――大樹町の人口は現在約5400人と、昭和60年ころから3分の2程度まで減少しました。今後、働き手不足をどう解決していくのでしょうか。
小田切: コロナ禍を経て、「日本中どこにいてもほぼ同じ品質で仕事ができる」ということをビジネスパーソンの人々は獲得したと思うんです。約3300万人の首都圏エリアの人々が、ワーケーションしたり移住したりするだけでなく、北海道の若い方々が地元でも就職できる仕組みを作っていくことが重要だと思っています。
大樹町に新たな産業を持ち込むことで、近くの帯広市の産業など近隣の市街も活性化していく。帯広以外にも釧路、室蘭、北見、旭川といった産業都市にも波及していき、北海道全体に「宇宙版シリコンバレー」を作る構想を実現していきたいです。
衛星データを活用したスマート一次産業や防災、除雪車の自動運転、道内の工業との連携、観光振興など、宇宙は北海道のあらゆる産業とのシナジー効果が期待できますし、宇宙ビジネスによる単年の道内経済効果267億円という試算も出ています。そのときに、大樹町として、行政からの支援も獲得し、オール北海道、オールジャパンとして進めていくことが必要になると思います。
家入: コロナの影響で、働く場所に縛られない世界になっていくと、生きる目的や幸せの価値観も根っこから不可逆的に変わっていくと思うんですね。
そういった時代に必要なのは、「圧倒的なビジョン」だと考えています。ビジョンに惹(ひ)かれて人が集まり、そこにコミュニティーが生まれていく。その観点では、地域と宇宙がつながっていくのが面白いなと思いました。「宇宙のまちづくり」というのは、圧倒的なビジョンですよね。
日本は「課題先進国」といわれています。少子化・高齢化に伴って経済が縮小する中で、やがて世界各国が直面する課題に対して、日本は早くから解決策を模索しています。
今回、北海道スペースポートがやろうとしていることは、宇宙事業を中心とした地方創生です。これは、大樹町、日本だからこそできる一つのモデルケースを作ることになるのではないかなと思っています。
堀江: SNSが発展してきたので、都心にいる必要のない人は結構多いと思います。30年前に私が東京に出てきたときは、スマホもSNSもなかった。人と出会うために東京に出てきましたが、今はむしろ、アウトドアが好きな人は田舎にいたほうが良かったりするんじゃないでしょうか。
そういう意味では、「遊びの場」も必要なのかなと。無軌道な開発は良くないですが、計画された街づくりはつまらないじゃないですか。筑波研究学園都市は計画された美しいまちでしたが、鬱(うつ)になる人も増えてしまったそうです。本当は、夜の飲み屋やスナックとか、ある意味いかがわしい場所も必要で、「不要不急」こそが人間の本質だと考えています。
シリコンバレーも憧れる人は多いですが、決して住みやすい場所とは思わないんですよね。すごい乾燥しているし、ごはんもおいしいところは少なく、家賃も高いです。インターネットは、どこに住んでいても良いようにするためのものじゃないですかと(笑)。
その点、十勝の大地は豊かで、おいしいものがたくさんあって、気候も良いです。とてもいい場所なので、ぜひ世界中から移住してきて欲しいですね。
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