2001年4月からスタートした「家電リサイクル法」は、当初はパソコンも対象となる計画だったものの、とりあえず今年は企業のみ、有料廃棄が義務づけられることとなった。
しかし、来年からは個人がパソコンを廃棄する場合にも有料化される見通しで、廃棄にさえお金がかかる事態に、かなりブルーな気持ちになるパソコンマニアの方も多いのではないかと思う。
そういうブルーな気持ちになったときに思いつくのが、中古パソコン販売業者に自分のパソコンを売り払ってしまうことだ。ソフマップをはじめとしたパソコン・ショップの中には、パソコンの買い取りをしてくれるところも少なくないので、ここを利用するのも1つの案である。
中古パソコン売買はおいしい事業?
あまり知られていないが、中古パソコン売買は販売店にとっておいしい事業である。デフレ状態そのものである新品パソコンを販売しても、店がとれるマージンは5%以下にすぎない。ところが、中古パソコンは店側の意向で値付けが出来るので、相当高いマージンをのせて販売することが可能なのである。
例えば、5000円で仕入れた中古パソコンを2万円で売る。実に1万5000円の粗利である。これが新品の場合、20万円の商品を販売しても粗利が5%であれば、1万円の利益にしかならない。20万円の新品を売る方が少ない利益しか獲得できないことになる。
もっとも、新品パソコンがデフレ状態でどんどん価格が下がってくれば、わざわざ中古を購入する必要もない。需要がなければ、ビジネスは成り立たないわけで、あくまでもすき間市場でやりとりされてきたのが、中古パソコン販売の実情だったといえる。ところが、これまですき間市場だったがゆえに見逃されてきた問題点があらわになりはじめた。
消したはずのデータがよみがえる
1つは、パソコンに蓄積したデータが、個人のプライバシーや企業秘密の漏洩につながるのではないかという懸念である。アットマーク・アイティの読者諸氏であれば、消したはずのデータをよみがえらせることが可能であることはよーくご存じのはず。
中古販売業者は、「うちはデータ流出なんてことはさせません」と胸をはるが、いまのところデータ消去に関する明確な基準は出ていない。中古パソコンが、どういった処理をされて、どの程度の状態で市場に出てくるのかは業者の良心にゆだねられているというのが実情なのだ。
むろん、ユーザー自身がデータを完全に消去してから売却することが大前提という声もあるものの、やはり業者側でも確認したうえで、売買を行ってくれなければ、ユーザーとしては不安としかいいようがない。
さらに、「顧客側が廃棄したと思っていたパソコンが、実は中古市場に回されているというケースだって出てくるだろう」という指摘もある。この点も考慮すると、中古販売業者には預かったパソコンのデータをきちんと消去してから売買することを徹底してほしいところだ。
中古パソコンに入っているソフトの所有権は誰のものか
もう1つの問題点は、「パソコンの中に入っているソフトの所有権はだれのものなのか」という点である。
今回、マイクロソフトがオフィスXPから、プロダクトアクティベーションというライセンス認証を採用したのだが、果たして、中古で買ったパソコンに入っているソフトは、正規ユーザーとしてライセンス認証してもらえるのかどうか、聞いてみた。そうしたら、「実は中古パソコンにインストールされたソフトは、グレーゾーンであり、明確な回答はいまのところ出していない」という答えが返ってきた。
マイクロソフトのライセンス規約では、「1回の譲渡は認める」のだそうだ。が、それはあくまでも譲渡であり、売買というのは本来認められていない。だが、中古パソコンがすき間市場でしかなかったことから、黙認してきたというのが実情なのである。
ところが、新たにプロダクトアクティベーションという新しいライセンス認証制度を導入したことで、「明確な回答を出すべく、現在、社内で検討を進めている段階」なのだそうだ。早々にこの明確な回答が発表される見通しだ。
脚光を浴びることで問題点が浮き彫りに……
実は、中古パソコンが大きく脚光を浴びたことで、なんとかビジネスに結びつけようと考えている人が少なくないようなのだが、「データの問題と、インストールされているソフト著作権の問題が明確にならない限り、表立ってこういう新しいビジネスを考えていると表明しにくい」のだという。
これを聞くと、リサイクル法が思わぬところに脚光を浴びせてしまい、業者もユーザーも大きく戸惑っていることがよーく伝わってくる。場合によれば、オークションで盛んに取引されている個人対個人間の中古パソコン販売にも、メスが入る可能性だってある。
そう考えると、中古パソコンを愛用していた人にとっては、「よくも寝た子を起こしてくれたな、リサイクル法!」と文句の1つもいいたくなるところだろう。
Profile
三浦 優子(みうら ゆうこ)
1965年、東京都町田市出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、2年間同校に勤務するなど、まったくコンピュータとは縁のない生活を送っていたが、1990年週刊のコンピュータ業界向け新聞「BUSINESSコンピュータニュース」を発行する株式会社コンピュータ・ニュース社に入社。以来、10年以上、記者としてコンピュータ業界の取材活動を続けている。
メールアドレスはmiura@bcn.co.jp
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