楽天グループの2022年12月期第2四半期決算において三木谷浩史会長兼社長は、楽天モバイルの「0円ユーザー」の解約が増加したものの有料ユーザーは純増しており、完全有料化となる11月以降は利益がさらに改善すると自信を見せた。「(完全有料化で)ある一定の離脱はあるかもしれないが、かなりいい収益改善が行われていく」(三木谷社長)
モバイルセグメントにおける売上収益は1649億8300万円で前年同期比53.8%増、セグメント損益は2593億2800万円の赤字で、同620億4600万円減と赤字幅は拡大。これは基地局建設などの先行投資における減価償却費など、ネットワーク関連費用が増加したため。
ただ、損益は前四半期が下限で、設備投資額が減少することなどで改善するとしており、実際に前四半期に比べて110億円改善したと三木谷社長。前期は設備投資額が3150億円で、これに使用権資産が1470億円、1.7GHz帯の5G特定基地局開設量の資産化が470億円あった。今期は設備投資3000億円を計画しており、来期はさらに減少する見込みで、これによって収益が改善する。
さらに、「ゼロから始めたネットワークなので、最初は大盤振る舞いした」(同)という1GB未満で0円のプランを廃止し、1GB未満で月額1078円(税込み、以下同)に変更したため、さらに収益が改善する見込みだ。10月末まではキャッシュバックやポイントバックによる返金があるが、11月には完全有料化になるため、以降はさらにコストが削減される。
0円プラン廃止発表後ユーザーの解約は増加。MNOユーザーは前四半期の491万から477万で14万の減少となった。解約ユーザーの8割が0円ユーザーだったとのことで、収益に与える影響は大きくないという認識。
11月の完全有料化後はさらに一定の離脱を想定するが、有料ユーザーに関しては「30%ぐらい伸びている」(同)との認識で、収益改善には有効な施策だったとする。これは、MNOユーザーが前年同期の366万から477万に増えて30.2%増となり、0円ユーザーの多くが離脱したという計算だろう。
課題は、自社ネットワークがまだ人口カバー率97%止まりで、KDDIから借り受けるローミングエリアのユーザーがいる点だ。このローミングエリアでは5GBまでは通常速度だが、それ以降は通信速度が1Mbpsに制限されるため、これを理由に解約したユーザーもいるという。
収益的にもローミング費用の支払いが圧迫しており、「データ使用量全体の6〜7%がローミング」(同)という状況を改善するために、早期にエリア構築を完了させる考え。
エリア拡大のため、6月時点で4万7556局だった4G基地局を、2023年中に6万局まで拡大。これによって人口カバー率99%を達成する。さらに9月には同社が出資するAST SpaceMobileが低軌道衛星を打ち上げ、日本全国をカバーする衛星基地局を稼働させる。これによって、山間部など人のいないエリアもカバーする「地理的に100%カバレッジ」(同)を実現する。
これが他社との大きな差別化要因になると見ており、「本当の勝負は、無制限で使えるモバイルネットワークはどこか、ということになる」と三木谷社長。どこでも無制限で、しかも月額3278円で使えるという点をアピールする。
既に人口カバー率が99%に達している東京23区では、楽天モバイルの申込率が9.4%になり、カバー率が下がるごとに申込率も減少していることから、全国で99%を達成すれば同等の申込率となり、結果として申込は1200万人に達するという試算を三木谷社長は示し、6万局を達成した時点で、申込ベースでは全国で10%以上を目指す考え。
三木谷社長は、「できるだけ早い段階で1200万、あるいは1500万は達成したい」との目標を掲げ、全国一律ではなく地域別のマーケティング戦略も駆使してユーザーの拡大を意気込む。
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