最高価格600万円――究極のゴージャス携帯「VERTU」を触った(1/3 ページ)

» 2009年03月13日 23時58分 公開
[田中聡,ITmedia]
photo 「シグネチャー」を手にしたところ、見た目以上にずっしりとした重量感があった。一方、幅は42ミリで、50ミリ前後が多い一般的な携帯と比べてかなり細く、持ちやすい

 「重い」――。VERTU端末を初めて触ったときの感想は、この一言に尽きる。例えばVERTUモデルの1つ「シグネチャー」のサイズは42(幅)×130(高さ)×13(厚さ)ミリと、数字だけを見ると、一般的なストレート端末と大差ない(幅が細いので、体積はむしろ小さい方だろう)。だが重さは166〜238グラムと、100〜140グラム程度が主流の一般的な携帯よりもはるかに重く、手に“ずっしり”とくる。プラスチック素材が大半を占める携帯電話において、VERTUは明らかに特別な存在だ。

 Vertu(ヴァーチュ)はNokia傘下の高級携帯電話ブランド(以下、ブランド名は「Vertu」、サービスや端末は「VERTU」と表記する)。1998年に設立され、2002年に第1号を発表した。現在は「シグネチャー」「アセント」「コンステレーション」という3つのシリーズを展開しており、世界50カ国、600店舗以上の高級時計店や宝飾店、百貨店、VERTUブティックで販売している。

 そしてVertuは日本への参入を決定。2009年2月19日に「Vertu銀座フラッグシップストア」をオープンし、VERTU端末の販売を開始した。5月には日本限定のメンバーシップサービス「VERTU Club」を開始する予定で、ユーザーはコンシェルジュをはじめとするサービスを利用できる。

 日本で発売されるモデルは「シグネチャー(Signature)」「アセント・ティー・アイ(Ascent Ti)」「アセント・ティー・アイ・フェラーリ(Ascent Ti Ferrari)」の3種類。価格はシグネチャーが121万円〜600万円、アセント・ティー・アイが67万円〜80万円、アセント・ティー・アイ・フェラーリが94万円〜110万円となる。

photophoto 「シグネチャー」の価格は、ステンレススチールが121万円、イエローゴールドが335万円、ホワイトゴールドが370万円。現在英国で製造中だというプラチナの価格は、日本向けモデルでは最も高価な600万円となる。写真はイエローゴールドとホワイトゴールド
photophoto 「アセント・ティー・アイ」の価格は、レッド、ブラック、ブラウン、ブルー、ホワイト、ピンクが67万円、メタリックグレー、パープルが80万円。写真はレッドとブラック(写真=左)。「アセント・ティー・アイ・フェラーリ」の価格は、ネロが110万円、ロッソとジャッロが94万円(写真=右)

 こうして価格だけを見ると、VERTU端末は「携帯電話」というよりは「高級アクセサリー」と呼ぶ方がふさわしいように思える。一般の携帯電話と比べて、文字どおり桁違いの価格たる理由はどこにあるのか。そして携帯電話としてはどの程度作り込まれているのか。Vertu銀座フラッグシップストアを取材する機会を得たので、普段はなかなかお目にかかることの少ないVERTU端末の詳細をリポートしよう。

1人の職人が全工程を手作り――「シグネチャー」

 VERTUモデルの中でも“顔”といわれるシグネチャーは、Vertuが10年かけて製品化を実現したという大作だ。特筆すべきは、シグネチャーは「マスタークラフツマン」という1人の専属職人が全工程を手作りで製造していること。さらに、使用するパーツは一般的な携帯電話よりも6〜7倍多い263個にも上る。この専属職人は世界で6人しかおらず、バッテリーカバーの内部には製作者のサインが刻まれている。

 ちなみに、アセント・ティー・アイも手作りだが、シグネチャーのように1人の職人が全工程を担当するわけではない。大量生産が主流の携帯電話とは異なるアプローチを採るVERTU端末の中でも、シグネチャーは“究極のハンドメイド端末”といえるだろう。

photophoto 左からホワイトゴールド、イエローゴールド、ステンレススチール
photophoto 左側面(写真=左)と右側面(写真=右)。右側面には、コンシェルジュサービスにアクセスできる専用キーを装備
photophoto バッテリーカバーの内部には、製造者のサインが記されている(写真=左)。バッテリーカバーの裏面にも金属素材が使われており、普段は目に触れる機会が少ない部分にもこだわった(写真=右)
photophoto 右側面に、専用のコンシェルジュキーを用意。ここを押すとコンシェルジュへの連絡画面に切り替わる(写真=左)。裏面下部の左右にステレオスピーカーを装備する(写真=右)
photo Vertu日本事業プレジデントの伴陽一郎氏

 Vertu日本事業プレジデントの伴陽一郎氏は、「シグネチャーは、Vertuの目指す『究極の製品を作ろう』という考え方から生まれた製品で、海外では『成功した人の携帯』『CEOのための携帯』と言われています」とコンセプトを説明する。

 “シグネチャー(Signature)”は日本語でサインを意味するが、それに関連して「大切なもの」という意味も込められているという。携帯電話は所有者の“分身”といえるほど日常生活に密着している。そこで、「シグネチャーは、ゴージャスな外観だけでなく、お客様の価値観をいかに表現できるか、という点にもこだわりました」と伴氏は話す。

 シグネチャーの表面(ディスプレイ側)は、2000℃の溶鉱炉で2週間以上かけて精製されたサファイアクリスタルで覆われている。「スイスの高級時計などにも使われているもので、Vertuが特別に開発しました。サファイアクリスタルのメリットは、美的価値を上げるのと同時に、耐久性に優れていることが挙げられます」と伴氏は説明する。その耐久性は、車のキーでディスプレイをひっかいても傷が付かないほどだという。

 裏面には北ヨーロッパ産のレザーを採用。伴氏によると、高級スポーツカーのレザーシートで使われる特別な素材で、非常に丈夫だという。また、金属部分にはゴールド(18金)やプラチナを使用しており、貴金属の品質保証を行う国際機関、スイス・アッセイ・オフィスの認証刻印がある。「電子機器でこの認証を取ったのは、VERTUが初めてです」と伴氏は胸を張る。

photophoto 最高級のレザーと金属を使った裏面。リングを回すとバッテリーカバーが外れる。このカバーは素手で外せる。非常に小さく肉眼では見にくいが、金属部分の下部に、スイス・アッセイ・オフィスの認証が刻印されている

 ダイヤルキーは“完璧なクリック”を追求し、4.75カラットのルビーベアリングを各キーの内部にはめ込んだ。実際にキーを押したところ、これまでの携帯電話とは異なる「カチッカチッ」という独特のクリック感を確認できた。「スポーツカーや高級自動車のエンジニアは、ドアを閉めるときの音にもこだわります。ルビーを入れたのも、これと同じ発想です」と伴氏は話す。このダイヤルキーには特許を取得し、開発には2年以上を要したという。

photophoto ダイヤルキーの1つ1つにはルビー盤を設け、キーを押すごとに心地よいクリック感を得られる。VERTU端末には、VERTUの「V」をイメージしたデザインが至るところで採用されており、ダイヤルキーもV字型になっている。こうしたデザイン的な措置だけでなく、人間工学的な押しやすさも考慮してこの形状にしたという
photophotophoto SIMカードは一般的な携帯のようにバッテリーカバー内部には格納せず、左側面のスイッチを押すとディスプレイ側の先端から現れるカードトレイに乗せる。細部までこだわるVERTUモデルらしく、トレイも金属製となっている
photo 受話口の耳当てには特殊なセラミックを採用しており、耳にやさしくフィットする

 着信音やアラートなどのメロディは、アカデミー音楽賞の受賞歴を持つ作曲家、ダリオ・マリアネッリ氏が作曲したオリジナル作品を採用。さらに、ロンドン交響楽団が演奏したものを録音した。

 なお、シグネチャーはカメラを搭載しない。「日常生活で(携帯の)カメラは必要ないという人たちがメインターゲットになります」(伴氏)

photophoto VERTUモデルの代表的な楽曲「Sandpiper」を内蔵。待受画面などのグラフィックもオリジナル素材をそろえた
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