社長室も出入り自由――透明性が売りのライフネット生命保険、オフィスの透明性も高かった?みっちゃんのオフィスちゃっかり訪問

業界で初めて、生命保険の手数料部分と原価部分の比率を全面開示したライフネット生命保険。透明性の高さが売りのこの会社に、ちゃっかりおじゃましてきました。社長室への出入りが自由だったり、社内SNSで年齢差の壁を越えたりと、フラットで風通しのいいオフィスでした。

» 2009年04月03日 17時00分 公開
[満木葉子,Business Media 誠]

 みっちゃんこと満木葉子が気になる会社のオフィスにちゃっかりおじゃまして、どんな会社なのかをお伝えする「みっちゃんのオフィスちゃっかり訪問」。第1回はライフネット生命保険(のマーケティング部門)にちゃっかりおじゃましてきました。

 外交員を廃止して、ネット専業の生命保険会社であるライフネット生命保険。業界で初めて、生命保険手数料部分と原価部分の比率を全面開示したほど、透明性の高さが売りです。実際のオフィスも、社長室への出入りが自由だったり、社内SNSから生まれたコミュニティでリアルに遊びに行ったりと、20代から60代までの社員が年齢の壁を越えてコミュニケーションするフラットで風通しのいい職場でした。

会社概要

  • 社名:ライフネット生命保険(マーケティング部)
  • 設立:2006年10月
  • 人数:12名(平均年齢33〜34歳)※マーケティング部のみ
  • 所在地:東京メトロ半蔵門線半蔵門駅から徒歩2分

社長室は出入り自由、帰ってきた社長がミーティングで入れない?

入ってすぐに会議室。正面はグリーン

 半蔵門駅近くの白いきれいなビルにオフィスはありました。入口を入ってすぐ、「グリーン」「オレンジ」「ソクラテス」という3つの会議室。なぜ1つだけ「ソクラテス」? もともとは偉人の名前で「ソクラテス」「パスカル」のようにつけたのですが、気がつくと各部屋のアクセントカラーの名前で呼ばれるようになったとか。ちなみに社長室は、歴史好きの出口治明(でぐち・はるあき)社長が「法顕」(ほっけん※編集部注)と名付けたそうですが、社員は普通に「社長室」と呼んでいるようです。

※編集部注:4〜5世紀、中国東晋時代の僧侶。インドやスリランカに渡り、仏典を持ち帰った
松岡さん

 全社員50名が働くフロアは、窓が多くて日差しがいっぱい、とても明るい印象です。パーティションで区切られていないため、広々とした印象を受けました。もともとは1人ずつを囲うように肩の高さくらいまでのパーティションがあったのをとっぱらったそうです。

 そのきっかけを作ったのは、松岡洋平さん(マーケティング&コミュニケーションズマネージャー)。マーケティングの研究と称して書類雑誌が机の上にてんこ盛りだった松岡さんは、ある日「パーティションをとっぱらったらもっと机の上が広くなる!」と気付いたとのこと。実行してみたら、コミュニケーションがとりやすいという意外な効果に気づいたのだそうです。

 松岡さんに影響を受けた人たちが徐々にパーティションを撤去しはじめて、それが評判になり、副社長の岩瀬大輔さんの号令ですっかりなくしてしまったとか。個人情報を扱うセキュリティエリアを区切る天井までのパーティションも全面ガラス張り。これも壁を作らないために透明にこだわったそうです。

 唯一壁のある社長室におじゃましたいとちゃっかりおねだりすると、あっさりOK。とかく堅そうなイメージが先行する金融機関なのにオープンな感じです。広報の吉川礼瀬(よしかわ・あやせ)さんの後について入ると、出口社長がPCに向かって執務中。え? 社長室の中に社長がいらっしゃるじゃないですか!

 いかにちゃっかりのみっちゃんも少々どきどき。本当にいいんですか……?「全然いいですよ」と書きかけの原稿まで見せてくれた社長。ちょっぴり色白で優しい笑顔が紳士なかんじでステキでした。


出口社長。机の前には接客スペース

 ちなみにこの社長室、社長の不在時には、許可をとるでもなくふつうにミーティングルームに早変わり。さすがに社長のデスクではやりませんが、その前にある応接用のデスクで社員が打合せしたりしているそうです。社長が外出から戻ってきたら、ドアが閉まっていたりすることもあるとか。「会議室が足りないものだから」と笑っていました。壁があってもないようなものですね。

若手と年配社員が混在、どうなるコミュニケーション

当然ながら会議も若手と年配の社員が混在。性別も服装もバラバラだ

 壁といえばパーティションもそうですが、年齢差も精神的な壁になりがち。出口社長が60代、岩瀬副社長が30代、ということに象徴されるように、ライフネット生命保険の年齢分布は30代と60代に山があります。60代というと、一般的にネットやPCに不慣れな人が多いし、親子ほど年の離れた仲間とコミュニケーションがとれるのか――気になるところです。

 特に従来の生命保険会社で長く働いて、ライフネット生命保険に転職してきたような人は、これまで個室をもらっていたり、個室ではないまでも部長席などいわゆる“お誕生日席”に座っていたような人たちですから、若手と並んで座ることに不服だったり、上から目線で発言したりしても、おかしくないですよね。

 ところが、年配の社員は生保業界の経験者として業界の常識を教えたり、若手も自分の専門知識を教えたり、お互い補完しあういい関係なのだそうです。例えば、創業当初は出口社長の横に岩瀬副社長がついてPC操作を教える姿もみられたとか。ちなみに社長のタイピングは「一本指打法」だそうですが、原稿の執筆ペースは速そう。今朝から書き始めたという原稿を拝見しましたが、1時間ほどでA4用紙のほとんどが埋まりそうな感じでした。

 逆に年配の社員が業界を変えたいという思いが強くアグレッシブで、若手が止めに入ったりするケースも。反対に、出口社長を若い岩瀬副社長が注意することもあるそうで、職位や年齢を越えて、お互いをプロとして認め合う人間関係が築けているようです。

三三の名刺管理システム「Link Knowledge」も導入している

社内SNS「laxi」で「ランニング部」や「とんかつ部」

社内を案内してくれた吉川さん

 こんな社員間の自然発生的なコミュニケーションを促進するのに一役かっているのが、「laxi(ラクシィ)」という社内SNSです。どこかで聞いたような名前ですが、元々は「はてなグループ」を使用していたのを、セキュリティの観点から内製に切り替えたのだそうです。

 SNSには「ランニング部」や「とんかつ部」など15ほどのコミュニティがあって、社内を横断するようなコミュニケーションに役立っているみたい。金融機関なので個人情報保護のために入室を制限しているセキュリティエリアも当然存在します。こうしたエリアでコミュニケーションが断絶してしまうことがありますが、laxiのようなSNSによって、セキュリティエリアの社員でもコミュニケーションできるようにしているわけです。

 年配の社員も日記を書いたりコミュを作ったりと、ネットを介してのコミュニケーションに積極的だとか。趣味を通して年齢関係なく、また家族もいっしょに遊んだり、自然に社員間の交流が生まれているようです。


 松岡さんが仕事をするうえで大切にしていることは4つ。「ホンネでしゃべること」「勉強し続けること」「定期的に仕事のやり方を見直すこと」「人が困っていたら助けること」――これってさまざまな年代・バックボーンの人が集まって、新しいことに取り組むときのポイントではないでしょうか。

 年下だから、立場が下だからと遠慮し過ぎると真意が伝わらないしお互いを理解できませんものね。これまでの経験にしがみついていると新しいことは吸収できないし。お互いを気遣い、助け合うことでさらにいいものができたりしますから。

 インタビュー終盤。同行のT記者が「今、3つの保険に入ってて」とかなんとか……。なんと保険の相談してました。もしもしTさん? もしかして今回ちゃっかりしてたのはTさんだったようです。これを機会に私も保険のこと、ちゃんと考えようかなあ。

松岡さんの所属するマーケティング部周辺

著者紹介:満木葉子(みつき・ようこ)

 1976年神戸生まれ・鹿児島育ち。立教大学心理学科卒業後、国内大手企業4社にて営業・人事・総務を経験。立教ビジネスクリエーター塾の役員を務めるほか、NPO団体やイベントのPRを行う。洪水で実家水没、震災で実家倒壊、さらにピッキング、スキミングの被害に遭うもいつもちゃっかり助かる。特技はあいづちで、このためか営業時代は多数受賞。趣味は俳句と深夜ビール片手にする手芸。いくら食べても太らない体が唯一の自慢。


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