藤田: 起業家やベンチャー企業を内閣総理大臣賞などで表彰する「日本ベンチャー大賞」の審査員を務めていましたが、表彰したのは主に世の中の問題を技術力で解決する企業でした。堀江さんのISTは、まさに国に応援されるべき分野ですよね。宇宙産業は本当に数少ない、ユニコーン企業が生まれそうな産業だと思います。
堀江: ロケットの開発が実現できているのも、やはり技術革新のおかげです。特にスマートフォンによる革新が大きいですね。使われている高性能センサーなどの価格が安くなったことで、従来の政府主導で進められてきた宇宙開発ではなく、ベンチャーなどの民間企業が宇宙開発をするニュースペースの分野が広がりました。
これまでのロケットは、インターネットで例えると、僕らが起業した頃にあった1台100万円以上するようなサーバです。そのサーバがなければ、インターネットのサービスが作れない感じでした。それを僕らは、Linuxなどのオープンソース系のOSを使って、安く作りはじめました。当時は大企業に「そんな安物買いの銭失いはしたくない」といわれて敬遠されましたが、今では当たり前ですよね。
藤田: それは堀江さんが、みんなが信じている前提を信用しなかったということですよね。新しいものが便利だとか、こっちの方が安いと率直に判断して選べるという点で、インターネット黎明期は優位性があったと思います。ロケットも同じで、従来のやり方が終わっているということでしょう。
堀江: まさにそういう時代に来ています。僕らが採用しているのは、一番ベーシックで簡単な方式で、そこそこの性能を持つ技術です。国の偉い人や、頭のいい人たちがやっていることに間違いはないだろうと思っている人は多いかもしれません。しかし、意外とそういう人たちが集まる場所だからこそ、実績があるけど古い物を追ってしまうことがあります。
宇宙開発は世界的にも迷走していて、米国のような大きな国でも、いったん、その目標や道しるべを見失うと、失敗の方向に進むことがあります。スペースシャトルがその一つですね。スペースシャトルはIntel製の16bitのCPUで、一番古い物を使っていました。政府主導の宇宙開発企業のオールドスペースがそういう世界だったのに対して、民間主導のニュースペースはどんどんバージョンアップして、新しい物を作っています。
藤田: だからイーロン・マスク氏のような起業家が、スペースXを作ることができたということですか。それこそ、投資を決める際に、社内の投資委員会で話をしていたのは、堀江さんはイーロン・マスクになる可能性があるということです。そこに懸けて張ったほうがいいという判断ですね。
もちろん、ISTが持つアドバンテージも重要だと考えています。宇宙開発はどうすればできるのか分からないし、自社ではできません。本当に技術を分かっていなければ、おいそれと参入できませんから。でも最終的には、投資は人を見て決めています。
堀江: 僕もここにきて、技術力よりも、最後までやりきるかどうかがすごく大事だと感じていますね。
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