「場所」に対してつぶやくTwitterアプリ「ランブリン」の挑戦

» 2010年01月15日 16時29分 公開
[山田祐介,ITmedia]

 “位置ゲー”の快進撃や「セカイカメラ」などのARアプリ、ドコモの「オートGPS」など、モバイルデバイスを軸として多様な位置情報サービスが動き出した2009年――。リアルタイムなコミュニケーションツールとして話題を集めているTwitterも、ツイートに位置情報を付加する「Geotagging API」を開発者向けに公開し、ジオタグサービスを提供していたMixer Labsを買収するなど、ジオメディアとしての側面を着々と強化している。2010年を迎え、モバイルインターネットとリアルな“場所”の結びつきは、さらに強くなっていくはずだ。

 そんな中、iPhone向けTwitterアプリとして独自のロケーションサービスを展開する「ランブリン」が関心空間からリリースされた。同アプリには、通常のTwitterクライアントとしての機能に加え、店舗や施設などの「スポット」に対しツイートを投稿する機能が設けられており、個々のユーザーがスポットに投稿したツイートがタイムラインとして閲覧できる。「場所」という“つぶやく対象”を提供することで、どんな体験やビジネスチャンスが生まれるのか――。同社代表取締役社長兼CEOの宮田正秀氏と、サービス企画の今井健史氏に聞いた。

「位置」ではなく「場所」につぶやく

photo 宮田氏

 同社は、自分の関心にまつわる口コミ情報や同じ関心を持つ人との「つながり」を提供するコミュニティサイト「関心空間」を2001年から運営し、情報と人を結びつける手段に思いをはせてきた会社だ。ロケーションベースの情報提供にも関心を寄せ、エリアを指定して口コミが検索できるiPhone版関心空間をリリースし、経済産業省の「情報大航海プロジェクト」ではNTTドコモとともに位置連動型の口コミサービス「moyoli(モヨリ)」の実証実験を手掛けるなど、チャレンジを続けてきた。

 その一方で、Twitterに関しても「iPhoneのようなデバイスが登場したことで、“今”をシェアするサービスとしてのリアリティが一気に増した」(宮田氏)と、ポテンシャルに注目。こうした背景の下、ユーザーに「今、ここ」の情報を提供するサービスとしてランブリンは開発された。

 ランブリンの特徴は、単なる緯度・経度の「位置」だけではなく、文脈を持った「場所」(スポット)に対してツイートをひも付けられる点だ。スポットの情報は、関心空間のユーザーが登録したものに加え、APIで取得したぐるなびなどの他社サービスのデータが登録されている。さらにユーザー自身が検索枠にキーワードを入力し、グーグルが持つ地点情報をランブリンのスポット情報として登録することもできる。


photophotophoto 周囲のツイートが見られる「エリア」(写真=左)に加え、スポットの情報が検索できる「ガイド」が用意され、iPhone 3GSでは電子コンパスに連動する(写真=中央)。気になるツイートやスポットなどをため込む「情報ボックス」も用意されている(写真=右)
photo スポットに対して投稿されたツイートは、スポットのタイムラインに反映される

 スポットはそれぞれ固有のページを持ち、ユーザーがそのスポットに対してツイートすると、スポットのタイムラインに反映される。例えば飲食店ならば、「○○がおいしい」「接客が良くない」といったツイートがストックされていき、口コミのデータベースとして機能するようになる。

 現状、デバイスのセンサーから導きだされる位置情報は、環境によって実際の現在地と大きくずれることもあり、完璧とは言えない。そうした中で「位置にこだわるサービスというよりは、場所を共有するスキームが重要と考えた」と宮田氏は話す。また、将来的に位置情報の精度が向上しても、「名称を持った具体的な場所の情報を共有していることは生きる」と算段を立てる。

“口コミ+オーナーのつぶやき”で地域活性化のプラットフォームに

photo 今井氏

 現在、インターネットの情報と人を結びつける手段としてはキーワード検索が主流だが、モバイルインターネットでは、端末のセンサーを活用するような、全く別の手段が力を持つかもしれない。ランブリンのプロダクトマネージャーを務めた今井氏は「これまでの検索エンジンは、あくまでPCのためのもの。iPhoneに触れた際に『これで検索のあり方が変わる』と感じた」と語る。

 そんな時代の変化に乗り遅れない「ギリギリのタイミング」(宮田氏)でサービスインにこぎつけたというランブリンは、マネタイズありきで組み立てられたものではない。口コミサービスならば、無料で公開してユーザー数を増やし、媒体力を高めてビジネスにつなげていく考え方もあるが、そうした手法はあえて選ばず、350円の有料アプリとして公開した。「疲弊しないやり方できちんとサービスを育てていこうという思いがあった。有料で提供し、サービスの向上を約束し、価値を生みだすことから逃げずにやり遂げたい」と、宮田氏は語る。3カ月〜半年でユーザーを1万人ほど獲得するという目安も立てているが、あくまで購入者に価値を認めてもらい、口コミで認知が広がればいいと宮田氏は考えている。

photo オーナーとしての情報発信をすでに開始している、子供服専門店・Voodoo Childのスポットページ

 同社が今後、マネタイズのキーになると見ているのは各スポットが持つタイムラインの情報だ。「スポットのページはユーザーのつぶやきが蓄積されることで価値を増すが、それと同じぐらい“スポットのオーナー”のつぶやきも価値を持つと考えている。店ごとのオーナーがTwitterのインフラ上でどんな情報を発信し、ユーザーとどんなコミュニケーションをしているのかが見えるのは面白いはず」と今井氏は説明する。

 リアル店舗がTwitterで情報を発信しようとした際、店のアカウントをフォローしていない潜在顧客に情報を伝えることは難しい。しかしランブリン上ならば、「場所」という視点からユーザーとの新たな接点が生まれる。ユーザーは自分の周囲、あるいは気になる地域のスポット情報を探し、入ったことのない店や施設の“今の空気”をアプリ上で感じ取る。また、店の感想を面と向って伝えられないような場合でも、スポットのページ上ならば気軽にできるかもしれない。

 この“オーナーとしての情報発信”に料金を発生させるビジネスを考えているが、価格体系などは決まっておらず、まずは店舗に無料で使ってもらい、フィードバックを受けならサービス像を探る。同社の目標は、このサービスを企業の規模に関わらず広く使ってもらえるように育てることだ。「IT化に関して打つ手がなくなっているような店舗に、何かソリューションを提供できないかという思いがあった」と、宮田氏は語る。「今のところ3月までに問い合わせを頂ければ、年内無料で機能を提供しようと考えている」とも話し、参加を広く求める。


 「ある場所でビジネスをしている方と、そこに足を運ぶ方に、あまねく使ってもらえるものに育てていきたい」――その目標に向い、同社では今後、さまざまなエリアで導入事例を増やしていく。すでに1月10日まで行われた表参道のイルミネーションで試験導入を行い、原宿エリアの対応をさらに広げていくと宮田氏は意気込む。4月に開催される葉山芸術祭でも導入が予定されているほか、恵比寿、吉祥寺、下北沢といったエリアでも事例を増やす計画だ。

 アプリとしてのランブリンも、軽快な動作性、検索性の向上、顕在化していない情報の“つながり”をいかに見せるかなど、ユーザーの意見に耳を傾けながら機能の向上を図っていく。「2010年は“Twitter+位置情報”の波が来る。その中で負けないよう、“つぶやき+場所”でなにができるのかを考えたい」(今井氏)

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