「位置情報」を軸に動き出す、新時代のモバイルビジネス:神尾寿のMobile+Views

» 2009年12月07日 15時06分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 位置情報を用いた新サービスや新ビジネスの動きが活発化している。

 ここ最近のニュースを振り返っても、NTTドコモが発表した「オートGPS対応iコンシェル」や、相次いで発表された「セカイカメラ 2.0」関連の新機能・新サービス群、ほかにもKDDIの「実空間透視ケータイ」を用いた青森での商店街ツアーや、東急電鉄がiPhoneを用いて行うソーシャルブックマークの実証実験、セイワールドと日本イノビテクが共同開発したAndroid向け位置情報共有システム「LocationDroid」など、ここ最近の位置情報に関係したニュースは枚挙にいとまがない。携帯ビジネスにおける位置情報というと、これまで「地図表示」と「歩行者ナビゲーション」のためのものと考えられがちであったが、状況は大きく変化してきているのだ。

Photo ドコモのオートGPS(左)、頓智・のセカイカメラ(中)、KDDIの実空間透視ケータイ(右)

「常時測位」と「屋内測位」の課題は解消へ

 周知のとおり、日本における位置情報活用の歴史は古く、2000年代初めからKDDIやドコモによって積極的に行われてきた。とりわけKDDIは、ナビタイムジャパンと共同で携帯電話向けのGPS地図ナビゲーションサービスを3キャリアで初めて実用化するなど、この分野の草分けとして積極的に独自サービスの開発に注力してきた。一方のNTTドコモも、位置情報サービス大手のゼンリンデータコムに出資するなど、この分野の取り組みに余念がない。

 携帯電話向け位置情報サービスが登場する環境も整備された。位置情報サービスは、「GPS搭載携帯電話の普及」が必要であるだけでなく、サーバとの通信や地図など大容量データのやりとりが頻繁に発生することから「パケット料金定額制の浸透」も必須になる。これらの環境整備が2000年代半ばから進んだことで、携帯電話やスマートフォンでの位置情報サービスの利用環境が急速に整ったのである。

 しかし、その一方で、携帯電話・スマートフォン向けの位置情報サービスは、そのサービスやビジネスの拡大において、大きく2つの課題を抱えていた。それが「常時測位」と「屋内測位」である。

 前者の常時測位は、その名のとおり、“常に位置情報を取得・把握”する仕組みのこと。カーナビゲーションではあたりまえの機能であるが、搭載バッテリーの容量に制限がある携帯電話では、これまで消費電力の大きいGPSの常時測位は難しいとされていた。地図ナビゲーションをはじめとする携帯電話・スマートフォン向けの位置情報サービスは、基本的に“アプリ起動時しか測位しない”仕組みだったのである。

 後者の屋内測位は、GPS衛星が見渡せない“屋根のある空間”で高精度な測位をする仕組みのこと。クルマと違い歩行者は、常に屋外で移動しているわけではない。むしろ、施設内での地図表示や店舗までの誘導を鑑みると、屋内での位置情報取得は重要であり、屋内での高精度測位技術の構築は、携帯電話・スマートフォン向けのサービスやビジネスの幅を広げる上で極めて重要なのである。

 しかし、これらの課題も昨年から今年にかけて、解消の方向に向かっている。常時測位の課題は、NTTドコモの「オートGPS」が“常時測位をしながら消費電力を抑える”ことに成功。同社のiコンシェルと組み合わせることで、ユーザーの位置に応じてコンテンツやサービスの提供をスマートに行うことを実現している。一方の屋内測位技術も、クウジットの「PlaceEngine」に代表されるWi-Fi測位型や、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と測位衛星技術が共同開発した「IMES」、ほかにも特定省電力通信や可視光通信を使ったものなどさまざまな技術が登場し、屋内でも高精度測位を実現する下地は整いつつある。このように携帯電話・スマートフォンでの位置情報利用は、常時かつ屋内での利用も可能な新たな段階に入り始めているのだ。

位置情報前提が「次世代モバイルビジネスの鍵」

 携帯電話やスマートフォンは常に身につけており、しかもインターネットに常時接続されている。この特性に「いま(リアルタイム)」と「どこで(位置情報)」が加わることで生じるサービスやビジネスの潜在的な可能性は、ナビゲーション市場のみにとどまらない。すでに写真に付けるジオタグから、TwitterなどSNSでの活用、“位置ゲー“と呼ばれるゲーム分野まで、地図ナビゲーション市場以外での位置情報活用は始まっているが、今後はさらにこの流れが加速し、位置情報はモバイル端末やモバイルサービスの最も基本的なUI要素になるだろう。

 「位置情報をどう使うか」――。

 今後、さまざまなモバイルサービスやビジネスを考える上で、この発想が重要になるのは間違いなさそうだ。

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