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» 2009年04月08日 21時03分 UPDATE

神尾寿のMobile+Views:「iida」が秘める可能性と、目前の課題 (1/2)

KDDIが“auらしさを取り戻す”ための取り組みとして展開するのが、新ブランドの「iida」。“デザインのエコシステム構築”を目指すという視点は注目すべきものだが、そこにはいくつかの課題もありそうだ。

[神尾寿,ITmedia]
Photo ケータイを通じて“暮らし”までをデザインする新ブランド「iida」

 4月7日、KDDIが新ブランド「iida」(イーダ)を発表した。詳しくはニュース記事に譲るが、これはau design projectの発展系となるブランドで、「auらしさを取りもどす活動の中でも、主要な柱の1つ」(KDDI取締役執行役員常務 コンシューマ商品統括本部長の高橋誠氏)という重要な役割を担う。

 かつてauの独壇場だった“革新的なデザインへの取り組み”と、それによる“ライフスタイルと文化の創造”を、2009年の今に向けて再定義したのがiidaの基本コンセプトといえる。

 今回のMobile+Viewsでは、KDDIの新ブランドiidaの可能性と課題について考えてみたい。

「広がり感」がiidaのポテンシャル

 誤解を恐れずにいえば、iidaは不定形で分かりにくいブランドだ。

 iidaが目指すのは、コミュニケーションを軸にした上質で新しいライフスタイルの創造であり、その対象はケータイのみにとどまらない。そこが“ケータイの”デザインと質感で革新を起こしたau design projectと大きく違う。auとゆるやかに連携しながらも、KDDIはiidaの可能性にできるだけ足かせをはめない姿勢を取っている。

 「(iidaは)KDDIのブランドなので、ケータイからあまりかけ離れたものはやりにくい。しかし、iidaの可能性を縛るようなことはしない」(高橋氏)

sa_iida-002.jpgPhoto iidaのコンセプトとプロダクト作り

 今回、iida初の製品として、主力モデルとなる「G9」と「misora」のほか、Art Editionsモデルが3機種、さらに周辺機器として「Mobile pico projector」や、自然色をテーマにしたACアダプタなどが用意されたのも、まさに“可能性を縛らない”ためだ。

Photo 端末内のデータを大画面に投写できる小型のプロジェクター「Mobile pico projector」
Photo カラフルなACアダプタもiidaブランドの製品として提供する

 「(KDDIとしては)さまざまなデザイナーの才能を尊重し、コラボレートしたい。そのプラットフォームがiidaだと考えています。だから、端末や周辺機器の範囲をあえて定義しない。Bluetoothの周辺機器や、au BOXのようなSTB、スマートフォンなど、さまざまな分野にiidaが広がっていければと考えています」(高橋氏)

 これまでキャリアは、どうしても「携帯電話(ハンドセット)」を中心にプロダクトやユーザーエクスペリエンスを考えがちだった。しかしiidaは、デザインとそこで展開する世界観をあるていど自由に発想できる柔軟性を持っている。こういった取り組みの端緒は「another work*s」で行っていたが、その方針をiidaとして定義したのは注目に値する。

 今後のケータイは単体のプロダクトとして進化・発展するのではなく、さまざまな周辺機器やサービスと連動しながら、もっとも身近でパーソナルなコンピューターとしてハブ端末化していく。その点からも、iidaが周辺機器も含めたユーザーを取りまく“サービスや利用環境すべて”をデザインの対象としたことは高く評価できる。

普遍性のmisoraと、つきぬけるためのArt Editions

 iidaの第1弾となるラインアップも見てみよう。

sa_g9-07.jpgPhoto G9(左)とmisora(右)

 前出のとおり、iidaブランドで投入される端末は5機種。この中でフラッグシップとなるのは岩崎一郎氏のG9であるが、筆者がむしろ注目したのは迎義孝氏がデザインしたmisoraの方だ。

 misoraのコンセプトは日常性の中にある“何げなさ”。行きかう雲、空を染める日の名残り、かすかな月明かり漂う夜の海、といったやんわりと心に残る風景を切り出したかのようなデザインになっている。そして、このmisoraの魅力は見たときよりも、触れたときの方が大きい。すっと手になじむ感触、適度な大きさに、見ため以上の心地よさを感じるのだ。

 「(携帯電話の)デザインというと、どうしても目からの印象に頼りがちなところがあった。misoraは“目から”の印象だけでなく、それ以上に触れたときや持ったときの心地よさまでデザインしています」(Kom&co.代表の小牟田啓博氏)

 今回の発表会では実際の操作感まで試せなかったが、UIなどにもこだわりぬいており、「普遍的で、スタンダードといえるもの」(小牟田氏)に仕上げるという。misoraはiidaの裾野を広げる上でも、最重要のモデルと言えるだろう。

sa_dots01.jpgsa_rin02.jpgPhoto 左からドッツ・オブセッション、水玉で幸福いっぱい、私の犬のリンリン、宇宙へ行くときのハンドバッグ

 一方、iidaの中で、その個性の発露でつきぬけた存在なのが、Art Editionsモデルの「ドッツ・オブセッション、水玉で幸福いっぱい」「私の犬のリンリン」「宇宙へ行くときのハンドバッグ」である。正直、筆者にはまったく理解できないほど前衛的な作品群であるが、“iidaではここまで許される”という意味で、misoraとは対極の重要性を担っている。限定生産品ということで「1台3ケタ万円に達するモデルになるかもしれない」(高橋氏)とのことだが、その文化的な価値は、高級さで話題をさらったソフトバンクモバイルの「ティファニー携帯」や「Vertu」よりも上だろう。

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