“クラウドプリンティング”がさらに進化――「HP ENVY110」など3機種を投入HP個人向けプリンタ発表会

» 2011年09月21日 22時28分 公開
[ITmedia]

“どこでも印刷”を強化――「HP ePrint Home&Biz」

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は9月21日、個人向けインクジェット複合機3機種を発表した。先日上海で行われたプレス向けイベント「INNOVATION for IMPACT」を受けたもので、同イベントで披露されたコンシューマー向け製品のうち、「HP ENVY110」「HP Photosmart 6510」「HP Photosmart 5510」が日本市場に投入される。

 2011年秋冬モデル共通の特徴は大きく分けて4つ。まず1つは、スマートフォン向け機能の拡充だ。HPは同一LAN内のモバイル端末からプリンタへ直接印刷する機能だけでなく、インターネット経由で(Eメールを使って)どこからでも印刷できる「HP ePrint」を提供しているが、新たにiOSとAndroid向けアプリとして「HP ePrint Home&Biz」を用意した(アプリはリリース済み)。

 これはiOS/Android端末から、より手軽にHP ePrint対応プリンタへファイルを転送するためのアプリで、端末に格納された写真のほか、PDFやExcelファイル、WebページなどをHPの専用サーバ(ePrintと同じインフラ)を経由してプリンタに出力する仕組み。インターネット経由で利用できることから、スマートフォンに送られてきた添付ファイルを会社のプリンタに転送し、プリントされた用紙を後で受け取る、といった用途が想定されている。また、これまでプリンタに割り当てられるEメールアドレスは固定で覚えにくいものだったが、HP ePrintCenterを介して任意のメールアドレスに変更できるようになった。

先日リリースされた「HP ePrint Home&Biz」(写真はiPad向け)。プレビューしながら端末内のさまざまなデータを印刷できる。インターネット経由で場所は選ばないのが特徴だ(写真=左)。こちらはiPhone向けの「HP ePrint Home&Biz」。UIがiPad向けとは異なる。なお、現時点でアプリはすべて英語版。日本語へのローカライズは今後になる(写真=中央)。PCを使わずにインターネット上のコンテンツを印刷できる「Print Apps」も引き続きパートナーを拡大する予定という。なお、新機能としてApps側の情報を定期的に自動印刷するスケジュール機能が追加されているものの、アプリ開発側の対応が必要なため、国内で利用できるパートナーはまだない(写真=右)

 2つ目は無線LANの標準搭載だ。今回投入される3機種とも無線LAN機能を内蔵し、付属のソフトウェア(CD-ROM)をPCにインストールするだけで自動的に無線LAN接続の設定をしてくれる「自動ワイヤレス接続」機能を備えた。

 3つ目はコンパクトなボディデザイン。電源を内蔵して省スペース性を確保するとともに、本体の高さはENVY110が102ミリ、Photosmart 6510が161ミリ、Photosmart 5510が146ミリに抑えられている。

 4つ目は省エネを意識した機能で、プリンタが使用されていない状態が2時間続くと自動的に電源がオフになるようになった。

リビングルームに似合うコンパクト&スタイリッシュなデザイン

HP ENVY110

 製品を個別に見ていこう。同社のプレミアムブランドである「ENVY」を冠したHP ENVY110は、HP ENVY100の後継機で、今回はリビングルームへの調和を考慮し、白色とオフホワイトのカラーリングを採用した。

 インクシステムは4色(K+C/M/Y一体型)、プリント解像度は最高4800×1200dpi。モノクロ7枚/分、カラー4.5枚/分の出力が行える。スキャン(1200×1200dpi)やコピー(モノクロ6枚/分、カラー4枚/分)機能を備え、自動両面印刷機能も内蔵する。電源のオン/オフと連動して、3.45型タッチ対応液晶を搭載した前面パネルが稼働するユニークなギミックも健在だ。本体サイズは、427(幅)×336(奥行き)×102(高さ)ミリ、重量は約7.25キロ。給紙トレイはA4用紙で80枚となっている。同社直販サイトのHP Directplus価格は2万9820円。

3.45型タッチパネルを搭載する(写真=左)。前面右側のMS/SD(SDHC)/MMC対応メディアスロットはダイレクトプリントに対応(写真=中央)。カートリッジはカラー(C/M/Y:染料系)一体型とブラック(顔料系)の2本(写真=右)

 一方、ミドルレンジモデルのHP Photosmart 6510は、4色独立インクシステム(C/M/Y/K)を採用し、プリント解像度は最高4800×1200dpi、印字速度はモノクロ11枚/分、カラー7.5枚/分となる。ENVY110と同様にスキャンやコピー機能(自動両面印刷対応)を搭載するほか、前面操作パネルとして3.45型のタッチ対応液晶を内蔵し、MS Duo/SD(SDHC)/MMC対応メディアスロットからのダイレクトプリント機能も備える。本体サイズは436(幅)×381(奥行き)×161(高さ)ミリ、重量は6.1キロ。HP Directplus価格は1万9950円だ。

 エントリーモデルのHP Photosmart 5510は、2.36型のタッチ対応液晶を内蔵したモデルで、インクシステムやプリントエンジンはHP Photosmart 6510とほぼ同等だが、自動両面印刷機能が省かれている。HP Directplus価格は1万2810円と、低価格ながら無線LAN機能を標準搭載しているのが特徴だ。

HP Photosmart 5510(写真=左)とHP Photosmart 6510(写真=中央)。ともに4色独立のインクシステムを採用する(写真=右)

モバイル端末からのプリントに注力

昨今のトレンドである“クラウドプリンティング”をはじめ、「イノベーションはいつもHPから始まっている」とアピールする、同社イメージング・プリンティング事業統括の挽野元氏

 以前からHPは、プリント機会の拡大を目指してモバイル端末に目を向け、Eメールを利用したHP ePrintなどのサービスを業界に先がけて提案してきた。すでにPC周辺機器としてのプリンタは成熟し、ほとんど成長が見込めなくなっている一方で、スマートフォンは2014年までに国内4000万台に迫るといわれており、この分野で利便性の高い印刷環境を用意することにより、PCを使わずに利用できるネット対応プリンタのメリットを訴求する構えだ。

 実際、ワールドワイドですでに1000万台のネット対応プリンタが出荷されているほか、日本市場においても2011年2月から7月までの6カ月間にHP ePrintで印刷されたページ数は約2.3倍に成長しており、この需要は今後も増加していくと同社は考えている。

IDC Japanによる国内のスマートフォン出荷台数予測(写真=左)。HP ePrintで印刷されたページ数も増加傾向にある(写真=中央)。HPが提供しているモバイル端末向けのプリント機能一覧(写真=右)。HP ePrint Home&Bizの印刷可能ファイル形式は、Webページ(iOS)、Eメール、Jpeg、Word、Excel、PowerPoint、PDF、テキストファイル

 また、他社もこのトレンドに追従しており、エプソンは「スマートフォンプリント」と「メールプリント」、キヤノンは「スマフォプリ」で同様の機能を提供するなど、いつでもどこでも印刷できる“クラウドプリンティング”は、2010年以降、キーワードの1つとなっている。この分野でリードする日本HPは、新規市場の開拓を進め、現在8%前後のシェアを今後3年間で15%まで押し上げたいとしている。

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