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» 2016年03月10日 06時00分 UPDATE

鈴木淳也の「Windowsフロントライン」:「第3のモバイルOS」戦争終結 Windows 10 Mobileはどこを目指すのか (1/2)

日本を含む一部地域では各社のWindows 10 Mobile搭載機が出そろい、Windowsスマートフォンがちょっとした盛り上がりを見せている。このブームは長く続かないことも予想されるが、今後Windows 10 Mobileはどこを目指していくのだろうか。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

モバイル業界におけるWindowsとMicrosoftの2大トレンド

 2016年2月22日〜25日の4日間にわたって、モバイルと無線通信技術の展示会「Mobile World Congress(MWC 2016)」がスペイン・バルセロナで開催された。ただ、例年と比べて明確なテーマが少なく、特に「最新スマートフォン」などモバイル端末偏重だった雰囲気は薄れ、より技術やサービスに特化した展示が増えており、「業界関係者向けの商談と情報交換の場」としての側面が強くなった印象だ。

 これは次世代の通信基盤である「5G」をにらんだ動きと連動しており、2020年以降の来たるべきタイミングに向けた新技術やプラットフォーム整備の進展など、数年先に大きな話題となりそうな技術展示が多く見られたことに起因する。

 一方で、このMWC 2016を「WindowsとMicrosoftの視点」で振り返った場合、2つの大きなトレンドを感じることができた。

 1つはiOSとAndroidに続く「第3のモバイルOS」を巡る戦争が既に終了し、もはや会場に争いの跡すら見られない状態だったことだ。もっとも、これはWindows 10 Mobileが勝利したという話ではない。もはやOS自体は重要なテーマではなくなり、次の別のトレンドを模索し始めている段階にあると考えている。

 もう1つは「OEMの台頭とビジネス市場の勃興」だ。Microsoft自身はデバイス事業のメインから一歩引き、主役がOEMへとシフトしている様子が同社ブースの展示からうかがえた。また大手OEM各社は、Windows 10 Mobileにおけるターゲットをビジネス市場に定めてきている。

Windows 10 Mobileの展示コーナー MWC 2016のMicrosoftブースにおけるWindows 10 Mobileの端末展示コーナー。展示製品の半数は日本市場向けのものだった

Lumia/Nokiaのカラーがほぼ消えたMicrosoft

 筆者がMWCを取材するのは2011年から数えて6回目だが、当時のMWCにおける主役はデバイス中心のNokiaならびに、ネットワーク機器メーカーのNokia Siemens Networksの2社だった。

 Microsoftはどちらかと言えば脇役的な存在であり、MWCを目当てに集まった報道陣を目当てに新製品説明会を別会場で行うなど、2013年9月にNokiaの携帯端末事業買収を表明するまでは、メイン会場での露出はほぼ見られなかった。

 その後、買収の完了した2015年のMWCにおいても、Nokia改めMicrosoftブースの主役は「Windows Phone」のLumiaであり、実際にMicrosoftブランドで「Lumia 640」が発表されている。展示ブースも以前までのNokia色を色濃く反映しており、Microsoft製デバイスが展示の中心だった。

 しかし2016年になり、展示内容は大きく変化した。まずWindows 10 Mobileの提供が開始され、Windows Phone 8.1の時代にはほとんどなりを潜めていたOEMメーカー各社の活動が活発化し、新製品が続々と登場してきている。

 MicrosoftブースにはWindows 10 Mobileを搭載したOEMデバイスの紹介コーナーが設けられ、ここで展示されていた端末の半数が「KATANA」「NuAns NEO」「MADOSMA」といった日本国内市場向けのものだった。海外の来訪者にとっては初めて触る端末群であり、興味を持っていろいろ見て回っていたのが印象に残っている。

 世界を見ても日本だけOEMメーカーが極端に多いという現状ではあるが、逆にLumiaの紹介コーナーは非常に小ぢんまりしたものだった。全体にOEMメーカーの製品が目立つような展示になっていたのが、2016年におけるMicrosoftブースの特徴だ。

MWC 2016のMicrosoftブース MWC 2016のMicrosoftブース。OEM各社の展示コーナーが一気に拡大した

 この特徴は、PCやタブレット製品についても同様だ。「Surface」や「Surface Book」の展示こそあったものの、スペース的にはOEM各社の2in1タブレットや、パナソニックの「タフブック」「タフパッド」のような業界向けソリューション製品がその多くを占めており、Microsoftのブースというよりは「Windows OSを採用した各社製品のソリューション紹介」が目立った。

業界向けソリューション展示 業界向けソリューションの展示コーナーでは、パナソニックのタフブックなどを紹介

 他の展示会と比較しても、このスタイルのほうが従来の「Microsoftらしい展示」であり、同時に「ようやくOEMが出そろって自社以外の製品の展示が可能になった」ことを示しているとも言える。

 とはいえ、Windows 10 Mobileに関しては喜ばしい話題ばかりではない。Gartnerの調査報告によれば、2015年第4四半期における世界のスマートフォン出荷台数は前年同期比で9.7%の成長となったが、これを主にリードしているのはAndroidをベースとした端末だ。

 モバイルOS全体に占めるAndroidのシェアは76%から80.7%へ拡大しているにもかかわらず、他のOSはシェアが漸減している。Windows系OSに至っては2.8%から1.1%へと激減しており、非常に厳しい状況であることは間違いない。

 2016年1月には「Windows Phone is dead」という記事を掲載した海外メディアもあったが、これまでWindows Phone(Windows Mobile)の市場を支えてきたLumiaはその役割を終えつつある。位置付けとしてはGoogleの「Nexus」シリーズのような製品へとシフトし、この空いた部分をOEM各社の製品が埋めてきた、というのが展示会の雰囲気だ。

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