おそらく、アットマーク・アイティを利用する人たちは、まったくターゲットにしていないだろうと思われるのが、NTT東日本/西日本が6月29日から提供を開始するLモードである。
なにせ、LモードのLは、ラージ=iモードでは画面、ボタンなどが小さいと思っている人、レディ=パソコンや携帯電話が使いづらい、分かりにくいと思っている女性などを表しているのだから。パソコンを駆使し、インターネットを使いこなしているアットマーク・アイティの読者の皆さんからは、最も遠いところにあるサービスだといえるだろう。
しかも、関係者が苦笑いしながらいうことには、「NTTさんがドコモに対抗しようという狙いで作ったサービスだからねえ」というくらいで、いまひとつ、サービスが持つ説得力とか、面白みに欠けるようなところばかりが目立つのも事実である。
さらに、企画が発表された直後、「NTT法に引っかかるのではないか」と総務省が言い出したことで、NTT東日本/西日本側がサービス構築に対し、及び腰になっているように見受けられたところも面白みをなくす要因だった(正直なところ、最初に出てきたLモード対応FAX機、電話機を見たときには、あまりのつまらなさに頭がクラクラした……)。
だが、ようやくサービス開始日が決まったせいだろうか、「もしかして、面白い世界がつくれるかも……!」という期待できるサービスも登場し始めた。
サービスと一緒に提供することで、現行のパーソナルFAX機でのシェア10%を45%にまで拡大したいというのはシャープ。従来のFAXサービスで提供してきたコンテンツをLモードでも利用できるようにしたというものだが、やはりサービスとハードがセットになって出てくると、単純なFAX機の機能競争と違う側面が出てくる。サービスの中身としては、Lモードならではのものがもっと出てきてくれないと……とは思うものの、FAX機プラス・アルファの要素は十分に感じられた。
バンダイが子ども用ワープロにLモード機能を搭載した商品を10月ごろに発売予定というニュースには、目からウロコが落ちる思いになった。玩具の世界では、ゲームを代表にIT技術がどんどん取り入れられている。インターネットのユーザーにはなっていなかった子どもをインターネットに結び付けるには、Lモードはよい接点になりそうだ。
本来、最初に計画されていたとおり、Lモードが入っていくことができるマーケットはまだ十分に残っている。
これはLモードとはまったく関係のない取材での話だが、「地方の店舗情報が掲載されたホームページって便利だと思いませんか?」と言われたことがある。個人的に、自分の近所にある店舗や病院などの情報があれば、何かのときには便利だろうし、そういう情報を付加したサービスがあったらいいなあと思っていたのだが、個人商店主のユーザーレベルでは、パソコンを使いこなせる人は限られる。地方の店舗といった地元の人にしか役に立たない情報は、なかなかインターネット化されにくいのも事実である。
LモードのLには、ローカルを表す意味も込められているそうだ。これは決して的外れな狙いではないと思うのだが、どうもそのための仕掛け作りという部分が弱いように思える。逆にいえば、こういった部分を実現すれば、思わぬビジネスチャンスを生む可能性もあるということになる。
使ってみたいとは思えないだろうLモード、ビジネスチャンスとしては、いろいろな視点がありそうに思えるのだが。
三浦 優子(みうら ゆうこ)
1965年、東京都町田市出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、2年間同校に勤務するなど、まったくコンピュータとは縁のない生活を送っていたが、1990年週刊のコンピュータ業界向け新聞「BUSINESSコンピュータニュース」を発行する株式会社コンピュータ・ニュース社に入社。以来、10年以上、記者としてコンピュータ業界の取材活動を続けている。
メールアドレスはmiura@bcn.co.jp
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.