5Gが創出する新ビジネス

「5G元年」に出遅れた日本、5Gへの取り組みは本当に遅れているのか?5Gビジネスの神髄に迫る(1/2 ページ)

» 2020年03月03日 06時00分 公開
[佐野正弘ITmedia]

 昨今大きな注目を集めている、次世代モバイル通信規格の「5G」。日本では2020年3月にサービス開始予定だが、実は海外では2019年が「5G元年」であり、多くの国が既に5Gサービスを提供している状況だ。なぜ日本は5Gのサービス開始が遅れているのか、そして日本の5Gに対する取り組みは本当に遅れているのかを、これまでの経緯を振り返りながら考えてみよう。

日本の5G商用サービスは1年遅れている

 新型コロナウイルス「COVID-19」の影響が話題となっている昨今だが、2020年日本で大きなトピックとなるのは東京五輪、通信業界では「5G」であることに異論の余地はないだろう。

 第5世代のモバイル通信規格である5Gは、最大20Gbpsの「高速大容量通信」ができるというだけでなく、ネットワーク遅延が1ミリ秒以下となる「超低遅延」、そして1平方kmあたり100万台の機器を同時にネットワークに接続できる「多数同時接続」といった特徴を備えており、それがスマートフォンの進化だけでなく、XRから自動運転、スマートシティーの実現など、あらゆる業種業界に影響を与える存在になるとして注目されているのだ。

 日本でもその5Gの商用サービスが、2020年の3月に開始する予定だ。既にKDDIが2020年3月、ソフトバンクは2020年3月末のサービス開始を打ち出している他、NTTドコモは2020年春、楽天モバイルは2020年6月に5Gのサービスを開始するとの方針を打ち出しており、3月に各社の5Gサービスに関する大きな動きが相次ぐことが予想されている。

5G ソフトバンクは2020年3月末に5Gの商用サービスを開始すると表明。3月以降、国内携帯電話各社が5Gのサービスを開始することは確実だ

 だが日本の外に目を向けると、実は5Gは既に始まっているサービスでもある。標準化完了前の仕様を含む形であれば、2018年に米国で、標準化完了後の仕様でのサービスであれば2019年4月に米国と韓国で商用サービスが始まっている。その後、スイスやドイツなど欧州の多くの国や、中国、オーストラリア、サウジアラビア中国など20近い国々が5Gの商用サービスを開始しており、世界的に見れば2019年が「5G元年」だったのだ。

5G 韓国では2019年4月に、LGユープラスなど3社が同時に商用サービスを開始。それ以降各国で5Gの商用サービス開始が相次いだ

 日本では、最も先んじた米韓と比べ1年も遅れてサービスを開始することになるので、「5Gで大きく出遅れた」という声も少なからず挙がっている状況だ。過去を振り返れば、3Gでは世界初、(厳密には4Gではないが)LTEでも世界では先頭集団といえるタイミングで最新のモバイルネットワークを導入してきた日本が、5Gではなぜこれほどまでに遅れることとなったのだろうか。

標準化時点ではサービス開始を急いでいた日本

 その理由を一言で表すならば、冒頭にも触れた「東京五輪」ということになるだろう。

 2020年に東京五輪が開催されることが決定したのは2013年だが、実はその頃から5Gの研究や標準化に向けた作業は進められていた。そして日本はNTTドコモを筆頭に、3G、4Gでは技術開発や標準化でリーダーシップを取るなど通信技術に力を入れている国の1つでもあった。

 日本では東京五輪に合わせて5Gの商用サービスを提供したいと考え、2020年に5Gの商用サービスを提供できるよう標準化に向けた取り組みを急いでいた。だが当時、通信業界全体では5Gに対する関心が高いとはいえない状況だったというのが正直なところでもある。

 そもそも携帯電話の通信規格は10年おきくらいに新しい世代へとアップデートがなされているのだが、それは年々増大し続けるトラフィックでモバイルネットワークがパンクしないよう、より大容量の通信ができる規格に入れ替えることが主な目的だ。それゆえ、比較的早い段階でLTEのネットワークを整備した日本や韓国などは、それだけトラフィックも伸びていることから5Gの早期実現を要望していたのだが、LTEの導入が遅れていた欧州などではそこまで5Gの導入を急ぐ必要がないので、関心が高まらなかったわけだ。

 つまり5Gの標準化段階では、むしろ日本が商用化を急いでおり、他の国がそれに追い付いていないという状況だったのである。それが一転して日本が大きく遅れるに至ったのは、標準化が完了した2018年以降の動きが影響している。

5G 2015年にNTTドコモが実施した「5G Tokyo Bay Summit 2015」より。標準化時点では世界各国で5Gに対する関心が高まらなかったことから、NTTドコモなどはこうしたイベントを開いて5Gへの関心を高めようとしていたのだ
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年02月10日 更新
  1. 「iPhoneの調子が悪いです」の文言、なぜアイホンのFAQに? 実はAppleと深く関係 (2026年02月08日)
  2. 総務省有識者会議が「手のひら返し」な我が国への示唆――日本を国際標準から遅れさせたのは自らの愚策のせい (2026年02月08日)
  3. 「東京アプリ」で1.1万円分をゲット、お得な交換先はどこ? dポイント10%増量+楽天ペイ抽選が狙い目か (2026年02月05日)
  4. KDDI、楽天モバイルとの「ローミング重複エリア」を順次終了 松田社長が言及 (2026年02月06日)
  5. 楽天モバイル、1000万回線突破も残る「通信品質」の課題 5G SAの早期導入とKDDIローミング再延長が焦点に (2026年02月07日)
  6. 東京アプリ、PayPayがポイント交換先に追加される可能性は? 広報に確認した (2026年02月05日)
  7. Googleが台湾のPixel開発拠点を公開 「10 Pro Fold」ヒンジ開発の裏側、“7年サポート”を支える耐久テスト (2026年02月09日)
  8. 【ニトリ】1990円の「スマホに付けるカードケース」 マグネット対応でスタンドとしても使える (2026年02月07日)
  9. 「小型iPhone SEを復活させて」──手放せない理由SNSで話題 どこが“ちょうどいい”と評価されるのか (2025年11月29日)
  10. あらゆるアプリ操作を任せられる“真のAIスマホ”「M153」が中国で売れまくっている TikTok運営元ByteDanceのエージェントAI「Doubao」を搭載 (2026年02月08日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年