社員証を“鍵”にして認証するオフィスの入退室管理システムが一般的だが、急いでいるときに社員証をかざすのが面倒くさかったりする。カードをかざさずとも入室できれば多忙なビジネスパーソンのストレスを軽減できるかもしれない。そんな“カードかざし不要”のシステムを東芝、パナソニック、日立の3社がそれぞれ展示していた。
情報漏洩対策の強化などによって近年、オフィスの入退室管理システムが注目を集めている。機密度が高い場所については指紋や静脈、虹彩などを認証する生体認証システムが利用されることもあるが、一般的には社員証を“鍵”にして認証するオフィスが多いだろう。ドア付近のリーダーに社員証を近づけると「ピッ」と音が出て解錠するアレである。
ただ、急いでいるときに社員証をかざすのが面倒くさかったりする。社員証を出し入れしているうちにうっかり紛失、なんてこともあるかもしれない。ちょっとしたことだが、カードをかざさずとも入室できれば多忙なビジネスパーソンのストレスを軽減できるかもしれない。
東京ビッグサイトで開催中のSECURITY SHOW 2009で、そんな“カードかざし不要”の入退室管理システムが目を引いた。
カードをかざさず入退室できるシステムの原理はそれほど難しくない。社員証などの入室カードと、ドア付近のリーダーを何らかの手段を用いて通信すればいいだけだ。
東芝プラントシステムの入退室管理システムはオーソドックスなタイプで、社員証に使われるICカードにRFIDタグを埋め込むものだ。このRFIDタグはセミアクティブタイプで、特定小電力の通信(LF信号)を受信するとアクティブとなり、RFIDタグからの通信を開始する仕組みである。
つまり、ドアノブ付近にアンテナを設置し、そのアンテナからLF信号を発信させておくことで、信号を受信したICカード(RFIDタグ)が電波を発信して、ドアを解錠するわけだ。「ICカードに社員の情報を登録しておけば、誰がどこのドアから入室したかなどをさりげなく把握できる」(東芝ブースの説明員)という。
パナソニック電工の入退室管理システム「Wave Acty」は、仕組みこそ東芝プラントシステムと同様だが、カードではなく棒状の「タグ」も選べる。またこのタグをかざすパターンを大きく分けて2つ選択できるのも特徴だ。
1つは東芝プラントシステムと同じくカード(タグ)をかざさない方法で、もう1つは通常のシステムと同じようにカード(タグ)をかざす方法。ポイントはこの2つを適宜ユーザーが選べることである。
例えば、アクティブなRFIDを動作させるには電池が必要だが、電池が切れてしまった場合にタグ側のボタンを押したり、リーダー側で操作したりすると、タグをかざす近接型認証に変更できる。また、ほかの人が一緒に入ってしまう共連れを防いだり、自分だけが入室したいときもリーダー側の「警戒セット」ボタンを押すことで近接型認証に変更できるのだ。
日立製作所のブースでは、同社とNTTコミュニケーションズ、美和ロックの3社で共同開発した入退室管理システムをデモンストレーション。こちらは、NTTが開発した電界通信技術「RedTacton」を利用したもので、東芝プラントシステムやパナソニック電工が利用した無線技術ではなく、人体やモノの表面に発生する電界を利用したものだという。
専用のカードキーとアンテナを使って入退室を管理する。例えばカードキーをスーツのポケットやバッグなどに入れておき、アンテナを埋め込んだドアノブを触ると、身体の表面の電界を伝わってカードキー内部のID情報が伝わり、ドアを解錠する。
RFIDタグなどを使った無線の場合、2〜3メートル範囲のタグに反応してしまう可能性があるが、電界通信であればアンテナを埋め込んだ廊下の一角に立ったり、ドアノブに触ったりと認証スペースを限定できる。このため共連れなどを防ぐ効果もあるという。
「精密機械の工場や病院では、衛生面からもカードを取り出したくないという要望がある」(日立製作所の説明員)という。素早く入退室できるだけでなく、衛生的でもあるという、“カードかざし不要”の入退室管理システムに今後も注目だ。
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