インタビュー
» 2007年03月30日 20時50分 UPDATE

5年後の秋葉原を歩く 第1回:アキバの未来は「新宿」「池袋」「アキバ」 (1/2)

アニメやフィギュアなどの“萌え産業”が台頭し、大きな変貌を遂げつつある現在のアキバ。目まぐるしく色を変えるこの街の未来には、3つの選択肢がありそうだ。

[古田雄介,ITmedia]

 最近の秋葉原はPCパーツショップの閉店が相次ぎ、DVDショップやアニメショップの台頭が著しい。行政が「世界のIT拠点」を目標に2008年までの駅前再開発を進めている中にあって、街の顔がPCからアニメやメイド喫茶といった新世代の産業へ移り変わろうとしている印象を受ける。その一方で、Windows Vista特需が発生するなど、自作PC市場は再び盛り上がりも見せている。

 複雑に変化するこの街は、今後どのような姿になっていくのだろうか。この連載では、研究者やメイドさん、ショップの経営者、街のご意見番など、さまざまな立場の識者に話を聞いて“アキバの明日”を探っていく。

 第1回は、事象の変化を複数の要因をもとに総合してシミュレーションしていく「社会シミュレーション」の研究者、東工大の小山友介助手に話を聞いた。小山氏自身、自作PCやアニメなどのサブカルチャーに通じており、秋葉原文化の特性を見抜いたうえで、今後の街の変化を予想してもらった。

メイド喫茶で「ここは風俗店じゃありません」――アキバが“新宿化”する可能性

 社会シミュレーションでは、自律した意志決定を行う「エージェント(プレイヤー)」と、その行動ルール、各プレイヤーが行動した結果生まれた秩序、各プレイヤーが得られる利得の4項目に注目してシミュレーションを行うという。では、いま秋葉原の街を動かしている“メインプレイヤー”は何者なのだろうか。

――最近の秋葉原は特に目まぐるしく変化していますが、その鍵となる主役のプレイヤーは誰、もしくは何でしょうか。

og_akibainterview_001.jpg 東京工業大学 総合理工学研究科 知能システム科学専攻助手 小山友介氏

小山 プレイヤーの一人である“行政”は、秋葉原を「ITの街」にしたいと考えているようですね。ただし、主導権を握っているプレイヤーは、やはりこの街に集まる消費者だと思います。

 現在のアキバにあるアニメやフィギュア、同人誌などのサブカルチャーは、もともとPCやゲームなどが目当てで街に来ていた消費者層がサブ的に持っていた趣味、それがPCの盛り上がりに乗じてアキバに浸透していった。この傾向は2002〜2003年頃に加速し、ほぼ同じ時期には、あまりにもひどかったアダルトゲームのポスターを警察が撤去させるという動きもあったくらいです。

 さらに電車男ブームつくばエクスプレスの開通ヨドバシアキバの開店などが続き、サブカルの街として一気にブレイクした感があります。

――行政の思惑とは別に、いろいろな要因が重なって、消費者がメインプレイヤーとして街の方向性を先導しているということですか。その点から見ると、秋葉原には今後どのような変化が起こりうるのでしょうか?

小山 まず1つの可能性が、新宿のような繁華街になっていくこと。いわゆるアキバブームによって、良くも悪くも客層が広がったため、メイド風俗のようなお店まで見られるようになった。女性が増えていることとやや矛盾しますが、新宿の歌舞伎町あたりから追い出されたアダルトビデオ系のお店もかなり増えています。飲食店が増えたという伏線も含めて、新宿そのものではないにしろ、サブカルと風俗を含めた雑多な街になると思います。

――渋谷や原宿にはなりえずに、新宿化すると考える理由は?

小山 ベースの客層が異なります。街そのものが持つサブカル性を強く残したまま、ファッションも含めた複合的な消費の街になる。そうすると、1番近いのは新宿というわけです。

――アニメに代表されるサブカルチャーの街では、池袋や中野ブロードウェイが思い浮かびます。こちらに近づく可能性は?

小山 可能性はあると思います。ただし、現在それぞれの街はアキバと差別化する流れにある。例えば池袋の“乙女ロード”(※注1)は、名前の通りすごく女性向け。中野ブロードウェイへは、アキバでもコアな層が逃げて行く動きがあるようです。アキバでは電車男ブームをきっかけに一般層が流入し、サブカル色を薄めざるを得ない雰囲気になりました。

(※注1:池袋にあるサンシャイン60の西側の通り。女性をターゲットにした成人向け同人誌や関連グッズを販売するショップが軒を連ねる。別名「腐女子ロード」)

 それを象徴する事例として、メイド喫茶に「ここは風俗店じゃありません。お触り厳禁」みたいな貼り紙が掲示されるようになったんです。本来は秋葉原に来そうもない層が訪れて、マナー違反の行動をとるようになる。空気を読めない人が増えると、どうしても街の色は薄まってしまう。

――そして従来のコアな層は中野に逃げていく、と。

小山 そうです。それに加えて、行政がプレイヤーとして参加している度合いも考えると、比較的自由な中野や池袋よりも、新宿に近いかたちで変化していく可能性のほうが高いでしょう。

og_akibainterview_002.jpgog_akibainterview_003.jpgog_akibainterview_004.jpg 新宿はヨドバシカメラなどの大型家電店と風俗店が混在する独特のカラーを持つ(写真=左)。池袋は駅前に電気店を含めた繁華街が広がり、やや外れに乙女ロードがある。女性向け同人誌の販売が盛んなのだ(写真=中央)。JR中野駅から中野サンモールを抜けると、中野ブロードウェイがある。同ビルに入ると急激にサブカル色が濃くなる。PCショップは少なめ(写真=右)
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