野間美由紀さんが広瀬香美さんに教えたPhotoshop講座に見る、いい教え方、教わり方どう教える? どう学ぶ?

少女漫画家の野間美由紀さんが歌手の広瀬香美さんにPhotoshopの使い方についてプライベートレッスン。Biz.IDでは野間さんの教え方、広瀬さんの教わり方に注目してみたい。

» 2009年08月28日 20時30分 公開
[鷹木創Business Media 誠]

 誠 Biz.IDのTwitterITmedia Newsの記事で、すでにご存じの読者も多いと思うが、8月27日、少女漫画家の野間美由紀さんが歌手の広瀬香美さんにPhotoshopの使い方についてプライベートレッスンをした。経緯や詳細はNewsの記事を読んでいただくとして、Biz.IDでは野間さんの教え方、広瀬さんの教わり方に注目してみたい。

広瀬さんと野間さん。野間さんは9月4日に新刊の『ベスト・オブ・パズルゲーム☆はいすくーる』が出るそうだ

野間さんの教え方、広瀬さんの教わり方のポイント

  • 準備段階でなるべく打ち解ける
  • 目標を明示する
  • 無理にデジタルで進めない
  • 詰まったら、おやつを出す
  • 生徒は元気に、先生も一緒に楽しむ

準備段階でなるべく打ち解ける

 そもそも今回は、広瀬さんが自分のメルマガに添付する手書きイラストを作成するため、Twitterのフォロワーに「Photoshopを教えてほしい」と訴えたのがきっかけ。愛用のMacは音楽作りのため10数年使い込んでいるがPhotoshopは初心者だという広瀬さんに対して、何人かのフォロワーから「それなら野間さんがいいのでは?」と言われて、野間さんとコンタクトを取ったという。

 野間さんは十数年来Macとペンタブレットで漫画を描いている。Macを活用する前には何人かのアシスタントを雇って漫画を制作していたが、今では野間さん1人きりで制作している。「Macが好きだから、(制作作業が)辛くないんです」と笑った。ちなみに普段の漫画は「ComicStudio」を利用。ペンタブレットの使い方でいうと、あの一条ゆかり先生にも指導経験アリというヘビーユーザーである。

 同じMacユーザーとはいえ、Photoshopでは片や初心者、片やプロの違い。だが2人の“講座”は和やかに進んだ。というのも、2人ともすでにTwitterでフォローし合い、今回の講座について意気投合していたからだ。もしかしたら同じMacユーザーとしても通じるものがあったのかもしれない。

目標を明示する

 ペンタブレットの使い方などを説明し、いざ描き始める前に、野間さんが示したのが本日の目標だ。「今日はタンブラーに巻くためのイラストを作りましょう」。そう言って野間さんは、タンブラーを広瀬さんに渡した。

 タンブラーの中を見た広瀬さんは、ちょっとびっくり。なんとコーヒーショップのコーヒー無料券が入っていたのだ。また、最後に印刷する時に切り抜きやすいよう、扇状の枠もデータで用意してあった。野間さんのちょっとした気遣いを感じる“目標設定”である。

無理にデジタルで進めない

広瀬さんが最初に描いたコーヒーカップ

 コーヒーつながりでカップの絵を描くことになった広瀬さん。野間さんの気遣いに感謝しつつも、やはり初心者である。最初に描いたカップは、なんだかよく分からない形になってしまった。広瀬さんも「なんだか上手く描けません……」と意気消沈。「何でそんなにきれいな線がかけるんですか?」と広瀬さん。野間さんも「何でそんなにピアノが弾けるんですか、と同じですよ」と励ます。

 こんな時に単なるデジタルに強い人が陥りがちなのが、ソフトウェアやハードウェアの機能に頼ってしまうこと。筆者も思わず「こんな機能を使えば、上手く描けるんじゃね?」と口を出しそうになってしまった。

 ところが野間さんがやったのはまったく逆のこと。「そしたら絵を描いてみましょう」と、マルマンのスケッチブックとサクラクレパスの色鉛筆「クーピーペンシル30 カラーオンカラー」を取り出した。ペンタブレットをいったん止めて、実際にお絵かき教室をやってみようというわけだ。「実際に描いてみないと分からないことってあるんですよ」と野間さん。

 広瀬さんは、野間さんのお手本の絵を見ながら、何個かコーヒーカップを描いてみた。「カップには厚さもあるから、うまく影を付けて表現するといいですよ」(野間さん)。ちょっとしたニュアンスを伝えるのに、無理してデジタルを使わなくてもいいのかもしれない。

2人でお絵かき。なお、このスケッチブックとクーピーペンシルは広瀬さんにプレゼントした

詰まったら、おやつを出す

だいぶ線がキレイに引けるようになってきた……でも色がうまくぬれない

 だいぶ慣れてきたので、再度ペンタブレットで再開。ペンタブレットでもだいぶキレイな線が引けるようになったようだ。だが、肝心の色塗りがうまくいかない。「色を混じらせたいんです! カプチーノみたいにしたいんです! なんか今のままだと腐った飲み物みたいで、飲みたくない……」(広瀬さん)

 ここで選手交代。野間さんがPhotoshopで色塗りのお手本を見せる。レイヤーを重ねてブラシツールを使いながら水彩画のように色を付けていく。思わず広瀬さんも「おおー、飲みたくなっちゃう」とため息。再び広瀬さんが色塗りにチャレンジ。でもどうしてもうまくいかず、さすがの広瀬さんも「なんかどよんとしてきました。同じようにしてるのに」とがっくり。

 そんな時に振る舞われたのが、おやつだった。銀座の名店、空也のもなかである。普段あまり甘いものを食べないという広瀬さんだが、「今日は頭を使っているので、おいしい」とモチベーションを回復。野間さんのホスピタリティの勝利――かもしれない。


(左)野間さんが色塗りしてみたもの。(右)おやつは空也のもなか。さらに和菓子も振る舞われた

生徒は元気に、先生も一緒に楽しむ

 おやつを食べてやる気も出てきた広瀬さん。気合いも入ったようで「よーし、元気に描くぞ!」とだいぶ前向きになってきた。作業を始めると一心不乱にペンを動かしている。おやつ効果恐るべし……。

 それを見届けたように野間さんも自分のMacに向かって何か描き始めた。どうやら広瀬さんの写真を元に、似顔絵を描いているようだ。というか、数分で書き上げた。作業時間に関わらず、こちらはさすがにプロのクオリティである。

 カップを描き上げた広瀬さんも野間さんのディスプレイを見てびっくり。似顔絵を見てとても元気になった。先ほどまでうまく描けなくてがっくりしていた本人とは思えないほどである。というわけで、野間さんは自分の描いた広瀬さんの似顔絵と広瀬さんが描いたコーヒーカップを合成。印刷したイラストをタンブラーに巻いてプレゼントしたのだった。

 結局、広瀬さんも無事(?)コーヒーカップを書き終えて、本日(8月28日付)のメールマガジンで画像を配信する予定だ。初心者に対する野間さんの温かい気遣いや、広瀬さんの元気のよさが印象に残ったプライベートレッスンとなった。

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