新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの場面で人と人との直接の接触は減り、出会いの機会は激減した。一方でその状況を補完し、商機を見いだしているのがマッチングサービスを手掛ける企業だ。中でも大手のTinderはコロナ禍でも順調に売り上げを伸ばした。
同社は「出会い系」というイメージからの脱却を図るべく次の一手を模索していることは前回レポートした(「出会い系からの脱皮」図るTinder メインユーザー「Z世代」を巻き込むために必要な施策とは?参照)。今回は4月にTinder Japanのカントリーマネージャーに就任したチョウ・キョ氏に、今後のビジネス展開について話を聞く。
チョウ・キョ Tinder Japanカントリーマネージャー。2003年、北京第二外国語大学に入学し、日本語・日本文学を学ぶ。07年、早稲田大学院に入学。09年より米ジョージ・ワシントン大学で国際関係学を学ぶ。11年に日立製作所入社。12年、Web開発の会社を立ち上げ、法人向けコミュ ニケーションツールの開発、販売事業を手掛ける。17年に、ライブ配信プラットフォームBIGO LIVEの日本法人代表に就任。日本での立ち上げおよび事業拡大に努め、日本国内売り上げトップ3に入るプラットフォームに成長させる。19年には、同社の東アジア・パシフィック地域代表に就任。21年4月にTinder Japanにカントリーマネージャ ー(現職)として入社。東アジア(日本・韓国・台湾)の事業統括を担う(以下、記者発表での撮影:小澤俊一)――Tinderの親会社Match Groupの2020年の売り上げは前年比17%増の24億ドル(約2700億円)でした。これは新型コロナの影響でしょうか?
はい、その通りです。21年第2四半期でみれば前年比で26%増になっています。これはパンデミックが発生してから最も大きい伸び率となりました。
7月末までのデータを見ると(相手を見て右か左かを決める)スワイプ数が前年同月比で13%増えて、メッセージの送信数は同12%増えています。チャットに使う時間も同38%増なので、皆さんオンラインでの時間が増えていますね。
――20年は動画を絡めたイベント「Swipe Night」を開催しましたね。21年は何か新しい取り組みをしていますか?
「プロフィール動画」を日本でも導入しました。これまではプロフィールでは自分の写真しか掲載できなかったのですが、この機能の導入により動画で自己表現ができるようにしました。
Tinderユーザーの50%以上が18〜25歳のZ世代。彼らは「動画ネイティブ」です。幼いときから文字よりも動画に親しんでいて、TikTokも普通に使っているので、動画のほうが自己表現しやすいというのがあります。
もう一つはカテゴリーの中から興味のある人を探せる「Explore」という機能を段階的に導入しています。今まで通り、トップページからスワイプする使い方もできます。ただExploreを使うことで、もう一つ入口が増えて、趣味や価値観の中から相手を探せるようになります。「料理が好き」とか「動物が好き」とかといったカテゴリーの中から探せるのです。
――近年、Tinderは「出会い系」のイメージからの脱却を目指していますね。ただ、まだまだそういったイメージが残っている現実があります。このイメージを払拭するためにはどんな課題があり、今後どんな戦略をとろうと考えていますか?
課題という意味でいえば、世間的には「出会い系」と「マッチングアプリ」の違いが認識されていない点にあると考えています。Tinderが安心と安全に力を入れていることもあまり知られていません。それをどうやって世の中に伝えていくのかが課題だと思っています。
今後も新しい機能を開発していくのですが、現在でも、安心安全対策に関する情報を確認できる「セーフティーセンター」という機能があるほか、マッチングしたあとオフラインで会う前に「ビデオ通話」によって相手の環境を確認する機能もあります。加えてTinderならではの機能があります。送信メッセージに卑猥な言葉が入っていた場合にAIが自動検知して、「本当に送信しますか」と確認のメッセージが出ます。
不適切なキーワードがあれば送信できなくする機能はほかのアプリにもあります。でも「1回立ち止まって考えてほしい。自分の行動を考えてもらいたい」との思いから作った機能です。ある意味、教育的な形で「こういう言葉は送ってはいけないんだという認識を持ってもらえると思います。
また、受信者にも「不適切に感じる可能性のある表現を受け取りました」というアラートが出て、運営側に報告する機能もあります。このようにAI技術を利用した取り組みに力を入れています。
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