“DFS”を活用して5GHz帯の混雑を解消する無線LANルーター「Portal」

» 2016年07月01日 13時00分 公開
[井上輝一ITmedia]

 イグニッションデザインラボは6月30日、クラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」で、回線の混雑を回避できる無線LANルーター「Portal」の予約を開始した。価格は先着100台まで1万3800円(既に完売)、その後は先着400台が1万4800円、通常価格は1万5800円となる。発送は11月頃を予定している。

“DFS”を活用して5GHz帯の混雑を解消するWi-Fiルーター「Portal」 “DFS”を活用して5GHz帯の混雑を解消するWi-Fiルーター「Portal」

 Portalは、他社のハイエンド製品と同等のスペックを持っているが、注目すべきは「DFS帯を活用して回線の混雑を解消する」という機能だ。

 DFS(Dynamic Frequency Selection)とは、5GHz帯のうち気象観測レーダーなどに優先的に割り当てられる周波数領域で、使用するには法的義務がある。具体的には、通信する1分前からレーダーがいないか確認してから通信を開始し、通信中にレーダーが到来した場合直ちにそのチャネルの使用を中止し、別のチャネルに移動する必要がある。移動先のチャネルもDFS帯の場合、また1分間レーダーを確認しなければならないので1分間の通信停止時間が発生してしまう。このような制限があるため、これまでの市販されている無線LANルーターはDFS帯での通信はできても、出荷時に機能をオフにされている場合が多い。

DFS帯の使用制限 DFS帯の使用制限

 だが、非DFS帯の5GHzが1レーンであるのに比べて、使用可能なDFS帯は4レーンあるため、DFS帯を活用できれば5GHzの混雑を解消できるというわけだ。そこで、イグニッションデザインラボは無線の送受信に使うチップとは別に、5GHzの全チャネルをモニターする受信専用のチップをPortalに搭載することでこの問題を解決した。つまり、使用中のDFSチャネルにレーダーが到来しても他のDFSチャネルも常時監視しているため、1分間の通信停止をせずに即座(約400ms)に空いているDFSチャネルに移動できる。

DFS帯は普段ほぼ使用されていない DFS帯は普段ほぼ使用されていない

 では、なぜ他社ではこのアプローチができなかったのだろうか。イグニッションデザインラボの代表、高木映児氏に聞いたところ、「弊社にはQualcommやBroadcomなどの主要チップベンダー出身の技術者が30人ほどいます。そのため、チップから設計できるので今回の受信専用チップも作ることができました。一方、他社は多くの場合チップはチップベンダーが作るものに依存してしまうため、少なくともチップレベルでのこのような機能の実装は難しいのではないでしょうか」と自社の強みを語った。

 「この受信専用チップに関しては、弊社でこれから独占して使っていこうというものではありません。むしろ、無線LANルーターの大手企業に買っていただいて機能を搭載していただきたいと思っています。そのために、まずはコンシューマー向けに『DFS帯って何?』という認知度を上げるためにPortalという製品を発表させていただいたというわけです」(高木氏)

 Portalの実機が動作しているところでAndroidの「Wi-Fi Analyzer」を立ち上げてみたところ、確かに誰も使用していないDFS帯でPortalが動作していることが確認できた。

スクリーンショットスクリーンショット DFS帯でPortalのアンテナが立っていることが分かる。レーダーの到来を仮想的に行うとすぐにチャネルを移動した。

 その他のスペックは、IEEE802.11ac Wave2のほか11a/b/g/n接続に対応、5GHz帯では4本のアンテナを用いた4ストリーム通信により規格値は最大1733Mbpsとなる。2.4GHz帯では3本のアンテナを用いた3ストリーム通信で最大600Mbpsだ。本体サイズは約240(幅)×180(奥行き)×43(高さ)ミリ、重量は約540g。

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