本来、今年4月からスタートするはずの個人向けパソコンリサイクルだが、現在協議が行われているものの、本来決定すべき事項がなかなか決まらず、スタートが延期される見通しとなった。しかも、現状ではリサイクルの対象となっているのは、メーカー製のパソコンだけで自作機は対象外となりそうだなのだ。
“前払い”か“後払い”かで荒れた会合
パソコンリサイクルは、すでにスタートしている家電リサイクルに続いて、家庭から廃棄されるパソコンもリサイクル対象として回収し、再利用や部品の再活用を進めることが狙いとなっている。本来は4月の実施に向け、2001年中に概要を決定し、その内容が公布される手はずだったのだが、いまに至るまで概要決定さえしていない。
昨年12月13日に経済産業省の「産業構造審議会環境部会廃棄物・リサイクル小委員会パソコン3R ワークンググループ」と環境省の「パソコンリサイクル検討会」の第5回合同会合が開催され、詳細が決定する見込みだったのだが、この会合は大荒れとなった。この会合の直前、日本経済新聞の紙面に、「パソコンリサイクル料金は購入時徴収に」というニュースが掲載されたためだ。
“購入時徴収”というのは、新製品を購入した時点でその商品を廃棄するのに掛かるコストを前払いしてしまう方式である。リサイクル料金の徴収としては、この前払い方式と、商品を廃棄するときにリサイクル料金を徴収する“廃棄時徴収”という2つの方法があり、このどちらの方法となるのさえも、12月の会合開催前には決定していなかった。その方式が決定したことをスクープした日経の記事だったのだが、これは購入時徴収を望む勢力のリーク情報が元ネタだったようで、13日の会合に出席したパソコンメーカー首脳陣は、「この記事は間違っている」と声を荒げる場面もあったという。
「不法投棄」が心配──徴収も多めに?
実は購入時に料金を徴収するとなると、徴収した料金はメーカー自身がプールせねばならず、しかもその分は利益の留保と見なされ、税金の対象となってくる。そのため、メーカー側にとって負担は大きく、「料金を廃棄時徴収にできないか」というのがメーカー側の意向であった。が、廃棄時徴収となると不法投棄が多くなることから、消費者団体、各地方自治体は廃棄時徴収に大反対。購入時にリサイクル料金を支払うことを強く推していた。
結局、13日の会合では、紛糾しながらも、前払い方式を推す意見が多くなったことから、前払い方式をメーカー側が受け入れることが大筋で決定したのだった。
といっても、まだ詳細は決まっていない部分が多い。前述したメーカー側がリサイクル料金を保有することで税金が掛かってしまうことについては、「どうしてものめない」とメーカーは異議を申し立てている。
すでに使われているパソコンのリサイクル費用をどのように捻出するのかという問題についても、「メーカー側が費用負担をすべし」という意見が強く、そうなるとその分も含めて多めに料金徴収をしなければならなくなるのではという見方もある。場合によっては、徴収されるリサイクル料金は単純に1人あたりに必要なコストよりもかなり高めの金額に設定されることになるとの見通しも出ている。このままでは、ユーザー側の負担が大きいリサイクルとなりそうなのだ。
損得勘定ばかりではなく、理念に沿った認識を
さらに、第52回「パソコン・リサイクル料金の徴収はいつがよい?」で書いたが、ゲートウェイのように外資系メーカーの日本撤退、あるいはメーカーの倒産などの場合に、リサイクル料金はどうなってしまうのかといった問題も未解決だ。この上、最初に書いたように自作機はリサイクル対象とならず、現状では一般廃棄物として処分することになるという。
もちろん、ユーザー側としたら、リサイクル料金を払わずに捨てることができるのはありがたい。自作機くらい、自由に捨てさせてくれよ……という気持ちはある。だが、本当にそれでいいのだろうか。パソコンをリサイクルしなければならない理由は、資源の少ない日本という国で、少しでも有効に資源を活用していくためのはずだ。
そのために、メーカーがリサイクルを意識した製品開発・製造を行うことも必要だし、ユーザーもリサイクルをする認識を持つことも必要で、さらに国がリサイクルを促進するためのきちんとしたグランドデザインを描くべきではないのか。自作機は対象にならないなんて、本当にきちんとしたリサイクルに対するグランドデザインをする気があるのだろうか、日本という国は……ちょっと、あきれるような気持ちになってしまう。
Profile
三浦 優子(みうら ゆうこ)
1965年、東京都下町田市出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、2年間同校に勤務するなど、まったくコンピュータとは縁のない生活を送っていたが、1990年週刊のコンピュータ業界向け新聞「BUSINESSコンピュータニュース」を発行する株式会社コンピュータ・ニュース社に入社。以来、10年以上、記者としてコンピュータ業界の取材活動を続けている。
メールアドレスはmiura@bcn.co.jp
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