

 最大の要因は、やはり新型コロナウイルスの感染拡大だろう。日本では2020年の初頭から徐々に感染者が増え始めた新型コロナウイルスだが、3月頃にはその影響が深刻化し、全国的に大きな不安が広がっていた。

 その感染拡大のタイミングが5Gのサービス開始時期に当たったことが不運の始まりだったといえる。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯大手3社は2020年3月に5Gの商用サービスを開始する計画を立て、大々的な5Gのアピールをするべく準備を入念に進めていたのだが、そのタイミングで新型コロナウイルスの感染が急拡大してしまった。

 結果、各社は急きょ発表イベントをオンラインでの実施に移行するなど対応に追われ、アピールの大幅な縮小を余儀なくされてしまったのである。

5G 2020年3月5日に先陣を切って5Gの商用サービス開始を発表したソフトバンク。芸能人やスポーツ選手が多数登壇した華やかなイベントだったが、新型コロナウイルス感染拡大で急きょオンラインでの発表を余儀なくされた

イベント中止で5Gのデメリットが目立つ結果に

 その後も新型コロナウイルスの感染が収まることはなく、2020年4月7日には緊急事態宣言が発令され、約2カ月にわたり外出自粛が求められる状況が続いた。これが5Gの2つ目の不運を招くこととなる。

 3社の5Gサービス開始発表当初大きな話題となったのは、1つに5G向けに割り当てられた周波数帯が広範囲をカバーするのにあまり適していないため、エリアが非常に狭いこと。そしてもう1つは、5G対応スマートフォンがハイエンドモデルに限定され、値段も非常に高かったこと。2019年10月の電気通信事業法改正でスマートフォンの値引き額が大幅に制限された直後だけに、消費者に購入しづらい印象を与えてしまったのは確かだろう。

5G NTTドコモは5Gのサービス開始に合わせて5G対応スマートフォン6機種を用意。だがいずれも性能の高いハイエンドモデルで、一括10万円は下らない値段だった

 もっとも、そうした事態は携帯各社とも想定済みだったといえ、コンシューマー向けの5G普及はあまり急いでいなかった印象を受ける。実際ドコモは、2020年度上半期の5G契約数が38万ながら、2020年度末の目標である250万契約の獲得に向けて“順調”としていたし、ソフトバンクの代表取締役社長である宮内謙氏は、2020年8月5日の決算説明会で「晩秋から来年(2021年)にかけて5G祭りが始まる」と話し、2020年度下期に5Gの契約数を急拡大させるプランを立てていた。

5G ドコモの2020年度第2四半期決算説明会資料より。同社の5G契約数は2020年度上期で38万にとどまるが、年度末の250万契約という予想に向けては順調だとしている

 それはネットワークや端末の充実度が進むまでに時間がかかるからであり、携帯各社はそれまで、場所や端末に左右されにくいイベントで5Gを活用することにより、5Gへの関心を高めて後の加入者拡大につなげるというシナリオを描いていたわけだ。実際、ドコモはスポンサーとなっている東京五輪で5Gをアピールする計画を立てていたし、KDDIは5Gのサービス発表会で、音楽ライブやアートイベントなど、5Gを活用した多数のイベントを実施するとしていた。

5G KDDIは5Gの商用サービス開始に合わせて、東京・渋谷でアニメ「攻殻機動隊 SAC_2045」と連携したリアルイベントを2020年4月に予定していたが、緊急事態宣言の発令によりオンラインでの代替イベントが実施されることとなった

 だがそのシナリオは、コロナ禍と緊急事態宣言でことごとく打ち砕かれることとなる。感染防止のため多くの人を集めるイベントは開催できなくなり、東京五輪をはじめとして計画されていたイベントがことごとく中止・延期を余儀なくされたのだ。その結果、5Gの狭いエリアと値段が高い端末というネガティブな要素ばかりが目立ち、5Gへの関心が大きく落ち込んでしまったわけだ。

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