新しいVAIO Zは、基本スペックが大きく強化されている。CPUには開発コード名「Skylake」として知られる第6世代Coreプロセッサを採用した。第6世代CoreではCPUコアの内部構造を改良し、クロックあたりの性能と電力効率が向上したほか、内蔵GPUのパフォーマンスを高めている。
第6世代Core搭載機というだけでは、特に珍しくもないが、VAIO Zが採用するCPUは一味違う。Intelは薄型ノートPC向けに、通常TDP(熱設計電力) 15ワットのCPUを提供しているが、VAIO Zはそれよりワンランク上となるTDP 28ワットのCPUを選んでいるのだ。このTDP 28ワットCPUは、先代モデルから受け継いだVAIO Zのアイデンティティーと言える。
TDPとは放熱設計を行う際の目安となる指標で、この値が高いほど高い放熱能力が求められる。一般に半導体は高クロックで動作するほど発熱量も多く、TDPの値も必然的に高くなるため、性能とも密接な関係がある指標だ。つまり、内部構造やプロセス技術が同じ世代のCPUでは、TDPが高いほど高性能だが、高TDPのCPUを搭載して本来の性能を発揮させるためには、高い放熱能力が求められる。
特に、VAIO Zのような薄型軽量モバイルノートPCにTDP 28ワットCPUを搭載するためには、特別な放熱設計が必要になるが、「高密度実装技術」と「放熱設計技術」を融合したVAIOの誇るコア技術「Z ENGINE」によって、それを実現しているのがポイントだ。
新しいVAIO Zのクラムシェルモデルでは、標準仕様モデルにCore i5-6267U(2.9GHz/最大3.3GHz、3次キャッシュ4MB)を搭載しているが、VOMモデルではさらに高性能なCore i7-6567U(3.3GHz/最大3.6GHz、3次キャッシュ4MB)も選べる。いずれも2コア/4スレッド対応のCPUだ。具体的な仕様は下表にまとめた。
ちなみに、表に併記したCore i7-6500Uは「VAIO S11」や「VAIO S13」、Core i7-6600Uは「Surface Book」、Core i7-6650Uは「Surface Pro 4」のそれぞれ最上位モデルが搭載するCPUだ。特にCore i7-6650UはTDP 15ワットとしては最高レベルの性能を持つが、TDP 28ワットのCore i7-6567Uはさらに上を行く。
VAIO Zなどの製品が採用する第6世代Core i5/i7比較 | |||||
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CPU | Core i7-6567U | Core i5-6267U | Core i7-6650U | Core i7-6600U | Core i7-6500U |
CPUコア/同時処理スレッド | 2コア/4スレッド | 2コア/4スレッド | 2コア/4スレッド | 2コア/4スレッド | 2コア/4スレッド |
標準クロック | 3.3GHz | 2.9GHz | 2.2GHz | 2.6GHz | 2.5GHz |
最大クロック | 3.6GHz | 3.3GHz | 3.4GHz | 3.4GHz | 3.1GHz |
内蔵GPUコア | Intel Iris Graphics 550 | Intel Iris Graphics 550 | Intel Iris Graphics 540 | Intel HD Graphics 520 | Intel HD Graphics 520 |
GPUコア実行エンジン | 48基 | 48基 | 48基 | 24基 | 24基 |
GPUクロック | 300〜1100MHz | 300〜1050MHz | 300〜1050MHz | 300〜1050MHz | 300〜1050MHz |
3次キャッシュ | 4MB | 4MB | 4MB | 4MB | 4MB |
eDRAM | 64MB | 64MB | 64MB | − | − |
プロセスルール | 14ナノメートル | 14ナノメートル | 14ナノメートル | 14ナノメートル | 14ナノメートル |
TDP | 28ワット | 28ワット | 15ワット | 15ワット | 15ワット |
採用例 | VAIO Z(2016) | VAIO Z(2016) | Surface Pro 4など | Surface Bookなど | VAIO S11/S13、XPS 13など |
ここで、VAIO Zの採用するTDP 28ワットCPUが標準クロック、最大クロックとも高い点に注目したい。これは何を示しているかと言うと、IntelのCPUは、Turbo Boost機能により動作クロックを負荷や発熱などに応じて調整するわけだが、この変動幅が小さいということだ。
変動幅が大きいCore i7-6650Uなどでは、内蔵GPUが高負荷な場合はCPUのクロックが低めになると思われるが、Core i7-6567Uでは内蔵GPUが高負荷でもCPUクロックも(負荷がある限りは)比較的高クロックに保たれ、CPUとGPUに負荷が同時にかかるような処理に強いと考えられる。GPGPU処理、例えば3DMark Fire Strike/Sky DiverのCombinedスコア、PCMark 8のビデオチャットエンコードなどの項目で、効果が確認できると思われる。
なお、メモリはLPDDR3-1866 SDRAMのオンボード実装(デュアルチャンネル転送対応)だ。標準仕様モデルは4GB固定だが、VOMモデルは4GB、8GB、16GBから選択できる。
VAIO Zが搭載するCore i5-6267U/i7-6567Uは、プロセッサにGPUコアのIntel Iris Graphics 550を統合している点も注目だ。
同世代の一般的なモデルが搭載するIntel HD Graphics 520に比べて、描画データの演算を行うEU(Execution Unit)を2倍の48基に増やしてGPUの演算能力を高めるとともに、「eDRAM」と呼ばれる高速キャッシュメモリ(64MB)を備えている点が特徴だ。EUの増加によりGPUの演算能力を高めるとともに、eDRAMを搭載することでメモリ性能がその足を引っ張らないようにしている。
この点はSurface Pro 4が搭載するCore i7-6650Uと同等だが、VAIO Zが搭載するCore i7-6567UではGPUの最大クロックが少し高く、TDPも高い。(ボディーの放熱さえ十分であれば)最大クロックで動作できる時間は長いと考えられ、実際にどのくらい3D描画性能が違うのかが注目される。
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