はじめしゃちょー、タリーズも熱視線 「トムとジェリー」が若者に支持され続ける理由82年の歳月を超えて(2/3 ページ)

» 2022年02月25日 05時00分 公開
[星裕方ITmedia]

これまでにない客層が店頭で行列を作った

 工藤氏は、2年前に「トムとジェリー」と初めてコラボした際に、大きな手応えを感じたという。

 「(グッズを求めて)朝、お店に並ぶ方や、複数店舗を渡り歩く方もいました。コラボがきっかけで初めてタリーズに来店した人も多く、タリーズカードを購入したお客さまは再来店にもつながりました」

 これまでにない客層の呼び込みに成功したコラボとなり、特に集客に貢献したのは「30代の子育て世代」だという。子育て世代にとって、「トムとジェリー」のようなコンテンツは映像として子どもにも伝わりやすく、泣き止んでもらう効果もあるのではないか、と工藤氏は分析する。

 確かに、筆者がよく足を運ぶ歯科医院でも「トムとジェリー」の映像が流れており、幼児や小学生が食い入るように見ているのを目にする。言葉を理解しなくても直感的に面白い、というコンテンツの在り方は、YouTuberの人気コンテンツにも共通点があるように見える。

 そこで、今回は日本を代表するトップクリエイターのはじめしゃちょー氏にも「トムとジェリー」の魅力を聞いた。

コラボ商品

はじめしゃちょーも手本にする「仕掛け」と「表情」

 YouTuberのはじめしゃちょー氏は、以前から「トムとジェリー」の大ファンであることを公言していて、今回のタリーズコーヒーと「トムとジェリー」のコラボ記念イベントにも登場した。

 「子どものころから母に見せてもらっていました。この歳になってコンテンツを作る上でもすごく参考になります」と話す同氏。特に注目するのは仕掛けの面白さだという。

 「トムが仕掛けて、ジェリーが怒る、という”やってやられる仕掛け”。それが唯一無二の面白さなんです」

 実は、『ルパン三世』の作者であるモンキー・パンチ氏も、主人公のルパンと銭形警部の「追いかける関係性」について、「トムとジェリー」の要素を取り入れているという。この仕掛けの考え方は、はじめしゃちょー氏がドッキリを仕掛けるYouTube企画などで手本にしているそうだ。

 「ただ一方的に、こっち(制作側)の都合で(相手に)ドッキリを仕掛けると(見ている人にとっては)『かわいそう』となってしまうことがあります。その点『トムとジェリー』は、トムも仕掛ければジェリーも仕掛ける。『かわいそう』から、エンターテインメントに昇華させているのです」

「トムとジェリー」の魅力を語るはじめしゃちょー氏

 こう話すはじめしゃちょー氏がもう1つ挙げた魅力は、「表情」の面白さだ。

 「僕も(YouTubeの動画で)怒っているとき、びっくりしているときは、言葉より表情で感情を伝えるようにしています。感情が映像を見てぱっと分かることが大切です」と語った。

 確かに「トムとジェリー」も、主に表情と動きによってキャラクターの魅力に引き込まれるようになっている。そこには難しいストーリーや巧妙な設定は存在しない。だが、どんな人が見ても何をしているのかが理解できる「分かりやすさ」があるのだ。はじめしゃちょー氏の動画作品にも、「トムとジェリー」を見て培ったこの「分かりやすさの魅力」が発揮されているようにも思える。

 例えば同氏が6年前に公開した「世界最大級のグミを1人で食う!」という動画は、全世界で1.2億回も視聴された。言葉の壁を超える同氏のコンテンツ力の裏側には、この「表情」の分かりやすさがあり、その点で「トムとジェリー」と共通するヒットの秘密がある。多くの人に受け入れられる理由は、まさに分かりやすさにあるのだ。

(YouTubeの動画で)怒っているとき、びっくりしているときは、言葉より表情で伝えるようにしているという

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.