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ヤフーとLINEが経営統合、川邊・出澤共同代表に聞く――ZホールディングスにあってGAFAにない優位性とは?オンラインとオフラインの垣根をなくす(2/4 ページ)

» 2021年03月25日 08時00分 公開
[中西享, 今野大一ITmedia]

広告主のデジタルシフトを促す

――広告マーケティングでは、広告主であるクライアントから広告を出した成果があったのかどうか、コストパフォーマンスを厳しく見られています。クライアントの売り上げ増加につながり、喜ばれるためにはどんな広告が求められるのでしょうか。

川邊氏: 広告主が広告の効果について厳しい視点を持っているのは極めて重要です。それがネット広告業界全体を利することになるからです。

 いままではテレビの広告が圧倒的に強く、販促のチラシなどもありましたが、アナログ的な広告は効果があるかどうかも含めて良く分かりませんでした。このため、効果の分かるデジタルの方に広告費が流れてきて、そこのマーケットが大きくなってきました。ですから、きちんとしたソリューションを提供すれば、おのずからデジタル広告が拡大していく自信があります。

 これを、広告の認知、検索、購入、再購入という一気通貫のデータで見ることができるのが重要で、われわれが持っている広告のラインアップを提供すれば、効果が分かるようになります。新規顧客獲得から優良顧客化までの「フルファネル」の広告商品です。実際には今ある商品をつなげていくことになりますが、フルファネル広告をしっかり投入して、広告主のデジタルシフトを促していきたいと考えています。

出澤氏: いままではオンラインの広告ではデータを採れていた一方、オフラインに移った瞬間に(データが)途切れてしまっていました。つまりオンラインで広告を見た人が実際にお店に来て商品を買っても、データ自体はつながっていませんでした。このオンラインとオフラインが交じり合ったところがポイントになるのではないでしょうか。

 ヤフーにある情報やニュースの検索で商品を知り、「PayPay(ペイペイ)」というリアルの決済があり、LINEオフィシャルアカウントがありますから、継続購入のコミュニケーションを作っていく3つのツールがそろっていることになります。その意味でわれわれは、フルファネルといわれる全部の種類の広告とマーケティングツールを持っています。

 オンラインとオフラインをまたぐデータを把握できる可能性があるので、このサービスは顧客に心地よく、広告主にとっても効果の高いものになるのではないでしょうか。

川邊氏: こうしたサービスを、ユーザーの同意を得た上で、設計していきたいと考えています。

――ヤフーの顧客の多くが30代から40代以上の男性、一方のLINEは若い女性層が中心です。経営統合すると、これまでと異なる客層を対象にしなければならなくなりますが、うまくやっていけるのでしょうか。

川邊氏: ヤフーは8000万人、LINEは8600万人が利用しているメディアです。従ってヤフーの利用者が極端に40代の男性に偏っていたり、LINEには若い女性しかいなかったりということは起きません。濃さの違いはあっても、両社は幅広いユーザー層を持っています。このため、相互に行き来する中で、いかにして異なるユーザー層にアクセスしてもらうかが課題です。そこにインセンティブを付けるなど「デザイン力」が必要になると考えています。

出澤氏: ヤフーもLINEも8000万人級のサービスです。ですからLINEが提供している「LINEMUSIC」も若者層に人気がありますが、全体としては老若男女が使えるように設計しているので、サービス連携はうまく進むと思います。川邊さんも「LINEMUSIC」を愛用されています。

川邊氏: 若いユーザーが使っている「LINEMUSIC」をヤフーのメインユーザーである40代の男性に使ってもらうためのインセンティブや紹介の仕方はきちんと設計していきたいと考えています。

 競争法の関係で統合するまではサービスの開発自体はできませんでしたが、今後はどんどん連携させていきたいと考えています。すでにヤフーのトップページには「LINEMUSIC」を掲載していますし、LINEのメニュー一覧には「Yahoo!トラベル」を載せてあります。相互送客の取り組みは既に始まっています。

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