ポメラを使っていると「普段使い慣れているテキストエディタなら長文でも把握しやすいのに」と思うことがある。また、取材や記事執筆では「写真も確認できれば記事を組み立てやすいのに」「ネットワークにつながればそのままクラウドストレージに上げられるのに」と思いつつ、結局手書きのノートを見ながら自宅のデスクトップPCで執筆している。執筆活動はテキスト入力だけでは完結しない。
ほかにもポメラでGoogle日本語変換が使えればなあ、だとか、調べものができればなあ、だとか、あとちょっと、の部分を割り切られてしまった人にはポータブックで希望がかなえられるかもしれない。
また、あくまで筆者の個人的な感触だが、キーボードの打ちやすさはストレート型のポメラ DM100にやや劣るが、折り畳み型のポメラ DM25よりもずっと快適だ。
ポータブックは縦はDM100と同等サイズの6列キーボードだが、横幅は5ミリほど大きく、各キー・キーピッチも若干大きめ。しかし、Windowsキー、アプリケーションキー、F11、F12、プリントスクリーンなどWindows用のキーが増えているため、右側のキーが小さく作られている。「1」キーの左に隙間があるので、もう少し左に詰められるようにも思うが、そうしてしまうとタッチタイピングへの悪影響があるとのことだ。
DM100はキーボードが薄く、ストレート型のためたわみなどもなく打ちやすい。DM25はややたわむものの、実用上問題ないレベルだ。ポータブックはたわみもないし、DM100と同等のサイズを確保しているのだが、スライドアークキーボードの構造上、ノートPCの上にキーボードを置いたような配置になっている。その状態でタッチパッドのボタンのみ本体のものを使っているような感じだ。
そのため、自分にとっての最適なポジションを確立するまでは試行錯誤が必要かもしれない。デスクに置いた状態で使用するときは掌底部分をデスクに置き、「F」と「J」をホームポジションとして打つことが多いだろう。
その状態でスペースキーを親指で打つと、キーボードのアルミフレームが若干引っかかってしまう。キーボード自体がデスクから高い位置にある(最下列で19ミリ程度)こと、アルミフレームの縁がキートップよりもわずかに高いこと、手のつくり上、親指だけは他の指よりも低い位置から打つことになること、などがその理由だ。
もっとも、デスクで使用する場合はアームレストなどを使うことで手首の位置を調整できる。ただ、電車の中など机がない状態で、ヒザの上に置いて打つ場合だとホームポジションの中央からのズレが気になった。
もともとキーボードを打つ際のホームポジションは左にずれているものだが、ポータブックでは右手の掌底は本体部分がアームレスト代わりになるのに対し、左は若干はみ出してしまう。とはいえ、このあたりはフィーリングなので、購入前に量販店などで実際に触って確かめてほしい。
結論としてはポータブックはキングジムらしい、「なんでもはできないわよ、できることだけ」というノートPCだった。汎用的なノートPCなのに割り切った、いわば尖った製品に仕上がるのはさすがだ。スペック的にはSurface 3と競合しそうなのに、王道的なSurface 3に対して“キワモノ的”なポータブックと、ここまで両極に振れるのも面白い。
ノートPCや2in1デバイス、あるいはタブレットとキーボードの組み合わせなど、競合する選択肢が多くある中で、ポータブックは実売9万円前後となかなか挑戦的な価格設定ではあるが、ユニークなギミックによって実現したコンパクトなボディと打ちやすいキーボードは大きな魅力だ。ガジェット好きな人に勧めるまでもなく、物欲をかきたてられる逸品である。
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