その後の大ニュースに隠れて印象が薄くなってしまったきらいはあるが、ゲートウェイの日本からの撤退には驚かされた。以前から米国で業績が悪化していることは伝わってきていたものの、前日まで直営店舗に訪れた顧客に見積もりを出していたというのに、撤退発表と同時に全社員解雇、店舗は即閉鎖っていうんだから、ちょっとスピード速すぎ!である。
メーカー撤退でリサイクルはどうなる
しかし、もっと驚かされたのが、私のところにかかってきた業界関係者からの電話であった。
「サポートに関しては、受け皿の準備を進めているようだけど、パソコン・リサイクルに関しては全然受け皿が用意されていないみたいなんだけれど、どうなるのかねえ?」
ご存じのように、今年4月から企業が廃棄するパソコンについてはメーカーがリサイクルを請け負うことが義務付けられている。来年4月には個人が廃棄するパソコンもリサイクルしていくための仕組みが出来上がる見込みだ。だが、こうした仕組み作りが進む中で、ゲートウェイのように日本で営業しているメーカー・ベンダーが撤退した場合どうなるのか、考慮されていないようなのだ……。
個人向けリサイクルとしては、今年4月からテレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機の家電4品目のリサイクルが義務付けられている。が、これらの製品がリサイクルされる際に大きな問題となっているのが、「リサイクル料金をいつどの段階で徴収するか」である。
いまのところ、廃棄の際にリサイクル料金を徴収することになっているけれども、料金を取られることが嫌なあまりに不法投棄するよからぬヤツが出ている。そのうえ、お店がこれら家電を販売する際に、値引き対象として「廃棄料金分はいただきません」ということをうたっているところが出現して、ライバルの販売店が「ブーブー!」と文句を言うといったトラブル(?)も起きている。そのため、新製品を購入する時点に先回りして料金を徴収する「前徴収」をすべきとの意見が出始めた。
前か後かが問題だ!
ところでこの前徴収、パソコンを廃棄するときに応用しようとすると、どうも適応しにくい場面が多々出てきそうなのだ。
象徴的なのが、ゲートウェイのように撤退するメーカーが出た場合である。
先にリサイクル料金を徴収して、メーカーがお金をプールしているとなると、撤退となった場合にメーカーはその料金をどうするだろうか。いや、撤退であれば、「その料金は日本に置いていくように」と申し入れができるけれども、これが倒産だったらどうなるのか。倒産してしまったメーカーから、リサイクル料の積立金を回収するのはほとんど難しいのではないだろうか。
そうなると、先に徴収したリサイクル料金をプールする別組織が必要ということになるのだろうが、そうした組織を作るとなればさらにコストがかかる。そのための負担をユーザーがしなければならなくなる恐れもある。
しかも、完成品のパソコンだったらお店で購入時にリサイクル料を徴収することは可能かもしれないが、個人が部品を買い集めて自宅で組み立てたパソコンは、購入時点ではパソコンではなくパーツであり、パーツを購入するたびにリサイクル料金を徴収するなんてことはたぶん無理だろう。個人がパーツを組み立てたパソコンは、リサイクルの対象とはならなくなってしまうことになる。
家電の場合、パーツを組み立てて完成品を作ることはまずないし、パソコンほどメーカーの数は多くない。それに冷蔵庫など大型家電であれば、新しいものを購入する際に古いものを引き取ってもらうことが多いので、制度的には購入した製品に対するリサイクル料金の前徴収であっても、同時に廃棄が伴っているので消費者の気持ちとしては廃棄時徴収と変わらないため、前徴収でも運用できるかもしれない。しかし、新しいものを購入したからといって、古いものを即廃棄にするとは限らないパソコンはその点でも状況が異なる。
リサイクル社会を推進するために
それを踏まえ、リサイクル義務を負ったメーカー側でも、「廃棄時にコストを支払ってくれる方式であれば、自社で開発した製品以外でもリサイクルを請け負ってもよい」というトーンになってきているらしい。つまり、ゲートウェイのように撤退したメーカーの製品でも、個人がパーツを組み立てて作ったパソコンでも、平等に引き取ってくれるという。
それを聞くと、パソコンに関しては、廃棄時に料金を徴収する仕組みになってほしいと思うのだが、読者のみなさんのお考えはいかがだろうか。
そこで何よりも忘れてならないのは、リサイクル型社会を実現するためには、むやみにパソコンを使い捨てしたりせず、さらに廃棄する際にはそれ相応のコストがかかることを、ユーザー側がしっかりと認識し、受け入れないと駄目だということだ。料金を後徴収するとなると「パソコンを分解して、ゴミ袋に交ぜて捨てれば……」なんてふらちなことを考えるヤカラもいるかもしれないが、リサイクルが進まなかったり、ゴミを不法投棄したりすれば、結果として社会的に負担が増えるということをちゃんと認識しなければならないのである。
Profile
三浦 優子(みうら ゆうこ)
1965年、東京都町田市出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、2年間同校に勤務するなど、まったくコンピュータとは縁のない生活を送っていたが、1990年週刊のコンピュータ業界向け新聞「BUSINESSコンピュータニュース」を発行する株式会社コンピュータ・ニュース社に入社。以来、10年以上、記者としてコンピュータ業界の取材活動を続けている。
メールアドレスはmiura@bcn.co.jp
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