「社会を変える」を仕事にする――駒崎弘樹さんTwitter読書

Twitterを通じて著者と交流できる連載「Twitter読書」。2回目の今回は『「社会を変える」を仕事にする』を取り上げます。著者の駒崎弘樹さんにお仕事のこと、これからの社会のことを聞いてみてはいかがでしょうか。Twitterのハッシュタグは「#komabook」です。

» 2009年11月06日 11時04分 公開
[藤沢烈,Business Media 誠]
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連載「Twitter読書」について

 Twitterを利用することで、著者と読者の直接交流を実現する仕組みです。用意した専用ハッシュタグを使って著作の感想・質問を投げると、著者から直接返答があるかも。記事中のウィジェット上で発言を閲覧できますし、自分のTwitterクライアントからもハッシュタグをつければ投稿・確認できます。未読の人もブックレビューを見ながら質問してみて、購入の参考になればと思います。

  • 著者との交流ハッシュタグ: #komabook

 ITベンチャー経営者から社会起業家へと転身した駒崎弘樹さん。そのプロセスの中での心の葛藤と、事業上の様々なトラブルが描かれているのが『「社会を変える」を仕事にする』である。社会起業家という新しいスタイルが現代になぜ必要なのかが、コミカルな物語の中でよく理解できる。


行政・ボランティアから社会起業へ

 従来型NPO・ボランティア団体と社会起業家の違いは、その収益構造にある。これまでは一般会員の善意にもとづく寄付や、行政・起業からの助成によって財政基盤が築かれてきた。しかし、NPO法人は増えたにも関わらず、寄付や助成の総額は変わらず、団体の安定した運営は困難であった。そこで注目されてきたのが事業型NPOや社会起業家である。財源を外に頼らず、事業を伸ばすことで規模も広げることができる。駒崎さんはアメリカ留学中にその流れを知り、そして病児保育という未解決の問題を知ったことで、NPO法人フローレンスを立ち上げるに至った。

 社会起業家は、行政との連携も必要とする。ベンチャー起業と異なり増資には限界があり、全国展開といった取り組みを単独で行うのは無理があるからだ。駒崎さんが構築した非施設型モデルは、厚生労働書に注目されて全国に伝播することになった。新たに社会課題を解決する上で、持続性ある社会起業がすばやくプロジェクトを立ちあげ、その内容を行政が広げていく。そうしたモデルは今後も増えるだろう。

ベンチャーよりも社会起業に可能性がある理由

 本著を読むと、社会事業が立ち上がる課程には多くの人物が関わっていることが分かる。プロのマーケッター、新聞記者、弁護士、行政マン、NPOの先達。普通ならとても雇えないプロが無償で関わったことが、組織の発展に大きく力になったことが分かる。時代は物作りからサービスへ変化しつつある。無料のビジネス基盤も多く整った。新しいプロジェクトが立ち上がる際に必要なのは、資金よりもむしろ人の知恵である。出資は募りづらくとも、知恵を借りやすいNPO・社会起業といった形態は、今の時代にこそ通用しやすい方法なのだろう。

『「社会を変える」を仕事にする』の著者:駒崎弘樹さん(Twitter

 NPO法人フローレンス代表理事。1979年生まれ。99年慶應義塾大学総合政策学部入学。在学中に学生ITベンチャー経営者として、さまざまな技術を事業化。同大学卒業後「地域の力によって病児保育問題を解決し、育児と仕事を両立するのが当然の社会をつくれまいか」と考え、ITベンチャーを共同経営者に譲渡し、「フローレンス・プロジェクト」をスタート。04年内閣府のNPO認証を取得、代表理事に。著書は他に『働き方革命』(筑摩書房、2009)。

※本に関する感想・質問を駒崎さんに直接伝えてみましょう。Twitter上で#komabookをつけて投稿下さい。

著者紹介 藤沢烈(ふじさわ・れつ)

 RCF代表取締役。一橋大学卒業後、バー経営、マッキンゼーを経て独立。「100年続く事業を創る」をテーマに講演・コンサルティング活動に従事。創業前の若者に1億円投資するスキームを企画運営し、話題を呼ぶ。「雇われ経営参謀」として500人以上の経営・企業相談を受けてきた。ブログに毎日書評を掲載し、現在1200冊超。


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