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「VAIO Z」クラムシェルモデル徹底検証――Surface Book/Pro 4と比べた性能は?最上位モバイルPC対決(2/8 ページ)

» 2016年02月26日 06時00分 公開
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性能優先でTDP 28ワットの第6世代Coreを採用

 新しいVAIO Zは、基本スペックが大きく強化されている。CPUには開発コード名「Skylake」として知られる第6世代Coreプロセッサを採用した。第6世代CoreではCPUコアの内部構造を改良し、クロックあたりの性能と電力効率が向上したほか、内蔵GPUのパフォーマンスを高めている。

 第6世代Core搭載機というだけでは、特に珍しくもないが、VAIO Zが採用するCPUは一味違う。Intelは薄型ノートPC向けに、通常TDP(熱設計電力) 15ワットのCPUを提供しているが、VAIO Zはそれよりワンランク上となるTDP 28ワットのCPUを選んでいるのだ。このTDP 28ワットCPUは、先代モデルから受け継いだVAIO Zのアイデンティティーと言える。

 TDPとは放熱設計を行う際の目安となる指標で、この値が高いほど高い放熱能力が求められる。一般に半導体は高クロックで動作するほど発熱量も多く、TDPの値も必然的に高くなるため、性能とも密接な関係がある指標だ。つまり、内部構造やプロセス技術が同じ世代のCPUでは、TDPが高いほど高性能だが、高TDPのCPUを搭載して本来の性能を発揮させるためには、高い放熱能力が求められる。

 特に、VAIO Zのような薄型軽量モバイルノートPCにTDP 28ワットCPUを搭載するためには、特別な放熱設計が必要になるが、「高密度実装技術」と「放熱設計技術」を融合したVAIOの誇るコア技術「Z ENGINE」によって、それを実現しているのがポイントだ。

 新しいVAIO Zのクラムシェルモデルでは、標準仕様モデルにCore i5-6267U(2.9GHz/最大3.3GHz、3次キャッシュ4MB)を搭載しているが、VOMモデルではさらに高性能なCore i7-6567U(3.3GHz/最大3.6GHz、3次キャッシュ4MB)も選べる。いずれも2コア/4スレッド対応のCPUだ。具体的な仕様は下表にまとめた。

 ちなみに、表に併記したCore i7-6500Uは「VAIO S11」や「VAIO S13」、Core i7-6600Uは「Surface Book」、Core i7-6650Uは「Surface Pro 4」のそれぞれ最上位モデルが搭載するCPUだ。特にCore i7-6650UはTDP 15ワットとしては最高レベルの性能を持つが、TDP 28ワットのCore i7-6567Uはさらに上を行く。

VAIO Zなどの製品が採用する第6世代Core i5/i7比較
CPU Core i7-6567U Core i5-6267U Core i7-6650U Core i7-6600U Core i7-6500U
CPUコア/同時処理スレッド 2コア/4スレッド 2コア/4スレッド 2コア/4スレッド 2コア/4スレッド 2コア/4スレッド
標準クロック 3.3GHz 2.9GHz 2.2GHz 2.6GHz 2.5GHz
最大クロック 3.6GHz 3.3GHz 3.4GHz 3.4GHz 3.1GHz
内蔵GPUコア Intel Iris Graphics 550 Intel Iris Graphics 550 Intel Iris Graphics 540 Intel HD Graphics 520 Intel HD Graphics 520
GPUコア実行エンジン 48基 48基 48基 24基 24基
GPUクロック 300〜1100MHz 300〜1050MHz 300〜1050MHz 300〜1050MHz 300〜1050MHz
3次キャッシュ 4MB 4MB 4MB 4MB 4MB
eDRAM 64MB 64MB 64MB
プロセスルール 14ナノメートル 14ナノメートル 14ナノメートル 14ナノメートル 14ナノメートル
TDP 28ワット 28ワット 15ワット 15ワット 15ワット
採用例 VAIO Z(2016) VAIO Z(2016) Surface Pro 4など Surface Bookなど VAIO S11/S13、XPS 13など

 ここで、VAIO Zの採用するTDP 28ワットCPUが標準クロック、最大クロックとも高い点に注目したい。これは何を示しているかと言うと、IntelのCPUは、Turbo Boost機能により動作クロックを負荷や発熱などに応じて調整するわけだが、この変動幅が小さいということだ。

 変動幅が大きいCore i7-6650Uなどでは、内蔵GPUが高負荷な場合はCPUのクロックが低めになると思われるが、Core i7-6567Uでは内蔵GPUが高負荷でもCPUクロックも(負荷がある限りは)比較的高クロックに保たれ、CPUとGPUに負荷が同時にかかるような処理に強いと考えられる。GPGPU処理、例えば3DMark Fire Strike/Sky DiverのCombinedスコア、PCMark 8のビデオチャットエンコードなどの項目で、効果が確認できると思われる。

 なお、メモリはLPDDR3-1866 SDRAMのオンボード実装(デュアルチャンネル転送対応)だ。標準仕様モデルは4GB固定だが、VOMモデルは4GB、8GB、16GBから選択できる。

CPU-Z(CPU)CPU-Z(メモリ) CPU-ZのCPU情報(画像=左)とメモリ情報(画像=右)。VAIO Zは、一般的なモバイルPCが搭載するTDP 15ワットのCPUより性能的に格上となるTDP 28ワットのCPUを採用する。ハイスペック構成の評価機は、Core i7-6567Uを搭載していた。CPUクロックは標準3.3GHz、最大3.6GHzと、モバイルPC向けとしては非常に高い。特に標準クロックの高さは、高負荷な処理で効いてくると思われる。メモリはLPDDR3-1866 SDRAMをオンボードで実装し、デュアルチャンネル転送に対応。評価機は16GBの最上位スペックだった

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GPUコア「Intel Iris Graphics 550」の性能にも注目

 VAIO Zが搭載するCore i5-6267U/i7-6567Uは、プロセッサにGPUコアのIntel Iris Graphics 550を統合している点も注目だ。

 同世代の一般的なモデルが搭載するIntel HD Graphics 520に比べて、描画データの演算を行うEU(Execution Unit)を2倍の48基に増やしてGPUの演算能力を高めるとともに、「eDRAM」と呼ばれる高速キャッシュメモリ(64MB)を備えている点が特徴だ。EUの増加によりGPUの演算能力を高めるとともに、eDRAMを搭載することでメモリ性能がその足を引っ張らないようにしている。

 この点はSurface Pro 4が搭載するCore i7-6650Uと同等だが、VAIO Zが搭載するCore i7-6567UではGPUの最大クロックが少し高く、TDPも高い。(ボディーの放熱さえ十分であれば)最大クロックで動作できる時間は長いと考えられ、実際にどのくらい3D描画性能が違うのかが注目される。

GPU-ZCPU-Z(キャッシュ) GPU-Zの情報(画像=左)。Core i7-6567Uは、GPUコアとして「Intel Iris Graphics 550」を搭載しているのも特徴だ。同世代の一般的なCore i5/i7が搭載するIntel HD Graphics 520に比べて、描画データの演算を行うEU(Execution Unit)が2倍の48基に増えており、「eDRAM」と呼ばれる高速キャッシュメモリ(64MB)も装備している。CPU-Zのキャッシュ情報(画像=右)。eDRAMは、CPUコアから見れば4次キャッシュ(L4キャッシュ)に相当する。CPU-Zのキャッシュ情報でも、64MBの4次キャッシュとして認識されている
HWInfo64(eDRAM) eDRAMの存在は、HWInfo64の情報でも確認できる

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