世界を変える5G

5Gの課題は「ビジネスモデル」と「端末価格」にあり 4キャリアがディスカッション5G国際シンポジウム2020(1/3 ページ)

» 2020年02月26日 11時24分 公開
[房野麻子ITmedia]

 2月19日〜20日に、5G総合実証実験の成果を発表し、5Gサービス展開について検討する「5G国際シンポジウム2020」が総務省の主催で開催された。

5G国際シンポジウム2020

 20日には「5Gサービスの実現」というテーマで、大手キャリア4社の担当者が登壇し、各社が見据える5Gサービスの展望についてプレゼンテーションを行った。また、5G事業展開の方向性、具体的なサービス内容、課題などに関するパネルディスカッションも実施。パネリストはNTTドコモ 執行役員の中村武宏氏、KDDI 技術統括本部 モバイル技術本部 副本部長の小西聡氏、ソフトバンク モバイルネットワーク本部長の野田真氏、楽天モバイル 執行役員の佐藤祐介氏。モデレータはMM総研 代表取締役所長の関口和一氏が務めた。

5Gローンチに向けた4社の取り組み

 まず4社の担当者が、間もなく始まる5Gのこれまでの取り組みについて改めて説明した。

5G国際シンポジウム2020 NTTドコモ 執行役員の中村武宏氏

 ドコモの中村氏は、2019年9月のラグビーワールドカップから始めたプレ5Gの取り組みを紹介。約5000台の5G端末を用意し、2023年までに1兆円投資して基地局を設置。日本各地でコンシューマー向け、B2BやB2B2Xに向けたサービスの開拓を進めていると語った。

 デバイスはスマートフォンだけでなく、XR系のデバイスが重要になると考え、マジックリープ社と提携。ゲームや産業での利用を検討している。また、クラウド基盤「ドコモイノベーションクラウド」を用意し、さまざまな企業のアセットも合わせて使えるようにしている。

 各パートナーと協創してビジネスを開発する「ドコモオープンパートナープログラム」に参加している企業、団体などは2019年末で3200を超え、260以上の実証実験事例を積み上げた。その一方で、ミリ波の導入の難しさ、上り通信の重要性が増してきていること、多種多様で特殊な要求がある産業界への対応などが課題と語った。また、既に5G以降、6Gに向けた取り組みも動き始めていることも紹介した。

5G国際シンポジウム2020 ドコモは既に第6世代移動通信システムに関するホワイトペーパーを公開した

 KDDIの小西氏は、3月末までに開始するKDDIの5Gサービスについて紹介した。KDDIは5Gを「通信が溶け込む時代」と表現。既に4Gの現在でも不具合のとき以外は通信を意識しない状態になっているが、5Gではそれがより加速するという。

5G国際シンポジウム2020 KDDI 技術統括本部 モバイル技術本部 副本部長の小西聡氏

 2020年3月時点はイニシャルスタートで、当面、5Gは既存の4Gエリアも用いたNSA(ノンスタンドアロン)で展開される。そこで5Gを生かすためには4Gが重要だと小西氏。「ピカピカの4Gを作った上でスペシャルな5Gを提供する」ことで体験価値が上がるという考えを示した。なお、5Gのみでネットワークを構成するスタンドアロン(SA)の5Gは「2022年あたりを目指している」という。

5G国際シンポジウム2020 当面は磨き上げられた4Gネットワークと5Gを組み合わせたハイブリッドネットワークで展開

 各パートナーと5Gを活用した新しいビジネスを開発する拠点として東京・虎ノ門、大阪、沖縄に「KDDI DIGITAL GATE」を設置。250人からなる開発体制を擁している。

 5Gは1つの技術であり、面白いサービスを提供することが重要との考えで、「AUGMENT(拡張)」をキーワードにさまざまな実証実験を行ってきたことを紹介。KDDIは既に使い放題の料金プランを提供しているが、「料金だけでなく体験価値も無制限でありたい」と小西氏は語った。

5G国際シンポジウム2020 AUGMENTをキーワードに5Gでスポーツやエンターテインメント、街などで新しい体験を提供する実証実験を行ってきた

 KDDIと同様、3月末までの5Gサービス開始を表明しているソフトバンク。野田氏はソフトバンクが5Gをどう捉えているかを説明した。

5G国際シンポジウム2020 ソフトバンク モバイルネットワーク本部長の野田真氏

 野田氏は、少子高齢化、労働力不足などの社会課題解決にはテクノロジーの解決が不可欠で、「5GやIoT、AIを組み合わせることで、10年に1度くらいの産業の大変革期を起こすきっかけになる」と語った。

 社会課題解決のキーワードの1つが「自動化」で、ソフトバンクはそれをテーマにした実証実験やプレサービスを行っている。

 1つが5Gを活用した隊列走行実験で、1人のドライバーで3台のトラックを走行させる。建設機械を5Gで遠隔操作し、最終的には自動でコントロールすることを目指す実験、ドローンによる鉄塔点検も行っており、労働時間の短縮や危険作業の削減を目指す。自動化にあたっては高性能な位置測位が不可欠とし、cm級測位サービスを開始。精密な位置測位によって、農業機械や自動運転バスの自動アシストや建設機械のドローンによる進捗(しんちょく)管理などの実験も行っている。

5G国際シンポジウム2020 法人向けでは自動化をキーワードにさまざまな実証実験を行った

 コンシューマー向けには「AR、MRやVRといった世界」がまず登場するとし、2020年からサービスとしてローンチし始める予定。他に音楽フェスをVRで遠隔地から楽しむ実証実験、野球のマルチアングルVR観戦、バスケットボールの自由視点観戦などを行っている。

 5Gの高度化サービスは2022年以降から提供する予定とした。

5G国際シンポジウム2020 コンシューマー向けにはARやVRを活用したサービスを音楽フェスやスポーツ観戦で提供

 楽天モバイルの佐藤氏は、4Gの本格サービスの展開や5Gについて説明。決算説明会で明らかにされたように、3月3日に料金プランや戦略を発表し、4月に4Gの本格サービスを開始。5Gについては6月から開始し、全国展開は2021年3月をめどにしていると説明した。

5G国際シンポジウム2020 楽天モバイル 執行役員の佐藤祐介氏
5G国際シンポジウム2020 楽天モバイルのサービスロードマップ

 楽天モバイルの強みは世界初の完全仮想化クラウドモバイルネットワーク。5Gを中心とした新技術の導入も低コストでスピーディーにできることがメリットだ。注目度が高く、世界のメディアに取り上げられたが、当初は「圧倒的に失敗するという意見が多かった」という。しかし、2019年末に海外の業界紙からタレック・アミンCTOが「most powerful person in wireless technology for 2019」に選ばれるなど、「反応がポジティブに変わってきたと感じる」という。

 5Gでは、汎用(はんよう)サーバの上にネットワークのアプリケーションを配置し、それをクラウドベースで簡単に管理できるようにする。「われわれとしては、その上にアプリケーション、サービスも乗せて、ワンパッケージとしてサービスとネットワークが融合するようなプラットフォームを作り上げたい。さらにネットワークとサービスをパッケージしたプラットフォームを海外のキャリアなどに外販したい」と期待を語った。

 サービスについても、5G×XR、5G×ドローン、5G×8Kといった実証実験を一部で行っており、今後拡大していきたいという。そのために、5Gラボの設置、パートナープログラムの開始、コンシューマー向けの5G体験スポットやプログラムを提供したいとした。

5G国際シンポジウム2020 5Gに向けて実証実験を拡大。そのために5Gラボやパートナープログラムなどを用意する。
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