こんなに便利な欧州の旅行・観光サイト ネット活用でワンランク上の欧州旅行を実現IT Business フロントライン(99)

» 2002年10月04日 12時00分 公開
[高橋智明,@IT]

 今年の夏休みは少々張り込み、家族でパリとロンドンを回ってきた。何度も旅行代理店などに足を運ぶことが難しいため、準備にはネットの利用を余儀なくされた。旅行や観光関連は、あらゆるビジネスの中でもインターネット化が最も進んでいるものの1つといわれている。で、あちこちのWebサイトを巡って利用してみた感想はというと、「予想以上に便利でお得。知っていなければ、損をする」と実感した。

便利な上に“安い”オンライン予約

 まず感心したのが、ホテル予約サービスの「BANCOTEL」である。スペインの企業が運営するこのサービスは、欧州を中心に世界中の1200以上のホテルと提携している。単にネットで予約を仲介しているのではない。ホテル側があらかじめ空き室数を予測し、BANCOTELにその販売を委託しているのである。

 最大の特徴は、宿泊料が通常より大幅に割り引かれていることだ。もともと売れ残りそうな部屋を売っているわけで、ホテルにしてみれば変動費さえ払ってもらえば採算に合う上、別チャンネルの販売なので、安売りによるブランドイメージの悪化も防げる。宿泊料の設定は2人用1部屋につき、ホテルのクラスに応じて日本円で6600円、1万3200円、1万9800円の3種類だけ(ホテル税や消費税が支払いとは別に必要)。ロンドンを例に取れば、シェラトン・パークレーンやインターコンチネンタルなど最高級の5つ星クラスのホテルでも1泊1万9800円である。こうしたホテルは通常のルートで予約すれば、最低でも1泊4万円はするだろう。

 予約は前日まで可能で、変更やキャンセルにも手数料はまったく掛からない。宿泊料の支払いに使うクーポン券をあらかじめ提携代理店で購入しておかなければならないことや、バカンスシーズンなどには極端に提供部屋数が減ってしまうなどの欠点はあるが、予約さえ入れば日本の代表的なホテル予約サイトである「旅の窓口」よりもお得感は数段上だ。

 パリからロンドンへの移動は、英国の格安航空会社「イージージェット」を利用した。パリを午後2時に出発する便が、わずか39.9ユーロ(約4900円)。日本の航空会社も正規運賃に加えて、最近はさまざまな割引運賃を導入しているが、イージージェットの場合は需給バランスで毎日のように価格が変動する。例えば、10月11日の17時40分に出発するパリ−ロンドン便は47.4ユーロだが、半月後の10月25日は52.4ユーロ、1カ月後の11月11日の同便は72.4ユーロといった具合だ。

 伝統的な航空会社と異なりすべてチケットレスなので、予約後は搭乗前に予約を確認して搭乗券を受け取るだけ。予約の9割以上はネット経由だという。欧州ではほかにも「ライアンエアー」など、格安航空会社が急速に売り上げを伸ばしている。

オペラ、ミュージカル、レストランもネット対応

 9月のパリは、オペラシーズンの開幕である。パリには「パレ・ガルニエ」と「オペラ・バスチーユ」の2つの国立オペラ座があるが、どちらの劇場での公演も「OPERA NATIONAL DE PARIS」で予約・購入できる。筆者はオペラ・バスチーユの「ホフマン物語」のチケットを購入したが、1枚78ユーロ(約9500円)のチケット代に数百円を上乗せすればあらかじめ日本に郵送してくれる。公演までに時間がない場合は、当日に劇場のボックスオフィスでチケットを引き取ることも可能だ。ちなみに、パリのオペラ公演のチケットを国内の旅行代理店を通じて入手しようとすれば1枚2万円は下らないはずだ。

 ロンドンでは、「ライオンキング」と「マイ・フェア・レディ」の2本のミュージカルを観劇した。ミュージカルの場合、各タイトルが独立したWebサイトを持っており、イギリスのYahoo! UK & Irelandなどにタイトル名を打ち込めば検索できる。各Webサイトではもちろん、チケットの予約・購入が可能だ。この2つのミュージカルでは、チケットはボックスオフィスでの当日渡し。支払いに利用したクレジットカードを提示すれば、すぐにチケットを受け取れる。

 パリのレストランでのディナーも欠かせない。パリの高級レストランはほとんどが、独自のWebサイトを持っている。筆者は今回、いずれもガイドブック「ミシュラン」で最高位の3つ星を誇る「ピエール・ガニエール」「アラン・デュカス」「アルページュ」のサイトを訪問し、シェフの紹介やメニューなどを比較して、ピエール・ガニエールを予約することにした。

 Webサイト内に予約フォームがあるので、そこに必要事項を記入して送信するだけ。味付けの好みや祝い事の有無など、細かい要望も簡単に伝えられる。同じことを電話やファクスで行うよりは、はるかに手間もコストも少なくて済む。

日本のサイトは“内向き”ではないか?

 欧州の旅行・観光関連ビジネスのネット化が、日本のそれよりも進化しているのは明らかだ。私の知る限りではどのWebサイトも、「英語を母国語としない国のサイトでも英語で記述してあるコーナーがある」、「クレジットカードを持っていれば、情報の入手から予約・購入まで一貫したサービスが受けられる」、「チケットレスサービスかチケットの郵送サービスを導入しており、海外の居住者でも利用できる」という点を必ず満たしていた。つまり、海外を含めたすべてのユーザーの利便性を十分に考慮してサイトが設計されていることになる。日本企業のWebサイトでこのレベルまで達している(つまり外国人でも容易に利用できる)のは、航空会社のサイトくらいしかないのではないだろうか。

 例えば、英国と欧州大陸を結ぶ「ユーロスター」のWebサイトはだれでも利用可能だが、新幹線をネットで予約するにはJR系のプロバイダである「CYBER STATION」と契約しなければならないという時代錯誤ぶりだ。「チケットぴあ」や「ローソンチケット・ドットコム」は英語対応していないので、外国人には極めて使いづらいだろう。「歌舞伎座」のホームページは英語のコーナーを備えているが、肝心の空席紹介とオンライン予約が電話でしかできない。

 日本を代表する料亭である「吉兆」や「なだ万」のホームページは、ごく一部を除いて日本語を解する人しか読むことはできない。電話する以外には、予約もできないようだ。こうした状況は、代表的なフランス料理店の「オテル・ドゥ・ミクニ」や「ひらまつ」でも変わりないようだ。

 人が旅行や観光関連サービスを利用しようとした場合、まずはWebサイトで情報を入手するのが最も当たり前の行動パターンになってきている。容易には客を増やせない時代に、まずはWebサイトを国際基準に合わせて改装してみてはどうだろうか。

Profile

高橋智明(たかはし ともあき)

1965年兵庫県姫路市出身。某国立大学工学部卒業後、メーカー勤務などを経て、1995年から経済誌やIT専門誌の編集部に勤務。現在は、主にインターネットビジネスを取材している。


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