世界を変える5G

5Gの課題は「ビジネスモデル」と「端末価格」にあり 4キャリアがディスカッション5G国際シンポジウム2020(2/3 ページ)

» 2020年02月26日 11時24分 公開
[房野麻子ITmedia]

5Gのマネタイズはどうする?

 各社のプレゼンテーション後は、5つのテーマについてディスカッションが行われた。

 5Gの最大のメリットについてパネリストは「高速大容量」と「低遅延」を挙げたが、みな当初はそれほどのスピードが出るわけではなく、低遅延もしばらくは実現できないという意見で一致した。

 ただ、「LTEより良いところは多々ある。4Gと5Gを両方使って、補完しながら、うまく使っていくことになる。アプリは5Gでより良く動くようになる」(ドコモ中村氏)

 「スループットが出るので、今まではHDの解像度しか得られなかったものが4K、8Kで得られる。そうすると、今までできなかったことができるようになる。単にきれいに見えるようになるだけでなく。応用範囲が広がる」(KDDI小西氏)

 「最初から突然、生活が変わるわけではないが、じわじわインフラが浸透することで、サービスやアプリケーションも浸透し、5年後に今を振り返ると、そういえば昔はこんなことはあり得なかったという感じになる。長い目で見てもらいたい」(ソフトバンク 野田氏)

 また、楽天モバイルの佐藤氏はネットワークをどういう風に使っていくか研究している最中だと前置きしながら、「クラウドベースなので低コストで、生産効率が高く、簡単に誰でも使えるような、さまざまな提供方法を準備したい。地方の中小企業や自治体にも5Gを使ってもらえる環境をクラウドベースで実現したい」と語った。

 日本は2020年3月から5Gの商用サービスを開始する。2019年に5Gサービスを始めた韓国、米国をはじめとする各国からの遅れを懸念する声もあるが、各氏とも、ネットワーク品質、サービスともキャッチアップできるとの考えだ。

 小西氏は「日本の強みは、4Gの充実したカバレッジ。ドコモ、ソフトバンクも磨きをかけていて、他国に比べて良いネットワークを持っている。4Gの良さを使って5Gを使えば、われわれはキャッチアップし、追い越せる」と自信を見せた。

 野田氏は、「今の5GはNSA。スマホで動画がサクサク見られるというのが中心。米国は事情が違って、ミリ波限定でエリアも限定的で、FWA(Fixed Wireless Access:固定無線アクセス)みたいなサービスが中心。進化の実感が小さい。日本のユーザーはサービスに対する要求レベルが非常に高い。要求に応える5Gネットワークを提供し、その品質によって実現するサービスとアプリが充実していくことで、日本らしさ、日本の競争力が出せればいい」と小西氏同様、すぐに挽回できるとの考え。

 佐藤氏も「遅れているとは思っていない。米国で5Gを体験したが、5Gがどこに吹いているか、探さないと分からない状況だった。韓国は国策で普及しているけれど、まだちょっと早いだけと思う」と見ている。

 中村氏は「タイミングは他国に遅れているけれど、かなりいろんな準備をしている」ので、他国にキャッチアップすることは確信しているようだった。しかし、問題は「どうビジネスモデルを作るか」だと指摘した。

 「パートナーと組むとしたら、いいレベニューシェアのやり方でWin-Winで回らないといけない。そういうビジネスモデルを作るのが、なかなか大変な面もあると思う。さまざまな事例を作って具体的なビジネスに向けた活動もしているが、ちゃんとしたビジネスモデルを作るのは1つのハードル。5Gでは社会課題解決、地方創生も期待されているが、そこでお金をどう回すかが難しい」(中村氏)

 ビジネスモデルの確立が難しいというのは、他キャリアの担当者も同意見だ。

 その上で小西氏は「現在のコネクションを広げていきたい。通信が溶け込むと、企業は顧客とつながる。KDDIでは『リカーリングモデル』と言っているが、ずっとつながることで定期的にお金をいただく形が増えていく」との考え。

 野田氏は「コンシューマー向けプランは4Gの進化型だが、回線利用料をもらうというのではなくて、パートナーとともに実現するサービスの対価、トータルサービスのうちの一部をいたたく形になっていくと思う」と述べた。

 「通信が溶け込むことで、『4社のシェアが何%』などは観測しにくくなる。あるサービス、それは非常にニッチな領域で一般には全くなじみがないものかもしれないけれど、実はその裏に溶けているのがソフトバンクの5Gだった、という感じの中で、サステナブルな料金をいただけるという感じ。それが多種多様なところに広がっている世界だと思う」(野田氏)

 楽天モバイルは、基本的にはeコマースや金融サービスが主体の企業だ。佐藤氏は「これまでの携帯電話キャリアとはアプローチが逆」と語り、「特に5Gになったら、各社とも大容量の方に行くと思うが、僕らもなるべくシンプルで分かりやすく安い値段で提供して、(通信は)ライフラインという世界になっていくと思う。楽天としては、そのネットワークに乗せるサービス、アプリケーションのプラットフォームでマネタイズができるようにビジネスモデルを検討する必要があると思っている」とし、通信で課金するのではなく、違うビジネスモデルを作る方向に業界が進むと予想した。

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