住友商事の事業分野で成功している一つがケーブルテレビ事業のJ:COMだ。コロナ禍でテレワークや巣籠り需要が増えたことが追い風となった。560万加入世帯数を武器に、大都市部を中心に個人宅に設置しているセットトップボックス(ケーブルテレビ放送を受信して、一般のテレビで視聴可能な信号に変換する装置)を核にして、生活のコンシェルジュサービスを構築しようとしている。
5Gが導入されると通信性能の向上により遠隔診療などの先進的サービスの拡大も見込まれる。家に居ながら多様なサービスを受けられる仕組みを構築したい考えだ。前編(住友商事・南部智一副社長に聞く「DXによる再生の道筋」 社内の構造改革を強力に推進)に続き、DXによって期待できそうな新規分野について、メディア・デジタル事業部門長(CDO)の南部智一副社長に聞いた。
――投資事業で成功している分野として、調剤併設型ドラッグストアのトモズがありますね。その現状と今後の展開はどう考えていますか。
トモズは21年9月末現在で、首都圏を中心に展開していて233店舗(トモズ子会社含む)まで増えています。コロナ禍で通勤が減ったので、都市部のオフィスビルに入居していた店は売り上げが減りました。一方、住宅立地の店は伸びました。今後はスーパーマーケット併設店含め、住宅地に隣接した店舗を伸ばそうと考えています。
19年には当社とともに、薬剤師が行う医薬品の秤量(ひょうりょう)、混合、分割、収集といった調剤オペレーションの自動化・半自動化の実証実験を実施し、現在は2店舗で本格導入しています。
薬剤師の仕事は、薬の掛け合わせに問題がないかを点検するなど緊張感のある仕事です。調剤オペレーション自動化による薬剤師の業務効率化によって、患者との対面業務(服薬指導など)の一層の充実や、待ち時間短縮といったサービスの質の向上が見込まれています。
また、調剤は患者個人とつながっているので、コロナ禍では電話やネット画面を通じて遠隔服薬指導ができるようになりました。これらの生活ビジネスで個人のIDを一つにして、スーパーや薬局などで使え、それがケーブルと連携できるようになれば、よりパーソナルなサービスなど利便性は向上します。このような取り組みを加速すべく、遠隔診療の実証実験をJ:COMの基盤がある福岡市で実施しました。このようなサービスはDXの塊なので伸ばしていきたいと考えています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング