北海道大樹町のロケットベンチャー、インターステラテクノロジズ(以下、IST)は2021年12月、シリーズDラウンドで第三者割当増資により総額17.7億円を資金調達した。そのうちの1社が、IT企業のサイバーエージェント。この出資について、代表取締役の藤田晋氏とIST創業者の堀江貴文氏が、2022年2月に東京都内で対談した。
前編では、藤田氏が宇宙ビジネスを展開するISTに出資した理由を堀江氏に明かした。後編では、ISTの今後の展望と課題について2人が語り合う。
藤田: 日本の宇宙開発のレベルは、ざっくり言って世界でどれくらいの順位ですか。
堀江: 日本は世界で4番目に人工衛星を打ち上げた国です。
藤田: そんなに遅れているわけではないということですか。
堀江: ただ、それは1970年のことです。その後、有人飛行は中国に抜かれました。ロケットの分野で言えば、米国、中国、ロシア、日本の順番。
藤田: まあまあ頑張っている感じですね。
堀江: 政府主導で宇宙開発をするオールドスペースに対して、民間主導で開発するニュースペースのベンチャー企業は、圧倒的に米国が多いですね。次が中国です。
藤田: 日本のニュースペースはどうですか。
堀江: ニュースペースの企業は結構あります。ISTもニュースペースです。ただ、人工衛星を軌道に投入する能力のあるロケットを早い時期に開発しようとしているのは、ISTともう1社、スペースワンだけです。スペースワンはキヤノン電子や清水建設、IHIエアロスペースなど、大企業が出資した企業です。
藤田: ISTは日本の民間企業で初めて、ロケットの宇宙到達を実現した企業ですよね。
堀江: そうです。ただ、宇宙空間には到達しましたけど、人工衛星はまだ打ち上げていません。現在開発している軌道投入ロケット「ZERO」で実現しようとしています。
藤田: 人工衛星を打ち上げるロケットを開発するのは、日本が太平洋に開けているという地の利があるからですか。
堀江: この地の利は日本のアドバンテージです。欧州の国々も頑張ってはいるけど、やはり打ち上げ場を国内に作りにくい。米国や中国よりも有利な立地です。
今、日本が米国や中国と同じ土俵で戦える分野ってあまりないですよね。環境ビジネスも、電気自動車も難しいでしょう。日本がこれまで培った技術力やサプライチェーンを生かせる部門として、宇宙産業はすごく可能性があると思っています。
藤田: ISTとしては、人工衛星を宇宙に運ぶ運搬業をするということですか。
堀江: 人工衛星はたくさん需要があります。宇宙には放射線があるので、人工衛星は何十年も持ちません。5年に1回、10年に1回といった頻度で更新しなければならないので、たくさん打ち上げる必要があります。
でも、それだけではありません。IT企業に例えると、僕らがインターネットサービスプロバイダー(ISP)をしましたが、ISTはISPの企業がポータルサイトまで作る感じになりそうです。インターネットよりも、より垂直統合していくイメージです。
藤田: ロケットを打ち上げる会社が少ないことが、強みになりますよね。
堀江: そうです。ロケットを打ち上げるISTが、通信事業や画像解析の事業もすることで、レアな存在になれると思っています。
イーロン・マスク氏のスペースXは、ロケットの打ち上げだけでなく、すでに2000基以上の人工衛星を打ち上げて、スターリンクという衛星通信サービスを始めています。
弁当箱くらいのボックスと小さなアンテナを499ドルで買えば、月額99ドルのサブスクで4G並みのスピードの通信が世界中で可能です。ベータ版のユーザーが10万人を超えているといわれていて、本格的にサービスを開始したら、100万人以上は契約するでしょう。
藤田: ISTの通信事業はどのようなイメージですか。
堀江: スターリンクは専用のアンテナが必要ですが、僕らが計画している次世代通信システムは、携帯電話で通信ができるものを考えています。携帯電話を持っているだけで宇宙とブロードバンド通信ができる仕組みを、10年以内に実現しようとしています。今、楽天モバイルが一生懸命基地局を建てていますが、どう思いますか。
藤田: 基地局を建てるよりも、宇宙に人工衛星を飛ばせばいいということですね。
堀江: そうです。ビルの場合は、屋上に小さなアンテナをつけておけば、ビル全体をカバーできます。
藤田: IT業界ではNFTとかメタバースがバズワードになっていますが、やや懐疑的にみられている部分もあると思います。でも、ロケットはイメージが湧きやすいですよね。堀江さんの話を聞いていると、やはり起業家という感じがします。
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