景気に足をひっぱられるIT業界下期の企業需要に暗雲か?IT Business フロントライン(46)

» 2001年08月10日 12時00分 公開
[三浦優子(コンピュータ・ニュース社),@IT]

 もう8月だ。21世紀は始まったばっかりだと思っていたが、もう8か月もたってしまった。4月に新年度を迎えた企業にとっても、第1四半期が終了し、その決算結果が出てきた。

世界経済減速の波をもろに

 ソニー、松下、NEC、富士通といった大手電機メーカーが今年から第1四半期の決算を発表したのだが、見てびっくり。とにかく良くない結果ばかりになっている。

 私は富士通の決算発表会に出席したのだが、とにかく「赤字」という言葉の繰り返しだった。「これも赤字、また赤字……」、当初見込みの下方修正ばっかり。しまいには、3000億円の予算を取ってのリストラの実施と、かなり暗雲垂れ込める決算内容だったのである。

 富士通の場合、前年度の決算結果を発表したのは今年4月26日。それからほぼ3カ月で、大幅に下方修正をするっていうのは、会見でも出ていたとおり、「見通しが甘かったとしかいいようがない」だろう。

 ただし、コンピュータ事業は堅調である。コンシューマ向けパソコンは調子が悪いものの、サーバが好調だという。これはNECも同じで、決算を悪くしているのは、半導体事業だ。コンピュータ事業に罪はない。

東京が支えるIT需要

 だが……、本当に「コンピュータ事業は平穏無事」と安心しきってよいものか、取り越し苦労かもしれないがちょっと不安になってきたのである。大手電機メーカーが、これだけ「業績が良くない」となると、その影響は皆無とはいえないのではないだろうか?

 不安をあおるようで申し訳ないが、確かにサーバを含めたIT需要は堅調だ。が、これは東京の話。地方に行くと決してIT需要でさえも、堅調とはいえない状態のところが多い。

 BCNで、全国7大都市のコンピュータ市況を取材して回るという連載をやっていたのだが、東京だけがほかの地域に対して突出して調子が良く、それ以外の地域では結構つらい状況のところが多かった。例えば、東京に次ぐ大都市である大阪でさえ、民需についてはそれほど元気とはいえないという話ばかりが耳に入ってくる。

企業の投資より、コンシューマの消費に期待?

 「あとこれだけ導入すれば、システムとしてうまく動き出すのが分かっているのに、企業自身に元気がないので、とりあえずペンディングになってしまう」という販売店のかなり悲痛な声もあった。よく、「こんな時期だからこそ、生き残るためにIT投資は不可欠」という格好いいせりふがメーカーから飛び出すが、ITうんぬんといっていられないほど、元気のない企業というのも少なくはないのである。

 これまでのところ、東京にある企業は比較的元気で、IT投資も堅調だったわけだが、これだけ大手電機メーカーも、「決算の結果が悪い!」といっている状況では、東京にある企業の元気がいつまで続くのか、ちょっと不安なのである。取り越し苦労でしょうか? でも、ITメーカーの皆さんも、今年後半はちょっとシビアに世の中を眺めたほうが無難なんじゃないかと思うのだが……

 逆に悪いといわれている、コンシューマ市場のほうが、マイクロソフトがWindows XPにお金を使って盛り上がってくれたりして……? うがちすぎの見方かな?

Profile

三浦 優子(みうら ゆうこ)

コンピュータ・ニュース社

1965年、東京都町田市出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、2年間同校に勤務するなど、まったくコンピュータとは縁のない生活を送っていたが、1990年週刊のコンピュータ業界向け新聞「BUSINESSコンピュータニュース」を発行する株式会社コンピュータ・ニュース社に入社。以来、10年以上、記者としてコンピュータ業界の取材活動を続けている。

メールアドレスはmiura@bcn.co.jp


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